存在そのものがダイヤモンドの代名詞「デビアスDE BEERS」
ジュエリーや宝石に詳しくないという方でも、「デビアス」の名は知っている人は多いことでしょう。
デビアスとは名だたるダイヤモンド鉱山の採掘権を独占し、「サイトホルダー」と呼ばれる限られた宝飾業者だけに卸してきた、世界最大のダイヤモンドカンパニーです。
事実上世界中のダイヤモンドを手中に収めてきた「デビアス[DE BEERS]」は、100年以上もの長きに渡って、名だたるダイヤモンド鉱山の採掘権を独占し、ダイヤモンド市場をコントロールしてきました。
そして2001年から「デビアス・ダイヤモンド・ジュエラーズ」を設立し、2018年現在では世界17カ国で32店舗を運営しています。
存在そのものがダイヤモンドの代名詞といってよいデビアス。その歴史や現在の状況についてご紹介いたします。
知られざるデビアスとサイトホルダーとのダイヤモンド取引とは?
デビアスと取引できるのは、全世界で100社にも満たないサイトホルダーと呼ばれるデビアスから直接ダイヤモンド原石を取引できる権利を持つ企業です。
デビアスとサイトホルダーたちとの取引は、年10回行われる受注会「サイト」で行われます。
サイトホルダーたちは各々ダイヤの詰まったパッケージを渡されます。
入っているダイヤモンドの量と質を確認することは許可されますが、彼らに許された選択肢はすべて買うか、もしくは一切買わないかのどちらかです。
そして一度でもデビアス社からのダイヤモンドを買わないことを選択すれば、それはサイトホルダーの資格を失うことを意味しています。
交渉の余地が全くない、商取引はかたちだけ、自由資本主義の観点からは特異ともいえるやりかたです。
しかし、このデビアスの独占体制によって、今日に至るまでダイヤモンド価格が高値で維持されることにつながりました。
デビアス体制ともいえるダイヤモンド取引ルール、そしてそのコントローラー、デビアスはどのようにして誕生したのでしょうか。
ブランドヒストリー1.デビアスは19世紀のイギリス植民地支配の産物
デビアス社のはじまりは、1880年当時南アフリカ共和国の宗主国だったイギリスの元首相「セシル・ローズ」らが創業したダイヤモンド採掘企業でした。
その後デビアスは、ユダヤ人財閥ロスチャイルド家の支援によって、またたく間に勢力を伸ばし、短期間で本国の巨大ダイヤモンドシンジケート「ロンドン・ダイヤモンド・シンジケート」と販売契約を結ぶことに成功しました。
そして二度の大戦によるダイヤ需要によってさらに巨大組織へと成長します。
その間にデビアス社の経営そのものはロスチャイルド同様にユダヤ人財閥オッペンハイマー家(現在のデビアスの親会社「アングロアメリカン」も同族)に移行していました。
デビアス社は「DTC」と呼ばれる取引市場において、デビアスの間接的代表者となるディーラーを介することによって、独占法違反に抵触せずにダイヤモンド市場を支配することに成功してきたのです。
南アフリカの豊富なダイヤモンド鉱床を独占し(ボツワナ政府と共同でデブズワナ社を、ナミビア政府と共同でナミデブ社を所有)、一握りのサイトホルダー(日本ではTASAKIのみ)に販売することで、事実上ダイヤモンドの流通をコントロールし価格統制を行ってきました。
しかし、度重なるカルテルを理由とした多額の罰金の支払いや、新興ダイヤモンド鉱山勢力によって、全盛期はダイヤモンド流通市場の90%以上のシェアを誇ったデビアスも、2018年には50%を割り込むようになっています。
ブランドヒストリー2.ダイヤモンド小売りに舵を切った新生デビアス
2001年デビアス社は大きな転機を迎えます。
ダイヤモンド小売業に乗り出すことを決意し、ルイヴィトン(LOUIS VUITTON)はじめ多くのファッション産業を抱えるLMVH社と立ち上げた「デビアス・ダイヤモンド・ジュエラーズ」にて大きな成功を収めました。
日本においてもデビアスの直営店が、2003年9月以来、松屋銀座、日本橋高島屋、新宿伊勢丹相次いで同時オープンし、砕石は全国8店舗展開し、ブライダルジュエリー界の台風の目となりました。
