デビアス社とダイヤモンドの発見
「ダイヤモンドは永遠の輝き」と言われますが、実際の生産・販売の大手であるデビアス社に関して、皆さんあまり知らないのではないでしょうか。
今回はそのデビアス社についてと、価格がどう決定されているかの話をしていきます。
デビアス社は、ダイヤモンドを生産・販売する世界一のメジャーです。
つい最近まで、業界を独占していましたが、近年は新しい鉱脈の発見によって、寡占状態は改善しつつあります。
1867年に、南アフリカのケープ州とオレンジ自由国の間で良質のダイヤモンドが大量に発見されたことは、世界に興奮をもって伝えられました。
それまでのダイヤモンドは、希少な鉱石としてほとんど発見が不可能だったので、この発見は非常な驚きだったのです。
1880年にデビアス社を創業したセシル・ローズは、オックスフォードの学生です。
彼はもともと病弱で、南アフリカのナタールで療養していました。
当時の南アフリカは、イギリスの植民地であり、宗主国の富豪であるロックフェラーがデビアス社に出資したことから、南アフリカのダイヤモンド生産が始まったのです。
1911年には、この鉱区はほぼデビアス社の独占状態になりました。
オッペンハイマーによる金鉱脈の発見
金はダイヤモンドに遅れること1年、1868年にトランスバール共和国の首都ブレトリア(現在のヨハネスブルグ)の南方で発見されました。
この鉱脈の金含有率は非常に低かったのですが、当時としては世界最大級の金鉱脈となり、現在でも採掘が続けられています。
ここにオッペンハイマーが攻撃的な出資と開発、そして現代風にいえばM&Aを繰り返し、金鉱脈のほとんどを支配しました。
当時、世界は金本位制度であったので、オッペンハイマーは莫大な富を築くことになります。
彼の会社の名前は、アングロ・アメリカン社です。
そして莫大な富を背景に、1926年に世界最大のダイヤモンド生産会社のデビアス社を傘下に入れました。
つまり、デビアス社は、もともとイギリスのロックフェラー財閥で完成した会社であり、アングロ・アメリカ社は、もともとが金の生産者だったのです。
金とダイヤモンドがよく同列で語られるのは、生産している会社が同じ系列の企業であることが理由です。
鉱山王セシル・ローズ
デビアス社を創業して巨万の富を得たセシル・ローズは、イギリス本土政府の支援を受け、金にも事業を拡大していきます。
当時のイギリスのアフリカ植民地国をローデシアと呼ぶのは、ローズの名から取ったのは言うまでもありません。
金鉱山鉱区は現在のヨハネスブルグ南方にありますが、ここでは前宗主国であるオランダの「アフリカーナー」と呼ばれるオランダ系の白人が農業を営んでいました。
ローズは、この金鉱山区も手に入れようとし、1896年にイギリス植民地軍の支援を受けてヨハネスブルグを占領しようとしましたが、大失敗に終わっています。
しかし、アフリカーナーとの闘いは終わらず、今度はイギリス本土の支援を受けて戦争が始まりました。
これを南アフリカ戦争、アングロ・ボーア戦争と呼びます。
この戦争はイギリスの勝利に終わり、南アフリカ共和国の誕生に至るわけです。
しかし、作業員の問題から、鉱山経営はオランダ人の協力なしには成立し得ず、結局、デビアス社はオッペンハイマーの傘下に入りました。
また、これより前に隣国ジンバブエ、ザンビアなどでもダイヤモンド鉱区が発見され、ローズはそこにも遠征しており、絶頂の時代であったことはよく伝え聞くことです。
アフリカーナーとイギリス人は、アパルトヘイト成立以前まで対立が続いたのですが、南アフリカ政府が統治上、この区別があることによって不備な箇所が相当見つかるために、アパルトヘイト下では白人というカテゴリーになっています。
ダイヤモンドの価格決定
上記のように、デビアス社はイギリスの植民地政策全盛期とともに発展した会社です。
つい最近までは、世界のダイヤモンドの供給・販売はほぼデビアス社の独占状態でしたが、近年、アフリカ各地でダイヤモンド鉱区が多数発見されており、その地位は低下しています。
しかし、20世紀から世界の生産・販売を独占してきたデビアス社の影響をいまだに受けているので、デビアス社の価格決定が世界のダイヤモンド価格の基準となっていることは否めません。
金のように公設のマーケットがある場合は、そこで値段が決定しますが、デビアス社は独占という仮定で価格を決定していますので、それがダイヤモンドの標準価格になります。
デビアス社は世界のダイヤモンドの生産販売を長年独占してきましたので、その価格が値崩れしないように細心の注意を払っています。
世界の各地にデビアスの直接経営・販売代理店が存在し、そこに調査員を常駐させることで価格を決定するのです。
デビアス社のダイヤモンド供給手法
ダイヤモンドは贅沢品扱いですので、宝飾会社への供給には細心の注意を払います。
例えば、世界景気が悪い場合には価格を低くすることを考えがちですが、デビアス社の場合は供給を絞って価格を維持しようとします。
反対に景気が良い場合は、供給を過剰にしますが、値崩れを起こさないように販売を行います。
つまり、ダイヤモンドの価値が大きく上下動しないように、そして自分たちの販売しているダイヤモンドの価値を毀損させないように、細心の注意を払っているのです。
会社の経営が左前だからといって、市場にダイヤモンドを一気に放出するようなことはなく、供給を絞り、価格を据え置き、会社の危機に対応しています。
このようにしてダイヤモンドの価格を高値安定にしている側面があるのです。
ダイヤモンドと金
こういった意味では、ダイヤモンドも世界共通の価値を持ち、実のところは石ころなので腐ることもないので、ある意味、最適な投資商品とも言えます。
ダイヤモンド投資は、世界が安定的に成長することを前提に考えれば、最適だと言えるでしょう。
一方で金は、世界が不安定になることを前提にした投資商品であり、存在理由がダイヤモンドとは真逆にあるとも言えます。
ですから、安定成長も不安定になることも、今後も可能性はあるのですから、両方の投資を考えればよいのではないでしょうか?
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