投資だけではない世界の金需給あれこれ
皆さんは、東京オリンピックの金メダルがPCやスマホなどの廃棄品から回収された金で製造されるという話を聞いたことがありますでしょうか?
(http://www.toshi-kouzan.jp/index.html)
「なんか報道でやっていたな」程度のことはご存知だと思います。
今回は、リサイクル品から回収される貴金属、主に金について話をしていきたいと思います。
世界では毎年4000トン程度の金の供給があります。
その一方で、金の需要の70%は投資用、つまり退蔵用になりますが、そのほか金歯や工業用品の需要もあるのです。
あまり知られていないと思いますが、実は皆さんがお持ちのパソコンやスマホなどの電子機器をはじめとする工業品にも、その通電性と可変のしやすさから金や貴金属が使われています。
例えば白金などは、空気清浄の触媒としての作用、そして最近のトレンドである電気自動車の燃料電池の触媒としても使われています。
日本国内の産金状況
電子機器などに含まれる金は、日本国内でも7000トン弱あると言われています。
毎年の新産の金が2000トン程度になるので、日本は圧倒的な産金国家と言っても過言ではありません。
新産の金とは?
『新産』と聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。
新産とは、鉱山から産出・精製されて市場に供給される金の事で、市場の7割ほどを占めるもの。
2004年より10年ほどで2,500~3,100トン程の供給がありますが、ここ数年減産に転じており、金相場にも影響を与える一つとなります。
(原産国も南アフリカ⇒中国に移り、人件費や採掘コストの問題が殆どです。)反対に地上在庫から回収され再精製されて市場に供給される金を『リサイクル金(中古金)』といい、毎年1,000トン単位を供給しています。
参考までに新産の金は、世界ナンバー1の産出国である中国でも毎年200トン程度しか取れませんので、その量が圧倒的であることがおわかりになると思います。
つまり、日本は新産の金はわずかに鹿児島県菱刈の住友鉱山にしかありませんが、国内にあふれている電子機器などから集めると7000トン弱の金があり、その意味では世界最大の金の供給国と言うこともできます。
ちなみに、日本やアジアなどは、金の価格が上昇すると金の売却が増え、最近では2013年が金売却のピークでした。
もちろん、それらの買い取られた金は海外に輸出されるので、そういった意味では日本は金の価格が高いときには世界最大の輸出国になります。
反対に1990年代に金の価格が1グラム1000円以下であったときなどは、田中貴金属に購入のために行列を作ったくらいの量が販売され、その結果、世界最大の金の輸入国にもなったのです。
最近では金が注目されることはないのですが、日本やアジアは相場用語で言う逆張りの投資家であり、高くなると売却傾向が強くなり、安くなると買い付け傾向が強くなるという特徴があります。
今の中途半端な値段では金投資にあまり注目は集まりませんが、史上最高値や今の価格が半額になるようなことがあれば、再び注目を集めることになるでしょう。
世界の金埋蔵量と可屈年数
上記のグラフは、金の埋蔵量になりますが、このグラフの中には電子機器などの生活家電の中に含まれる金も含まれており、その埋蔵量は世界一の規模になるのです。
一般的に資源は「埋蔵量」で表現されますが、実はこれ、かなり間違いやすい表現になります。
例えば1970年代に起こったオイルショックのときには、「世界の石油はあと30年分しかない」と言われたものですが、これは可屈年数のことを指していました。
これが大嘘なのは、オイルショックから30年経った2000年代も変わることなく供給されていることで証明されます。
つまり、埋蔵が確認をされてもそれを掘る技術がなければ、それは可屈年数にカウントされないということがあるのです。
例えば、金の可屈量は世界に50000トンあるとされていますが、本当の埋蔵量は実際にはもっと多いのです。
なぜなら、毎年2000トン新産の金が生産をされるのであれば、あと25年で掘れる金はなくなってしまいます。
しかし、おそらく25年で世界中の金が掘りつくされることはないでしょう。
なぜなら、可屈可能な量が5万トンと言っているだけで、世界には日本のように都市鉱山に眠る金などがたくさんあるからです。
金の本当の需給なんてまずわからない
正確な数字は忘れましたが、極めつきは、水や海洋水の中に0.0000・・・%程度の金が含まれていることが確認されています。
要するに世界中に金がいくら存在するのかなんて、海中にも含まれる金があるわけですし、金は永遠かつ不滅なものですから、私たちが金箔として食べてしまったものも地球上のどこかには存在しているのです。
こうやって考えていくと、金の本当の需給なんてまずわからない、ということがわかると思います。
ただ、採掘された金は永遠に残るのですから、いつか未来のどこかでは供給過剰で、金の価格が暴落するかもしれません。
ただ、そんなことは皆さんが生きている間には起こらないような気がします。
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