世界進出する中国の事情と金

移民の元祖は中国?

中国人と言うと、皆さんどのようなイメージでしょうか?

職場に中国人がいるのは今では見慣れた光景であり、それほど違和感を覚える方も少ないと思います。

今回は、金生産世界一の中国についてお話しをしていきたいと思います。

19世紀中盤の中国人移民を描いた絵

移民がヨーロッパやアメリカで大きな問題になっていますが、中国人は、実は有史以来、いろいろな大陸に出稼ぎに行っています。

東南アジアの華僑は有名ですが、そのほか南米やアフリカにも昔から中国人はたくさんいるのです。

彼らは、母国を出て移住しているのですから、移民の歴史に関しては世界最古とも言えます。

アメリカのトランプさんが移民を「どうの、こうの」と言っていますので、歴史上の移民大国はアメリカだ、と思っている方も多いでしょう。

しかし、それは近代、アメリカが奴隷を解放し、積極的に移民を受け入れるようになってからの話です。

どの国の歴史の教科書にも、必ず中国人が存在することからも、その歴史の古さはわかります。

つまり、本当の移民大国はアメリカではなく中国だ、と認識すべきです。

中国人が受け入れられる理由

マレーシアの首都・クアラルンプールの中華街、ペタリンストリート

東南アジアで発展した国にマレーシアがあります。

この国は、土着がマレー人ですが、イギリスの植民地になって優遇されたのは中国人でした。

理由は簡単で、為政者から見れば、中国人のほうが良く働くからです。

考えてもみれば、母国からお金を稼ぐために出てくるのですから、文句を言わずに働くのは当たり前です。

マレーシアでは、中国系のほうがお金を持っているのが一般的で、マレー人はそれほどでもない、というのが共通認識になります。

そこで、人種差別を行うような政策をしているので批判の対象になっています。

これは、自国人の利益を奪う中国人というネガティブな発想に基づくものです。

中国からの移民を受け入れる国では、中国人は賃金が安い上に懸命に働くのですから、積極的に採用するのは当然です。

要するに、中国人はよく働くというのが世界共通の認識になります。

ところが中高年世代以上になると、なんとなくそんなイメージがない、というのが本当のところでしょう。

ともかく、中国人と商売の交渉をすると手ごわいネゴシエイターという印象を皆さん持たれるでしょうが、お金に対する執着がものすごいことは確かです。

だから中国は奇跡の成長ができた

よく働く中国人労働者

20世紀の奇跡と言われた日本ですが、21世紀の奇跡は間違いなく中国でしょう。

両国に共通するのは「よく働く」ことです。

筆者自身は、昔の日本人はよく働いたと思いますが、現在の日本人にはそういうイメージはありません。

むしろ日本人は【働かなくなったな】という感想です。
※ワーク・ライフ・バランスなどもありますが。

中国人も、もっと豊かになれば働かなくなるのだろうな、と思います。

ただ言えることは、勤勉で真面目に一生懸命やれば大抵の人は大きなお金を持つことができる、という歴史上の教訓です。

シンガポールやマレーシアも21世紀の奇跡に数えてもいいのでしょうが、やはり人口規模と勤勉さ懸命さで日本や中国には劣るのかもしれません。

何れにせよ、中国の成長は中高年層にとっては意外かもしれませんが、勤勉と懸命さによって引き起こされたことは確かなようです。

半分豊かになった中国

中国発展の象徴で巨大消費都市である上海

このように勤勉、懸命さによって得られた中国の奇跡ですが、なんといっても、世界人口70億人のうち13億人を抱える巨大国家です。

つまり、この13億人が日本人並みの生活の豊かさを抱えた場合、世界のエネルギーや食糧事情はどうなるのか、ということです。

2008年に起こったリーマンショック以前、「中国の資源爆食によって世界の資源が枯渇する」と言われていたのを覚えている方は多いでしょう。

世界中の食料やエネルギーを中国がすべて消費をしてしまうのではないか? という恐怖です。

