トルコ政府の準備金の推移
トルコ中央銀行は、インフレを撃退するために、政策金利を市場予想の3%に反して6.25%上げることを決定しました。
今回は、この決定および金市場との関係を解説してまいります。
トルコ中央銀行は6月に準備金を売却し、そしてトルコリラが急落した8月にも保有の金を売却した形跡がありました。
しかし、今年9月10日に発表されたトルコ中央銀行が抱える準備金は、再び買い増したことを示しています。
ワシントン協定によって金の売却などのルールが設定されている関係で、このような準備金の上下動になったのでしょう。
例えば、金の売却を制限するワシントン協定では、リース契約でも売却としてカウントされます。
参考までに、金のリースとは、金を担保にしてお金を借りることです。
政府保有の金の年間売却量は制限されていますが、年内に買い戻した場合には、それがカウントされないことになっています。
つまり、外貨準備の一部である金準備をいったんトルコ政府は放出しているのですが、それ以上の金を買い付けていることになるのです。
トルコが金を買い戻した目的
トルコリラは年初から最大で40%下落しており、通常、この水準にくれば為替介入や通貨防衛が行われます。
前月より10%以上自国通貨が下落した場合、当該政府には為替介入の権利を有することが国際ルールとして存在しているからです。
イギリスのブリグジットに際して、10%下がって、すぐにポンドや円が切り上がったのは、この介入を警戒したものかと思います。
要するに、為替介入をすれば、通常、外貨準備を含む金準備高も減ることになるのですが、その通貨防衛がひとたび終了すると、再び金を買って準備金に戻した可能性があるのです。
しかもその量は前期比で増えているのですから、可能性は少ないですが、介入によって利益さえも出しているかもしれません。
つまり、金の準備を取り崩したり積み増したりするのは、通貨防衛を行うためであると推測できます。
エルドアン大統領の目的とは?
なぜトルコの大統領であるエルドアンさんがこのようなことを行うのか、不思議に思う方は多いのではないでしょうか。
エルドアンさんは、常々「インフレ対策に金を使う」と言っています。
つまりトルコの通貨リラを金とリンクさせて、インフレを防ぐと言っているのです。
これは別段、荒唐無稽なことではなく、歴史上でインフレに悩んだ国は数多くあります。
中には1年足らずでインフレを収めた国もあります。
米国でさえ、インフレを収めるためには10年近くの年月をかけています。
その国では、年20%程度のインフレに悩まされていましたが、金とその国の通貨の支払いを保証すると発表した途端、1年と経たないうちにインフレ退治に成功しました。
参考までに、今のトルコのインフレ率は18%程度であり、その国と同じようなインフレ率です。
そして、政策金利を今月に利上げしましたが、逆に市場金利の長期物10年金利は、これと同時に下がっています。
リラと金の交換を保証しインフレ退治へ
市場金利が下がる理由は、おそらく、エルドアンさんが「金を使った政策を行う」と常日頃から言っているからでしょう。
実際にトルコリラが年間40%下がれば、通常ならリラを多く保有したいとは思いません。
なぜなら、どこまで下がるかわからないからです。
しかし、リラを金と交換することを保証すれば、人々は、リラが下落しても、慌てて商品や不動産などの資産を買う必要がなくなります。
最終的に、政府がどの国に行っても価値のある金に交換してくれますので、リラ売却の必要がなくなるからです。
そういう連鎖が起こってくれば、自然とリラの価値は安定し、インフレを退治することができます。
ただ、アメリカやヨーロッパなどの先進国が、インフレを退治するのに10年近くの年月がかかったのは、発行通貨量に対して金の保有が困難であったからです。
今回の場合、トルコに金を買う余裕があるということは、結局、自分の手持ちのリラが無価値になる心配がないことが、市場金利の低下を引き起こしていると思います。
トルコの金融政策から読めること
リーマンショックから10年が経過した今、政府債務はトルコだけではなく各国で増えており、その総額は、2京ドルとも3京ドルとも言われています。
このような多額の債務が、いつデフォルトを起こす可能性があるかはわかりませんが、可能性は必ずあります。
債務の持ち主は各国政府であり、それらの政府は各通貨の発行主体です。
発行主体が潰れれば、その国のお金は価値がなくなります。
結果、時代が変わってもやはり最終的に人類が信用できるのは、金ということになります。
日本やアメリカも債務が増大しており、常にそのリスクをはらんでいると認識してください。
最近の金価格上昇はこれらを物語る可能性があります。
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