パラジウム価格上昇の最大の問題
金の価格がじわじわと上昇していますが、パラジウムの価格も去年から急騰しています。
今回は、この問題についてお話しをしていきます。
パラジウム価格上昇の最大の問題は、2018年4月からドル高傾向が続いているのにもかかわらず、金もパラジウムも価格が上昇していることです。
金に関しては8月まで価格が軟調でしたので、ドル高との相関と言えますが、9月以降はドル高を無視して上昇しています。
これは原油にも言え、ドル高、需給がルーズでも価格が上昇し、サウジアラビアのトルコでの暗殺で需給が緩和したことによって下落しています。
つまり、今まで資源価格はドルの上下動で上下していたのですが、需給によって動くことがだんだんと確認されてきました。
パラジウムは需給で動く代表格ですが、金や原油なども需給で動いていることは注目に値します。
例えば、金などは今後、各国の中央銀行が買い付けを行うことによって需給がタイト化し、その結果、大衆人気がつけばパラジウムのようになる可能性があるということです。
金とパラジウムの価格について
パラジウム価格高騰の原因は、やはり需給です。
以下のロイターの記事に詳細が掲載されています。
アングル:急騰するパラジウム、16年ぶりの「金と等価」に接近 | ロイター – https://goo.gl/Zfz2Go
また、日々の価格は、東京商品取引所のウェブで確認できます。
相場表(個別商品) | 東京商品取引所 – https://goo.gl/URD2dp
金にはいろいろな価格表がありますが、ゴールドスポットで見ればよいでしょう。
パラジウムにはいろいろ値段がありますが、一番手前が現在価格です。
この値段表を見ると11月22日現在、引け段階では金がパラジウムより高く、その差はグラム当たり200円程度しか違いません。
今後は、パラジウムの価格が金価格を上回ってくるでしょう。
パラジウム価格が金価格を上回る要因
パラジウムの価格が金の価格を上回る原因は、上記のロイターの記事で説明されていますので、そちらをご覧ください。
ただ一つ言えることは、パラジウムは昨今の環境問題に密接に関係しており、話題の商品であるということです。
もっと言うならば、パラジウムの価格が上昇しても、私たちの生活に関係がないと考えるのは大きな誤りになります。
日本では1970年代にイタイイタイ病や光化学スモッグなどの公害問題が発生し、現在は収束しているように見えます。
しかし、中国や東南アジアでは今が最盛期で、空気の汚染は喫緊の課題です。
川崎のぜん息は光化学スモッグが原因と言われ、工場からの排気が問題でした。
ただし、原因はそれだけではなく、自動車の排ガスもその一つです。
日本では、有害なガスをまき散らす自動車に有害物質であるCO2、二酸化硫黄を排出しないようにパラジウムを触媒としてマフラーに取り付けました。
また、有害ガスを発生させるガソリンも、一般的には「改質ガソリン」という無鉛ガソリンをJISの標準規格にすることによって、公害問題を解決させたのです。
これらの動きはアメリカやヨーロッパなどにも波及し、一応、公害問題は先進国では終息しました。
中国や東南アジアの公害とパラジウム
21世紀に入ってから、今度は中国を筆頭とする新興国で自動車の排気ガスによる公害が噴出しています。
しかし、自動車のマフラーに二酸化硫黄除去の触媒としてパラジウムを取りつける技術も、ガソリンから鉛や硫黄を取り除く精製所を建設する技術も、今の中国や東南アジアにはありません。
またそのようなリテラシーも、まだ低かったのも要因の一つです。
そこで比較的容易であるマフラーにパラジウム触媒を取り付けることが、中国や東南アジアで普及し始め、これがパラジウムの需給をタイト化させ、値段を高騰させています。
これを聞いて、このパラジウム問題がすぐに解決すると思いますか?