その結果、リーマンショック前に石油価格は1バレル120ドルを超え、金も最高値を更新しました。

特に商品市況に大きな影響を中国から与えられたのです。

中国式資源調達

エネルギーの確保はアフリカから行った

そういった状況に、中国政府は何もしないわけではありません。

世界の華人ネットワークを駆使して、南米やアフリカからも資源の調達を行ったのです。

特にアフリカは、まだ欧米が中東と違い、石油利権を確保していない地域が至るところにありましたので、その権益の確保に走りました。

そして、欧米に対抗するためにお隣のインドとも協力し、石油利権を確保したのです。

エネルギーの確保は、アフリカから行ったのですが、食料は南米から行いました。

アフリカも広大な土地があるため農業先進国と思われている方も多いのですが、実情は違います。

アフリカの農業は個人経営が主で、アメリカのような大規模な企業による耕作が行われているわけではありません。

しかし、南米は実質アメリカの支配下にありますので、アメリカの穀物メジャーや日本の商社などは、大規模なアメリカにならうような農業を新規の農地開拓によって、膨大な収量を達成したのです。

中国は南米にも進出して、そこから食料の確保を目指しました。

輸送航路の確保と領土問題

東シナ海の尖閣諸島、南シナ海の南沙諸島は中国の重要な物資輸送航路に位置する

中国への石油や食料の航路を考えてください。

アフリカからタンカーで石油を運ぶ場合、あるいはブラジルから食料や畜産物を運ぶ場合、必ず船舶が通るのは、南沙諸島や尖閣諸島です。

南沙や尖閣に不当な要求を突きつけ、軍事進攻や占領を行おうとしている意図がなんとなく見えてきます。

要するに、何十年、何百年もかけて、重要な航路をきちんと確保したいということが、中国の意図です。

特に、中国経済が調整局面に入ったときに必ずと言っていいほど、尖閣や南沙に軍事行動を起こします。

尖閣、南沙諸島問題の背景にあること(重要)

2012年に中国各地で勃発した反日デモ。その矛先が自身の政府に向いたとしたら…!?

尖閣に中国が介入し始めたのは2010年ごろです。

リーマンショックの影響を中国も受けましたが、欧米に比べると非常に軽微でした。

しかし、その後、2015年にチャイナショックが起こったように、そのころから中国経済が不安定であったことは確かです。

もし石油や食料などが確保できない場合、中国共産党に支配されている人民は、もれなく反政府デモや抗議活動を行います。

中国でこういった行動が頻発するのは、人民の生活が苦しくなったときです。

その結果、共産党政府が倒閣された場合、中国はどうなるのか? という問題が尖閣、南沙の端緒と考えると、すべての点で辻褄が合ってきます。

人民が食えなくなった場合に大きな暴動が起こる可能性が高く、石油や食料の確保を行うことによってそのコントロールができると考えれば、一連の起こっていることを理解できるでしょう。

逆に尖閣や南沙は、中国のコントロール外にあり、今すぐ航行不能になる可能性は低いが、将来は何が起こっても不思議ではない、と考えるのが中国共産党です。

現に中国経済の国内不振が伝えられると同時に、尖閣の日本の領海内に中国軍事船が侵入したという報道が流れます。

現在の中国の融資によって、債務が返済不能になると中国に召喚されるという報道の地域を見れば一目瞭然ですが、アフリカや南米からの航路に沿った地域です。

要は、中国は国内をコントロールしているだけの話です。

歴史は繰り返す

発展を続けるタイの首都、バンコク

かつて東南アジア通貨危機が起こったときには、タイを筆頭にバブル経済に沸いていたものです。

リーマンショックという惨事によって、世界の景気は下押しをして、現在でもその後始末に先進国を筆頭に追われています。

意外に思うかもしれませんが、日本でも1990年代に起こったバブル崩壊の後始末が、銀行を中心に2010年代まで続いていたことを考えると、10年やそこらでその後始末は終わりません。