同時にスタートした業者向けダイヤモンドブランド「フォーエバーマーク ダイヤモンド」は世界のダイヤモンドの中でも1パーセント未満のクオリティの石だけを扱うというハイクオリティを誇り、大きなブランド力を持ちました。
なにしろフォーエバーマークダイヤモンドで取り扱われるダイヤモンドは、「0.14カラット以上」「クラリティはSI2以上」「カットはベリーグッド(Very Good)」「カラーはL以上」。という厳格な基準をクリアする必要があります。
また、ダイヤモンド選びに大切なことは何よりもその輝きです。
デビアスではいわゆる「4C(カラー、クラリティー(不純物の度合い)、カット、カラット)」とは別に、デビアス独自基準として「ファイヤー(光の屈折が生む虹色)」「ライフ(きらめき)」「ブリリアンス(透明感)」という、3つの評価基準も重視しています。
しかし、わずか14年後の2017年には、LVMHとの「デビアス・ダイヤモンド・ジュエラーズ」合弁解消という決断を下しました。
デビアスは親会社「アングロ・アメリカン」の懐に戻り、LMVHはジュエリー界のキープレーヤー「ブルガリ(BVLGARI)」を手中に収めたことから、両社がたもとを分かつのは自然な流れだった、というのがおおかたの見方です。
また同年デビアスは、日本国内に唯一残っていた直営店である銀座本店をクローズしました。日本における店舗戦略を見直す、というのがその理由でした。
ブランドヒストリー3.ミレニアル世代がターゲット!人工ダイヤの開発に着手!
ここ20年近く猫の目のごとくかわるデビアスのマーケティング戦略ですが、現在デビアスがコンスタントにダイヤを買い上げてくれる富裕層以外に注目するのは80年から90年代に生まれたミレニアル世代です。
この世代においては伝統的なダイヤを資産とするマーケティングよりも、大切な人とのメモリアルギフトとしてのダイヤの価値を求めてもらうことが有効だと考えたデビアス。
そこで、デビアスは人工ダイヤのジュエリーショップをスタートすることを決定したのです。
2018年秋以降にロンドンで販売が予定されている「ライトボックス・ジュエリー」がそれで、「1カラットあたり800ドル」という低価格で販売され、カラーも「ピンク」「ブルー」が選べます。
あまり知られていませんが、デビアス社内には「エレメント・シックス」と呼ばれる人工ダイヤ部門があります。工業用研磨材のダイヤを作っており、デビアスはこの市場でも主要サプライヤーとなっています。
この技術を生かして、ジュエリーに通用する美しい人工ダイヤを作ることができるようになり、若い世代でも気軽にダイヤモンドのジュエリーを楽しむことができるようになるのはもう間もなくのことです。
「デビアス[DE BEERS]」のジュエリーを手に入れられる場所
一時は全国8か所にあったデビアスショップですが、2018年現在日本国内にデビアスのジュエリーを購入できる店舗はありません。
日本における店舗戦略を見直しのため、2017年6月に国内唯一の店舗である銀座本店をクローズしています。
今後の展開に期待しましょう。
■ 公式サイト
https://www.debeers.co.jp/
今後どうなる?「デビアス「DE BEERS」」の戦略は続く
これまでお伝えしたように、デビアスには、創業時のロスチャイルド財閥の支援、オッペンハイマー財閥の乗っ取りに近い経営権移譲など、有名なユダヤ人財閥の名がたびたび登場することもあって、様々な伝説やドラマを生んできました。
そして、ダイヤモンド原石市場で流通するダイヤモンドのほとんどがデビアス社から供給されてきた時代は変わりつつあります。
しかし、確実に言えるのはデビアス社はダイヤモンドマーケットの中心でありつづけることを決してあきらめていない、ということです。
たとえ、そのダイヤモンドが地中から掘り出されたのものではなく、研究室のケースのなかで一夜で出来上がったものだったとしても。
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