背景と目的は正しいのか?
まずこの件を『アメリカが中国に対する貿易赤字がその背景』ということを解説するメディアが殆どになります。
この解説は間違ってはいないと思いますが、その目的は貿易がアンフェアだということではありません。
今回は本当にそれで正しいのか、ということから始めます。
米中貿易戦争の背景
トランプさんが貿易戦争を語るときによく使うのが「安全保障の問題」という言葉をよく使います。
貿易から安全保障、論理の飛躍のし過ぎと思うかもしれませんが、実は密接に関係があるのです。
アメリカの貿易赤字が増えれば増えるほど、アメリカの経常赤字は当たり前に増えていくことになります。
経常収支の構成要因というのは貿易収支と財政収支です。
貿易は赤字、そして財政は減税政策によって赤字、よって経常収支も赤字になります。
そのアメリカの経常収支の赤字を補填するのは、アメリカ国民の税金です。
つまりアメリカ人が働いたお金は、アメリカの借金の返済に使われるのです。
これは我が国日本でも同様ですが現実です。
なぜか。
一方で、貿易で黒字を得ている日本や中国はその黒字でアメリカの資産を買います。
日本・中国は、儲けたお金で次々と国債や不動産などを買っているのです。
この経常赤字や貿易赤字が増えれば増えるほど、日本や中国の黒字は増えるのですから、アメリカ人が怒って当たり前です。
今回の貿易戦争はトランプさんの我が儘・気まぐれと思っている方が非常に多いのですが、この図式がアメリカの利害を著しく冒すことを認知していません。
アメリカ国債
国債の場合は、借金の貸主が日本、中国になりますので、アメリカ人は日本と中国の借金のために働かなくてはいけないことになります。
アメリカ不動産
そして不動産の政策というのは、その不動産のマジョリティーにたいしてかける規制などになりますので、その不動産所有の過半が日本、中国人になった場合、その利益をよくするのは日本、中国人になります。
つまり、いつまでも経常赤字を垂れ流している場合には、アメリカの本土や借金は外国のものになってしまう、という危機感からトランプさんは、中国や日本と戦争をするのです。
ですので、トランプ大統領の政策は気まぐれでも何でもなく『当たり前』という事がわかります。
レーガンへの憧憬
ここまでの話で、まさに貿易戦争というのは『安全保障の問題』ということがお判りになると思います。
次にトランプさんは、まさにレーガン大統領に憧憬(しょうけい)をしているという点です。
アメリカでは歴代の大統領の人気を振り返ると、最近ではオバマさんでしたが、オバマさん以前は圧倒的にレーガン大統領です。
なぜなら、レーガンさんは東西冷戦を終結させ、そして財政・貿易の赤字を解消させ、経常収支を黒字化したという功績があるからです。
つまり、トランプさんはレーガン大統領並みにアメリカで評価されたいという願望があると思って間違いないでしょう。
そのレーガン元大統領の主な功績に、今のトランプさんは重なることはないでしょうか?
日本にとっては迷惑な話に貿易の面ではなりますが、世界的には共産圏との闘いの終結が本当になればバンザイでしょうし、貿易の面ではアメリカ人にとっては英雄になることでしょう。
こういう背景があって、トランプさんは貿易赤字の解消に躍起になっており、決して気まぐれや我が儘で、貿易戦争を仕掛けているのではないのです。
日本人にとっては『日本人の利益を奪いやがって』と思うかもしれませんが、トランプさんはこの結果に勝利したときは英雄となります。
その辺を勘違いしてはいけません。
アメリカへの貿易赤字は微々たるモノ
さて、アメリカの貿易赤字の問題を具体的に検証をしていきます。
これが大問題、大問題と騒げば騒ぐ程、皆さまはこの数字の背景を知っていれば白けていくことは間違いありません。
今回はすべて日本円で考えていきましょう。
アメリカのGDP総額は約2000兆円になります。
そのうち貿易が15%になります。
2000兆円×15%≒300兆円
今回の米中貿易戦争の議題の金額は500憶ドルになります。
500憶ドル×110円(6/19のドル円レート)=5.5兆円
になります。
要するに貿易総額300兆円に対して5.5兆円。
その占有率2%。
GDP総額2000兆円にたいしては0.3%にしかなりません。
この数字に対して大変だ、大変だ、とメディアは騒いでいるのです。
これでお判りの通り、はっきり言えば影響は皆無であり、そのことに関心を持つこと自体が本来馬鹿馬鹿しく思えるほどなのです。
アメリカではなく中国の方が問題
今回の問題は、実は中国にとっての非常に不利な事です。
前回現代の社会生活に欠かせないのは『食料とエネルギー』ということをお伝えさせて頂きました。
今回の輸入制限処置で、中国側が課しているのが天然ガスや原油、そして大豆などの穀類です。
つまり、食料とエネルギーです。
その中国人民が生きていく上で必要不可欠な重要品目を輸入制限処置に課したので問題になっているのです。
要するに今回の問題で困るのはアメリカではなく、自業自得の中国です。
アメリカはアップルなどのスマホの模造品を防ぐもの、自動車産業を保護するものに限って関税処置をかけているのですからアメリカが圧倒的に有利なのです。
それも前述の貿易総額占有率2%に対してです。
要するに折れなければならないのは中国です。
それだけの話です。
この勝者は見るまでもありません。
今回の本当の問題点
今回の本当の問題点は、世界の貿易王国である中国が圧倒的な不利な状況を突きつけられたことの次にあります。
要は、中国は今までのように自国の権益を拡大するための野放図な輸出は許されない、ということを示すものです。
それは日本も同様です。
なぜ各国の政府は貿易を推奨するのかといえば、貿易というのは無限の利益を生み出す可能性があるからです。
日本であれば1億の人を相手に商売するのが、世界の貿易に目を向ければ75憶の人が商売相手です。
だから利益は国内に比べ、可能性は無限大。
その貿易大国の中国がその足かせをはめられたら、現在好調な世界経済が、貿易不振によって不調に転調する可能性があります。
ここが今回の報道の最終的な問題であって、輸出品目や貿易戦争が本質の問題ではないのです。
つまり、この貿易制限を端緒として世界成長が止まる可能性があることが問題なのです。
世界の成長が止まるということは借金まみれの各国政府の財政赤字がさらに膨らむということ。
各国の財政赤字が膨らめば、金の価格はどうなりますか?という簡単な問題を出して本稿を終わります。
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