金準備を増やしてきている国
今までの金の価格は、中央銀行による金の購入によって大きく上下動をしています。
今年は、トルコによる大量の金の売却などで、現段階では、中央銀行による金購入は去年よりも減っています。
今回は、金準備を増やす国の解説をしてまいります。
ロシア
中国
インド
メキシコ
トルコ
上記5ヵ国が、中央銀行によって金準備を増やしてきている国と一般的に言われています。
ここで、このようなことを取り上げる意味は、ここ数年、工業需要、宝飾需要、投資需要などは安定的で、金の需要を大きく左右するのは、中央銀行による金の購入であるからです。
そのほかには証券投資からの金投資、つまりETFによる金購入が実態になります。
そして、中央銀行の購入の中でもその幅が大きいのが、上記のロシア、中国、インド、メキシコ、トルコです。
この5ヵ国を分析し、どのような共通項があるのかを考え、今後の値段動向を分析していきたいと思います。
ロシア
冷戦終了後にロシア共和国が誕生し、資本主義国家に転換したことはご存知の通りです。
その後、現在までに石油価格が急落し、結果、債務不履行になる可能性がささやかれ、そのたびに経済が低迷してきました。
ロシアの主な輸出品目はエネルギーで、中でも石油が主要な輸出商品になります。
ここ数年、原油価格は乱高下しており、そのたびに国家の信用崩壊に近いことが起こり、ロシア政府を悩ませてきました。
石油価格はドルに連動しており、ドルが高いとき、言い換えれば、アメリカが経済発展しているときは、原油価格が下がるという特性があります。
つまり、ドルの価格に左右されない体制を作るために、金の保有を増やしていると考えられます。
最近も原油価格が乱高下していますが、ロシア経済が危機に陥るようなことがなくなっていることがその証拠です。
中国
中国の場合、人民元の国際化がキーポイントです。
今までのドル基軸通貨に変わり、人民元を国際的な通貨にしたいという思惑が共産党にはあります。
ドル基軸制度の裏付けは、アメリカ政府の信用であり、その信用がなければ、ドルの価格は下落するというシステムになっています。
中国が人民元を国際的な信用通貨として流通させるには、アメリカ以上の政府信用をつけないと、目標は達成不可能です。
その答えは、皆さんの中にあると思います。
人民元とドル、仮にどちらに全財産を預けるかという問題に直面したとき、ほとんどの方はドルを選択するでしょう。
そこで人民元を金で裏付けし、信用をつけるほかないのです。
中国は、人民元の国際化が目的で、金の積み立てを行っているのです。
なお、共産党政府は中国の準備金の積み立て金額、数量を非公表としており、上記の数字は推定になります。
インド
インドは広大な国土と多数の人口を抱える有望な国家として注目を集めています。
また、金好きで、婚礼の際に大量の金を使うことでも有名です。
しかし、今後の経済成長が期待されている反面、民族制度に大きな問題を抱えています。
皆さんも学校で学習したカースト制度です。
この制度は、欧米から人種差別として大きく批判されています。
一方、インドから言わせれば、効率的な身分制度であり、世俗的な制度というジレンマもあります。
この制度を、メディアによって大きくフォーカスされることがあれば、インドの通貨ルピーは大きく売られることになるでしょう。
つまり、ドルの価値に左右されながら、政策を変更しなければならないことを踏まえると、準備金としてドルを保有するより、金のほうがメリットが大きいと考えていると推察できます。
メキシコ
中東やアジア諸国が第二次世界大戦後に独立したのに比べ、メキシコはアメリカ独立の50年後に独立しています。
つまり、メキシコはほかの新興国と比べて早く独立を果たしており、その分、経済発展が早いはずなのですが、ほかの南米諸国と同様、経済発展が遅れています。
ただし、1970年代に発見されたメキシコ湾岸での石油が、この国を大きく発展させました。
しかし、その石油会社の国営化から大きな非効率を生み、現在、油田は枯れているのに等しいのが実態で、再び経済的苦境に立たされています。
トルコ同様、自動車産業が発展しており、現在はそれでしのいでいる状況です。
そして、アメリカと国境を接していることから、ドルの影響をもろに受けることになります。
石油の採掘で大きく発展したことから、天然資源の保有が大きな発展をもたらすことを知っており、石油の代わりに金を保有していると考えることができます。
トルコ
トルコはほかの国と比べて、金の保有を増やし始めたのが比較的遅いことが、上記のグラフでおわかりになると思います。
これは、2016年7月にクーデターが起こり、結果、通貨リラが暴落し、インフレになったことがきっかけです。
最近では、アメリカのドルを背景とした攻撃への反省から、エルドアン大統領は金を中心とした通貨制度の構築をうたっています。
この発言の背景を見れば、今後も金の保有を増やすと宣言したのに等しいことがわかるでしょう。
まとめ
上記の国々が金保有を増やす理由は、中国を除き、アメリカないしはドルの影響によって国の盛衰が左右されることを嫌い、その影響から脱したいがためという意図が見えてきました。
中国にしても、最近の米中貿易戦争によって、経済停滞の影響をもろに受けていることが確認できます。
アメリカの出方次第で経済が左右される状況は避けたいと、中国が考えるのは当然でしょう。
日本に「アメリカがくしゃみをすれば日本は咳が出る」という格言があるように、ほかの新興国もドルの上下動の影響をもろに受けているのが現状です。
最近のトルコ、ベネズエラ、アルゼンチン、南アフリカ、インド、ブラジルなどの経済苦境も、根幹を突き詰めれば、ドルの上昇によって起こっていることは異論をはさむ余地はありません。
先進国もそうですが、新興国がアメリカ、ドルの動向によって、大きく経済状況が左右される状況から脱したいと考えているのが常だと思います。
そのためには、金が有効であると証明したのがロシアであり、それにメキシコ、トルコ、インドなどが続いているのでしょう。
今年の前半は中央銀行による金投資が減りましたが、後半は、現在ドル建てで安値圏内にある金の価格は、多くの中央銀行による投資によって、増える可能性は非常に高いと言えます。
金本位制度が崩壊したのが1971年になりますが、再び金に大きく注目が集まる時代になったと考えるべきではないでしょうか。
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