ニクソンショックとトランプ大統領

酷似するニクソンとトランプ大統領の手法

前回は、西ドイツとアメリカの関係が金本位制度を崩壊させたことの真相についてお話ししました。

この話は、現代のトランプ政権のやり方にも非常につながっています。

今回は、今なぜ金が買いなのかを絡めて話をしてまいりましょう。

ニクソンと同様に財政と貿易の両赤字に苦しめられているトランプ大統領

アメリカの貿易赤字を端緒に貿易戦争が始まっていますが、これはニクソンの大統領在任時と同じ構図になります。

違うのは、貿易赤字と財政赤字の額であって、構図はニクソン時代とトランプさんの時代、つまり現在と同じです。

そして、実際にやっていることも同じです。

参考までに、ニクソンさんが行った金とドルの兌換停止(ニクソンショック)後、金の価格は35ドルの固定レートから自由化され、400ドル近くまで上昇しました。

期間は10年程度かかっていますが、そのくらいの激しい暴騰であったことを認識していただければと思います。

現在の金価格が1200ドル前後と考えると、それが同様に10倍の12,000ドルまで高騰することをあまり想像できませんが、当時もそうだったように同じようなことが起こる可能性があるのです。

ニクソン時代の情勢

ニクソン大統領はウォーターゲート事件によって辞任へと追い込まれた

ニクソン時代の日本は、高度成長期の最中になります。

当時、日本の輸出品として有名なものとして、トヨタの車やソニーのトランジスタラジオなどがありました。

それに対してドイツは、フォルクスワーゲンです。

一方、現代ではアップル製品がかなりのウェイトを占めていますが、当時のアメリカには、輸出できる目ぼしいものがありませんでした。

つまりニクソン時代も今と同様、貿易赤字を垂れ流していのです。

皆さんはあまり認識していないと思いますが、現在もアメリカは貿易赤字を垂れ流しています。

参照元:TRADING ECONOMICS

ニクソン政権は1970年前後です。

ニクソンはJFK暗殺によって大統領に就任し、ウォーターゲート事件で退任しています。

これは、トランプさんのロシアンゲート事件と重なる方も多いと思いますが、単なる偶然にしてはすごいですよね。

ニクソンの経済政策

ベトナム戦争で南ベトナムのジャングル上空を飛行する米軍のヘリコプター

ニクソンは、膨らみ続けるベトナム戦争の戦費による財政赤字と、貿易赤字の拡大に対して、ドルを切り下げるほか手がなく、当時は金価格もドルにリンクしたので、逆に金価格を切り上げたくて仕方がなかったのです。

また、ベトナム戦争からの撤退は、アメリカが対外戦争で初めて負けることを意味しました。

1970年に選挙を控えるニクソンには、その決定が行えなかったことは想像できるでしょう。

ですから、焦点は貿易赤字になります。

貿易赤字を減らす方法は、ドル安にすることです。

ついでに金本位制度ですから金を切り上げたのです。

その上に、アメリカに輸出する国々から輸出課徴金を徴収しました。

国内では、物価凍結と賃金凍結を2か月行うことを決めたことがニクソンショックです。

トランプさんのやっていること

エスカレードする米中貿易戦争

貿易赤字と財政赤字が増えている今のアメリカは、ニクソン時代と同じです。

減税によって拡大した財政赤字を修正することはできません。

そこでニクソン同様、貿易赤字解消に走っているのです。

その結果、トランプさんは世界を相手にした貿易戦争を始めました。

しかし、現在はドル高です。

つまり、貿易赤字を減らすのであればドル安はマストなのに、トランプさんは自ら主導してドル高に導いています。

理由は、中国がアメリカ国債を売り払うとおどしているからです。

ドル安になれば中国は国債の利益を失いますが、ドル高維持にすれば、国債での利益を確保できます。

そして同時にトランプさんは、貿易戦争をぶつけているのです。

トランプさんのやっていることは、ニクソンとほぼ一緒だということがおわかりになるでしょう。

違うのはドル高とドル安だけです。

トランプさんがこの政策を成功させるためには、ドル安に誘導するほかありません。

なぜならドル安にしなければ、貿易赤字が減らないからです。

ですから間違いなく、今はドル高をやっていますが、今後どこかでドルの大幅切り下げを行います。

貿易戦争がアメリカの衰退をもたらす

報復関税は一時しのぎで農業はじめアメリカの各産業の衰退が予想される

ドル安になれば、金の価格が暴騰します。

そして、報復関税によって関税を上げれば、国内産業の価格競争力は回復しますが、高コスト・高賃金に悩まされます。

結果、産業が衰退していきますから、補助金漬けになります。

要するに今の報復関税の対象である自動車、鉄鋼、アルミ、農業などは一時しのぎで、衰退することは確実なのです。

しかもドル安ですから国内物価は下がりません。

衰退産業があるので景気が悪くなります。

ニクソン時代に登場した、「スタグフレーション」という言葉通りになるでしょう。

スタグフレーション化するアメリカと金価格

景気後退の中でインフレが同時進行する現象であるスタグフレーション

スタグフレーションとは、不景気の中での物価上昇を指します。

アメリカはいずれドル安に転換するけれど、それはあくまでも一時しのぎでしかなく、関税障壁に守られた産業は衰退することでしょう。

わかりやすいのは、日本の農業がたどっている道です。

となると、選挙で票が欲しい政治家は、補助金を渡すことになるでしょう。

こちらも日本と同じ政治状況になり、さらに財政悪化が進行することになります。

そうなると国内が衰退し、さらに貿易赤字が膨らむという繰り返しがニクソンからトランプの時代の推移です。

同じことをトランプさんはやろうとしているのですが、その結果、今はアメリカは物価が伸びないけれど、後にものすごいインフレと不景気がやってくるのは誰でも想像ができます。

ですから、インフレに強いアメリカ株と金は買いなのです。

債券は金利が上昇するので叩き売られることでしょう。

1970年代にアメリカは10年物国債が15%になりました。

今のトルコ国債10年物が20%以上ですが、これと同じような状況になっても不思議ではありません。

つまり将来のアメリカは、今のトルコのような状況になってもおかしくないのです。


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