米金利急騰の背景

アメリカ金利上昇の原因

金の価格の変化要因には、金利動向が含まれます。

アメリカの金利が10月3日を境に大きく上方向に行っています。

金利の動向には、今まで再三、良い金利上昇と悪い上昇があると言ってきました。

良い金利上昇は金価格の下げ圧力になり、悪い金利上昇は金価格の上昇圧力になります。

今回は、世界に波及したアメリカの金利急騰の影響と、根本の原因が良い金利上昇なのか、悪い金利上昇なのかを解説してまいります。

参照元:TRADING ECONOMICS

9月26日のFOMC(連邦公開市場委員会)で3ヵ月ぶりの利上げが決定しましたが、すでに金利が上昇してしまったあとだったので、市場は反応しませんでした。

ところが、10月に入っていきなり金利が上昇しています。

ニュースでは、この背景をほとんど解説していませんし、あったとしても見当違いで、根本的な説明をするアナリストや専門家は皆無に等しい状況です。

金利上昇に関するニュースと中国の影

温厚なペンス副大統領までもが中国への怒りをあらわにした

10月5日以降に、この金利上昇が何によってなされたのかというニュースが一斉に入ってきました。

https://www.sankei.com/world/news/181002/wor1810020033-n2.html
産経新聞より

同日に中国がトランプ政権を支持しないという非公式な批判をしたことに対するアメリカ側からの反発の記事です。

この記事が出たのは10月2日で、金利の急騰は翌3日になります。

そして、10月5日には温厚なペンス副大統領までが、

トランプ米政権、中国と「全面対決」宣言

https://www.sankei.com/world/news/181005/wor1810050021-n1.html

中国を大非難しました。

この上、親中派と言われるムニューシン財務長官までもがこれに加われば、アメリカ金利急騰の背景は中国だということがほぼ確定します。

アメリカ債券を買ってくれる最大の顧客は中国と日本であり、本来その顧客をないがしろにするような発言を、債券発行大臣であるムニューシン長官がするわけがありません。

発行担当大臣までもが中国を非難するとなれば、今回の金利急騰の背景はほぼ中国だと言えるでしょう。

トランプ大統領の怒りと中国によるアメリカ国債売却

米中の貿易戦争はもはや安全保障や国家体制の問題

発端は、中国政府の非公式な批判にトランプ大統領が猛烈に怒った、ということでしょう。

それに対して中国が、アメリカの選挙に介入していないと表明するため、アメリカ債を売ったのが10月3日だというのが真相だと思います。

そして、本当に債券を売ってしまったことに猛抗議したのがペンス副大統領なのでしょう。

となると、米中の貿易戦争はもはや貿易レベルの話ではなく、安全保障や国家体制の問題になっていると想定されます。

米中の対立は貿易だけだと思っている方が過半でしょうが、アメリカにとって債券を売られるということは、国家の危機に匹敵する問題だからこれだけ過激な反応なのです。

ペンス副大統領まで表に立って批判をするということは、相当な危機感であり、米中の対立は相当長引くことが考えられます。

ゆえに、この世界的な金利上昇は「悪い金利上昇」で、金にとって買い材料になるということです。

その上、金利上昇を受けてドル安が進行している、つまり今回の金上昇は円安からではなく、ドル建て金価格から来ているのですから、ドル建て金価格を見ながら金の将来価格を予想しなければなりません。

米中貿易戦争はアメリカの勝利だが…

貿易戦争はアメリカの勝利と報道されているが…

中国はなぜ、いきなりトランプ大統領批判を行ったのかという疑問がわきます。

米中の貿易問題は、中国が一方的に貿易不均衡問題を呑まざるを得ないのはわかり切っていますので、報道されている通りアメリカの勝利です。

ただし、最終的にアメリカの勝利というような論調はクレイジーです。

貿易戦争に勝利したアメリカに、今後何が起こるかは見ていればわかります。

金にとって数年後には買い材料しか出てこないことになります。

中国の背景

2030年までに全自動車の電気自動車化を掲げる中国

中国の問題は、国内エネルギーです。

アメリカ中心のイラン制裁に対して、日本も交渉をしていますが、これを無視しているのが中国、トルコ、韓国になります。

なぜなら、イラン産原油の禁輸措置を取れば、上記3ヵ国では物価高騰の懸念があるからです。

最近やたらとトランプ政権が北朝鮮に秋波を送るのは、韓国への意趣返しの可能性が高く、あまり日本では報道されていませんが、金利高騰直後にトルコ制裁を強化しました。

中国の原油輸入1位はサウジアラビアであり、これは日本と同様です。

しかし、日本と違うのは、そのほかの国々は意外と思われるかもしれませんが、アフリカ諸国です。

この原油輸送ルートを確保しないと、共産党政府は倒閣される可能性があるので、南沙諸島に再び軍隊を送り始めているのです。

中国の電力不足問題は、数年前から議論されていますが、ここ数年は下火になっています。

しかし、現状も電力不足問題は続いており、これがさらに続けば、2030年までに国内のガソリンカーを電気自動車にするという方針が一切進まないことも意味します。

こうした状況に配慮して、トランプ大統領は、OPEC(オペック)に原油の増産を求めましたが拒否され、さらに原油価格は上昇しています。

つまり中国の反旗は、原油価格を背景としていると推測されるのです。

アメリカの背景

世論調査で有利とされるも先の大統領選で破れたヒラリー・クリントン

アメリカの背景は、言わずと知れた中間選挙になります。

トランプ大統領のロシアンゲート疑惑は限りなくクロと言ってもよいような状況であり、これが露見するか、しないかだけの問題です。

その上に世論調査では現在、8ポイント程度、民主党にリードを許しており、共和党の敗戦は必至です。

しかし、2016年の大統領選挙で、世論調査がいかに役に立たなかったかを思い出すことも必要です。

ヒラリー圧勝と言われ、結果は僅差でトランプ勝利でした。

わかっていることは、イギリスとアメリカの選挙では、世論調査は役に立っていないということです。

今回は悪い意味での金利上昇なので金は買い

実はアメリカが世界一の原油、天然ガス産油国

実は、アメリカが世界一の原油、天然ガスの産油国になります。

アメリカはいくらでも増産ができるのですが、それを貯蔵するクッシングという設備が足りず、供給を増加させても配給できないというジレンマがあり、絵に描いた餅です。

表面上の問題は貿易戦争から始まっていますが、中国は原油供給の問題からさまざまな摩擦を起こし、アメリカの問題は借金を誰が負担するか、そして、中間選挙の行方が焦点になっていることがおわかりでしょう。

この場合、金価格に影響があるのは金利上昇であり、今回は悪い意味での金利上昇ですから、買い材料になるということです。

この問題の終結点は、再び中国がアメリカ国債を購入し、中国の問題はこれから需要期を迎える原油価格が下がり始めることです。

これだけの問題をきちんと理解していれば、どういうニュースが出てくれば金の買いは終了になるかはわかると思います。


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