タイも最貧国から、豊かな国へと変貌して、日本や中国などの直接投資によって大きな発展を遂げました。

では東南アジア通貨危機を境に、食料や石油の消費が低下したのかと言えば、全く減っていません。

悪くなったのは企業業績と政府債務だけであって、民間の食料や石油の消費は減るどころか、むしろ増えていきました。

中国の場合も、リーマンショックや2015年のチャイナ・ショックによって食料や、石油の需要が減ったのかと言えば、減っていません。

リーマンショックの前に叫ばれていた、中国の爆食が世界の資源を食べつくすというのは全く変わっていなく、むしろリーマンショックなどの不景気によって若干、世界のエネルギーや食糧需給の需要部分が減ったから注目されなくなっただけの話です。

つまり、中国の爆食が世界の資源は食べつくす状態は現在も続いており、危機は去っていません。

東南アジア通貨危機の際、タイの原油、食料需要が減らなかったのと同様、中国の食糧、石油需要は拡大傾向のままです。

歴史はまさしく繰り返しています。

需給はどうなのか?

遺伝子組み換えにより食物収穫量は飛躍的に向上した

需要は拡大しているのはわかったと思いますが、供給面についても語らなければ、公平ではありませんので、供給面も少しだけ話をしておきましょう。

例えば、農業の場合、日本でもバイオテクノロジーブームがあったように、品種改良が進んでいます。

卑近な例で言えば、遺伝子組み換え作物です。

今まで畑で1しか取れなかったものが、現在では2.5くらい取れるようになりました。

つまり、リーマンショック前から耕作面積と農業就業人口は極端に減っていますが、逆に畑から得られる作物は2.5倍程度になっているので、収量は飛躍的に増えているのです。

石油、エネルギーに関してはアメリカのシェールガスに代表されるように、新たな油田が21世紀に入って多く発見されています。

つまり、農業同様、需要も増えていますが、供給も爆発的に増加しているのです。

原油価格がこのように供給増になっても、最近では少しサウジアラビア問題で下がっているものの、20世紀と比べると5倍の価格以上になっており、需要が非常に多いのはよくわかります。

ここでの問題

西安市に立つ始皇帝の像。戦国の世を統一した秦以来現在に至るまで、中国ではいくつもの王朝が滅びてきた

中国共産党が、人民の暴動やデモなどによって、いつ倒されるかわからない状態に危機を抱いているのは理解ができたと思います。

つまり、共産党がいつ倒閣されるかは、人民が食えるか、喰えないかであって、万が一、人民の暴動によって倒されることになれば、その政府が発行する人民元はどうなるのか? という問題があります。

だから中国は、金の保有を懸命に増やしていると以前お話ししました。

加えて、中国で金の人気が高いのは、歴史上、何度も政権が変わり、そのたびに通貨の価値が棄損してきたのですから、人民は人民元を信用していない、という金の定番の説明です。

その結果、中国では金の人気が非常にあります。

金と人民元の関係

金は人民元に裏付けを与え信用不安を解消する

お金によって人々は生活ができるかできないかの判断をするのですから、人民元が金によって裏付けされていれば、少なくとも人民元が紙切れになる不安は解消できるでしょう。

実際に、中国共産党が倒閣される可能性は現実的ではありませんが、データを見る限り、中国の資源の爆食は現在でも続いています。

その供給が途絶えることが、中国共産党の最大の不安であることはおわかりになるでしょう。

その万が一のリスク対策を中国共産党が現在、積極的に行っているのですから、それが人民に影響しないわけがありません。

中国での金投資人気は続く、そして共産党は、人民元の裏付け保証のために金の保有を増やし、生産するでしょう。

そういう状態が何年も続けば、金の価格はどうなるのか、言うまでもありません。


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