答えは明快で、早くても1年以上経過しないと解決はしないでしょう。
言うなれば、まだパラジウムを買っても十分利益が出る可能性が高いのです。
問題の解決策
人類は過去に幾多の危機を経験し、それを回避したことによって今も存在しています。
その典型は、1970年代のオイルショックです。
現在の若者でも聞いたことがあると思いますが、トイレットペーパーがなくなるとうわさされた結果、日本中のスーパーからトイレットペーパーが消えました。
これは、世界の石油がなくなるという恐怖感からきたものです。
当時、石油は中東産油国の減産によって本当になくなるのではないか、と危惧されました。
しかし、あれから50年近く経過した現在、石油は並々と生産され、私たちの生活を豊かにしてくれています。
この経験から言えば、人類は危機を迎えたとき、さまざまな方法で生き残る方法を探し出し、克服するのです。
石油の場合、数多くの油田が開発され、多くの供給を確保することができました。
つまり危機に陥れば陥るほど人間は、新たな商品開発や技術、代替品の発見に努めるわけで、その危機は長くは続かないのが本当のところです。
ノストラダムスに代表されるように、世界滅亡論を喧伝する方がいますが、その人たちはこういった歴史を知らないだけです。
ですから、パラジウムの価格高騰によって、空気が有害ガスで汚染され、人類が生きていけなくなるというのは単なるたわごとです。
パラジウム騒動はいつまで続く?
現在のパラジウムの需給状況は危機的であり、今後そういった危機をあおるメディアが出てこないとも限りません。
ただし、そういった報道が出るころには、パラジウムの代替品ができあがっていることでしょう。
そもそも、パラジウムが排気ガスの有毒性を除外する優秀な金属であることでさえ、一般に認知されていません。
つまり、経験上この問題が解決するのは、まだまだ先だと言えます。
メディアが排気ガスによって人間のほとんどが健康を害するという報道がなされたころ、価格が大天井をつけると思ったほうがいいでしょう。
経験則から言えば、パラジウム騒動はまだ序盤であり、今から買ってももうかるだろうというのが個人的な見解です。
もっと言えば、金の価格の倍以上にならなければ、この問題は収束しないと思います。
公害と中国の電気事情
こういう問題によって、中国は2030年までに排気ガスの出ない電気自動車化を進めると政策にうたっています。
しかし、数年前まで電力需要が賄えないほどの電力不足に悩んでいた国が、電気自動車の需要を賄えるほどの電力を供給できるかと言えば、非常に疑問です。
そうとでも言わないと、国家として環境問題対策に本気である、と世界にアピールできない側面もあると考えておけばよいでしょう。
ボルボはノルウェーのメーカーではなく現在は中国資本なので、国策にならって全自動車をEV化すると言っています。
参考までに、大量電力を消費するビットコインは中国東北部の電力需要がない地域でマイニングされていたので電気代が割安だっただけの話です。
現在、中国国内でのビットコインのマイニングは禁止されています。
この事例を金で考えてく必要性もあるかも?
現在、金価格は中央銀行の買いとETFの旺盛な需要によって支えられています。
世界が借金漬けであることが起因です。
そのほかの問題としては、世界の景気がドルによって左右されていることが挙げられます。
今年起こったトルコやアルゼンチン、ブラジルなどの経済危機は、ドルが高すぎることが原因です。
特にトルコの場合、経済は順調なのに単なるドル高によって経済崩壊の危機に陥ってしまいました。
ドルの上下動で経済が崩壊しないようにドルリンクをやめるか、過剰なドルリンクをやめるという選択肢しか残らないと考えるのが自然です。
現状、旺盛に買い付ける中国、ロシア、インド、メキシコ、トルコなどは、ドルの浮沈によって過去に経済危機を迎えた国が過半です。
この狙いは言うまでもなく、ドルの影響を排除するのに有効なのは金だとわかっているからです。
その上に、金価格の上昇によって大衆人気が強くなった場合、金にもパラジウムと同じことが起こる可能性があります。
この解決策を考えた場合、新技術や代替品ではなく新しい政策ですが、その萌芽があるかと言えば、考えつかないというのが現状です。
パラジウムを見て、金の可能性に賭ける必要性もありなのではないか、という発想も必要でしょう。
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