自動車の製造には白金とパラジウムが不可欠
皆さんは、自動車に白金(プラチナ)やパラジウムなどのPGM(白物系貴金属)が使用されていることはご存知でしょうか。
最近、このプラチナとパラジウムの値段が上下動しています。
今回はこの問題と、新たな金属需要について話をしてまいりましょう。
自動車の製造に白金(プラチナ)とパラジウムが必要不可欠になったのは、1970年代ごろからになります。
1970年代の日本に何が起こったのかと言えば、皆さんも小学校のころに学習した、公害問題です。
つまり、自動車の排気ガスが地球の環境汚染を引き起こすということで、日本やアメリカで排ガス規制がスタートしました。
排気ガスの原因は二酸化窒素という物質で、エンジンの燃焼により発生した有害なガスはマフラーから排出されるのですが、ここにプラチナを取り付け、触媒として利用することで排気ガスの浄化作用を促進したのです。
そして、二酸化窒素が多く排出される原因は、燃焼するガソリンにあるため、日本ではJISによって規格を統一し、規格外のガソリンは販売してはいけないことになりました。
2000年代前半まで続いた白金とパラジウムの高騰
アメリカでは、従前のガソリンと今のガソリンを改質ガソリンとして製造しています。
このように、環境意識の高まりとともにプラチナとパラジウムの需要が高まったことが、両白物系貴金属の値段が高騰した原因です。
これは主に、1990年代から2000年代の前半まで続きました。
1990年代の高騰の原因は、日本ではハイブリッドカーの誕生によるものです。
それまでは、排気ガスの触媒として多くのプラチナとパラジウムが使用され、価格が押し上げられていましたが、半分電気自動車であるハイブリッドカーの登場により、蓄電池の触媒に大量のプラチナとパラジウムが必要になったことから、さらに価格が押し上げられました。
その後、需要が沈静化した理由について、以下に記してまいります。
欧州と中国でのガソリンカー規制
報道などでご存知かもしれませんが、ヨーロッパや中国は地球温暖化の原因を少なくするため、2030年ごろを目途にガソリンカーの走行を禁止し、全面的に電気自動車に移行することを発表しました。
ガソリンカーやディーゼルカーから電気自動車に移行すれば、内燃機関エンジンエネルギーから排出される有毒なガスや、温暖化につながる空気が発生しなくなるので非常に有用なことになります。
日本やアメリカでは具体的な規制は発表されていませんが、世界的な流れになるのは必然でしょう。
最近、アメリカでは何かと騒がしいテスラモーターズ、日本ではトヨタの動きが毎週のように発表され、電気自動車化への動きが加速されていることは想像に難くありません。
そして、従前の蓄電池ではなく、新たに水素電池というものが開発されようとしています。
ただし、こちらは重量の問題で開発が後退しているのが現状です。
消えゆく白金とパラジウム需要
水素電池には大量のプラチナとパラジウムを使用するのですが、仮に開発がとん挫した場合、プラチナの値段が下がるのは必然です。
さらに排気ガスが出ない電気自動車が主流となれば、排ガスの触媒として使われてきたプラチナとパラジウムに需要がなくなるのも必然になります。
その上、以前もお知らせしたように、電気自動車の蓄電池の触媒に、今までのプラチナとパラジウムに代わって、炭素(炭のこと)が用いられることが将来的には確実です。
なぜなら、触媒に貴金属を用いるよりも、炭素のほうが安いからです。
すでに小型の炭素電池が実用化されており、自動車に技術移転されるのは時間の問題となっています。
このように、プラチナ需要の5割を支えた自動車の触媒需要が急速になくなる見込みなので、プラチナやパラジウムの値段は必然的に下がることになります。
逆に、最近のマンホール泥棒に代表されるように、銅の価値が世界的に高まっていることも事実です。
白物系貴金属に代わる需要
自動車の製造で、プラチナとパラジウムが大量に消費されることはおわかりになったと思いますが、代わりに別の金属が大量に使用されることが判明してきています。
今までのガソリンカーには電気製品はあまりなかったのですが、電気自動車に移行すれば、自動車の細部に電気を行き渡せるための電線が大量に必要になってくるのです。
従前のガソリンカーなどと比べて、2倍の量の銅が使われることになります。
ですから、銅に関しては非常に強気な見方が出ていることも確かです。
注目は、このガソリンカーから電気自動車に移行するのは世界的な流れで、今主流のガソリンカーは消えてなくなり、電気自動車への乗り換え需要が発生するということです。
となると、安値を低迷している銅は、それほどは弱気になることができないのが常識的な判断になるかと思います。
このまま白金とパラジウムは弱気でいいのか?
今、日本やアメリカを筆頭に世界の政府は借金まみれになっています。
これは、私たちが日常的に使っているお金の価値が減っていることを意味し、通常ならインフレになりやすい状態ですが、依然として日本は、物価が上っているのか下がっているのかわからないような状況です。
ただし、アメリカはリーマンショックなどの傷から癒えて、物価が上昇しつつあります。
このインフレに対抗し、保護するものは伝統的に金ですが、現在1200ドル前後と決して安くはありません。
金は人類共通の価値を持っていますが、世界の貴金属を見てみると、結婚指輪などに用いられるプラチナも金より割安な金属として注目される可能性が高いと考えられます。
年配の方には、プラチナは金よりも高額というイメージがあり、金よりも安いプラチナにブームが来る可能性がありそうです。
パラジウムに関しては世間の認知が進んでおらず、存在すら知らない人の方が多いと言っても過言ではないかもしれません。
世界的な借金漬け経済に対し、金の需要が高まるのはおそらく間違いないですが、あまりにも高くなった場合、プラチナの需要が高まる可能性もあることを念頭に、プラチナ価格に注目するのも悪い手ではないでしょう。
コメントを残す