米中貿易戦争の悪影響

鉄鋼およびアルミ関税の影響

アメリカが中国に最終関税をかけたことにより、世間では「アメリカが貿易戦争に勝利した」と言って、株価が新高値に迫る勢いです。

今回は、米中貿易戦争は本当にアメリカの勝利なのかを検証していきます。

参照元:TRADING ECONOMICS

アメリカNY株

参照元:TRADING ECONOMICS

上海株

米中貿易戦争は、アメリカ株は新高値、逆に上海株はここ数年来の安値というかたちで、マーケットにその帰結が表れています。

上記のグラフを見れば、今回の貿易戦争は、アメリカの一方的勝利とマーケットが評価していることが見て取れるでしょう。

米日欧のアルミ価格の推移

トランンプさんがアメリカに輸入する鉄鋼製品、アルミ価格に関税をかけると宣言し、実際に関税をかけた結果が以下の表になります。

参照元:Futures & Options Trading for Risk Management – CME Group

「アルミニウム・プレミアム・プロダクト」とありますが、要するにアルミの価格です。

ヨーロッパ、日本はほぼ変動していないのに、アメリカの値段が上昇していることを確認してください。

アメリカのアルミ価格上昇が意味すること

缶など身の回りにもあふれるアルミ製品

貿易問題でこういった報復関税をかけると、国内のアルミ価格が上昇するという問題を内包していることがわかりました。

アルミは、自動車や飛行機などの輸送貨物に多く使われ、日常生活でも、軽くて錆びない金属製品として、家電や家具などにも使われています。

つまり、こういった数年に一度しか買い換えない、自動車や家電、家具の値段が上昇することになるのです。

今年の前半まで、アメリカの物価が上昇しないことが問題視されましたが、今は消費者物価で3%上昇していることからわかるように、この問題は解消されつつあります。

今後、自動車や飛行機代金を筆頭に、アメリカ国内の価格が上昇することを意味しているのです。

競争力を失ったアメリカが勝者と言えるか

アメリカの主要輸出品である航空機の工場内

飛行機などはアメリカの主な輸出品目になりますが、価格の高いアメリカの航空機の競走力が出るでしょうか?

そして、国内市場においては、安くて品質の良い商品が入ってこなくなることによって、競争原理が働かなくなります。

つまり、今までは安くて品質の良いアルミを使って自動車や飛行機を製造していたのですが、外国製品を実質上シャットアウトすることによって、米国内のアルミ業者は安い製品に対抗するための品質改良を行わないようになります。

その結果、外国にアルミや鉄鋼を輸出しようとするときに競争力がなくなり、長い目で見ればアメリカから競走力を奪うことになるのです。

中国や日本のアルミ製品は、アメリカという市場をなくしたのですから、代替の輸出先を探し、その売り上げ減をカバーしようとするでしょう。

ですから、より激しい競争力がつくことになり、ますます日中のアルミ、鉄鋼業界とアメリカの業界の差がつくようになります。

これで冒頭のように、「アメリカが貿易戦争を制した」と言えるでしょうか?

「アメリカの物価上昇はドル買い」は間違い

為替レートはアメリカと日本の物価を均衡させるためにあるもの

一般的に為替相場は、物価が上昇すれば、その国の通貨は売りということが経済学の教科書に書かれています。

この意味は非常に簡単で、今の1ドル112円という為替レートは、アメリカの物価と日本の物価を均衡させるためにあるものです。

つまり、アメリカの物価が上昇すれば、日本円で買い物をするときに値上がりしたと感じるのを是正させるのが為替レートになります。

アメリカの物価が上昇すれば、アメリカドルは自動的に値下がりすることになります。

「アメリカの物価上昇は、ドル買いだ」と言う専門家をよく見かけますが、それは間違いで、日本の物価上昇がアメリカの物価上昇を上回っている場合がドル高になるのです。

現状はアメリカの物価上昇が大きいので、ドルが高くなる可能性はあまり大きくありません。

つまりドル安になるのですから、「金の価格はどうなるのか?」ということになります。

言うまでもなく金は買いになるのです。

今のうちに安い金を買っておいたほうが良い

貿易戦争の後にアメリカの物価が高騰するのは必然

物価が上昇することを、インフレと呼びます。

つまり「インフレに強い金」と言われる背景には、物価が上昇し、お金の価値が減価していることをも含んでいるのです。

お金の価値が減価していても、金が買いになるのは当然ですよね。

アメリカの物価が上昇しているうちは、金の値動きはほとんどありませんが、この貿易戦争の結果、いずれアメリカの物価が高騰するのは必然です。

そのときに、今のように金の価格が安値で低迷しているはずはないでしょう。

要は、今後、このようなことが起こることがほぼ確実になりますので、今のうちに安い金を買っておいたほうが良い、というのが弊社の見解です。

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