最近の交渉の経緯
12月11日にイギリス議会下院で、EUが承認したブレグジット案を採決します。
EU委員会はイギリス政府の提案を了承しましたが、議会下院で承認を得られるかどうかはかなりきわどい状況、と言うよりも現時点(日本時間12月9日)ではほぼ不可能な状態です。
今回は金とからめてこの解説をしていきます。
ブレグジット案とは?
欧州連合からのイギリス脱退、通称・俗称でブレグジット、つまりイギリスが欧州連合から脱退すること。
1. イギリス政府がEU委員会にブレグジット案を提出 イギリス政府のブレグジット承認閣議決定(11/16)
2. EU委員会は、イギリス政府案を満場一致で承認(11/26)
3. これを受けて、イギリス議会で承認案の審議(12/4~6) ☜現在ココ
4. 第二回審議再開(12/10、11)
5. 政府、EU委員会承認のブレグジット案の採決(12/11)
ブレグジットをきちんと体系的にまとめたものがありませんので、表にしました。
日本でこのような表を作成しているメディアは皆無に等しく、これを見れば皆さんもすっきりすると思います。
つまりこの記事を読めば、ある程度ブレグジットがわかります。
詳細に関しては間違いがあるかもしれませんが(上記の日程は突然変わることもあり得る)、上記の流れで工程は進んでいます。
皆さんもおわかりでしょうが、12月11日のイギリス下院での政府、EU委員会の「ブレグジット案」が承認されるかが一番の問題です。
1.の解説
メイ首相を中心に内閣がブレグジット案を取りまとめましたが、この内容に反発した閣僚4人が離反、辞任しています。
その閣僚の穴埋めに任命された兼任閣僚がその任命を拒否し、下野しました。
そして議会に内閣不信任案を提出したのです。
当初、この内閣不信任案は上程の規定人数に達したという報道もありましたが、結局、規定数まで達しなかったので上程できなかったようです。
このように、メイ首相は閣内での一致もできなかったのですが、ようやく11月16日にイギリス政府として国際社会に発表しました。
2.の解説
イギリス政府、内閣において、ブレグジット案が作成されたので、今度は相手側の代表であるEU委員会の審議を図りました。
この委員会では満場一致でこの案が可決され承認されています。
これを受けてアメリカのトランプ大統領は「EUにとって最高の合意内容のようだ」と語っていますが、一方でイギリスに対しては「米英貿易に懸念がある」という趣旨の発言をしました。
この発言から、イギリス国内での大きな反発があると見ることができますが、イギリスの産業、金融業界からは大方好意的な見方が出ています。
要するに、反対しているのは国会議員と庶民になると推測できます。
3.の解説
審議初日
離脱協定に対する法務長官の法的助言文書の全文公開を議会が求めたことに対して、メイ内閣は拒否。
法的助言文書とは、イギリス国内法と今回のブレグジット案に齟齬が生じていないかの助言を書いた文章を指します。
これに対して議会は、メイ政権に閣外協力していた民主統一党(DUP)の造反によって議会侮辱罪を可決。
さらに政府とEU委員会承認のブレグジット案が否決された場合、議会が修正案を提出することを可決。
審議2、3日目
政府は一転して法的助言文書の全文を公開。
その中にバックストップ問題へのリスクの顕在化が明文化されていることが野党に問題視され、紛糾。
4.5.の見通し
現状では政府、EU委員会承認の「ブレグジット案」は大差で否決される見通しであると現閣僚、メディアが報じています。
つまり12月11日の採決はほぼ間違いなく否決され、今後の道筋で、議会から修正案が提出され、またEU委員会の承認を受けなければいけないことになります。
一応タイムリミットは年内になっていますが、実質上クリスマスまでが本筋です。
この場合、僅差での否決なら修正は小幅で済む可能性が高いのですが、大差での否決になった場合、大幅な修正を迫られ、年内のブレグジット案の完成は程遠くなります。
焦点は、12月11日の議会での採決が大差で否決されるか僅差で否決されるかです。
以上がブレグジットの現状になります。
金価格が上昇気味な3つの理由
現在、大幅なドル高にもかかわらず、金価格が上昇気味なのには3つの理由が考えられます。
1. ブレグジットへの不透明感の台頭
2. 米中貿易戦争からの不透明感の台頭
3. 世界的な景気後退への懸念
まず、公的需要の旺盛さによって需給部分から金価格が上昇していることも考えられます。
1〜3の問題に関しては、困ったときのドル買いと金買いが同時期に発生していると推察されます。
また、金には金利が付かないことから、最近の世界的な金利の低下傾向も金買いの圧力になると考えることができます。
今後のブレグジットの展開を考える
ここからは個人的な意見を表明します。
まず、前項1〜3の材料に関してはメディアが作り上げた危機感であり、実際の政府首脳の危機感はそれほどではないと思います。
2016年の国民投票で、イギリス政府はブレグジット承認という大失態を演じており、再びその愚を犯し国家の信用を失うようなことがあってはならないというのが国会議員の職責であると認識していると思われるからです。
まだ波乱要因がありますが、最後はソフトブレグジットになるでしょう。
これを受けての金相場
米中貿易戦争では、貿易はアメリカのGDPの15%でしかなく、好調のアメリカ経済には大きな影響はなし。
反面、中国はGDPの6割が貿易で占められ、影響は甚大です。
世界経済の好調は現在、アメリカを中心にして起こっており、アメリカが好調でありさえすれば、大きな減速はないでしょう。
例年通り、冬期は経済活動が減速しているだけです。
今年の夏以降、トルコを中心に金利高、ドル高から新興国危機が発生しましたが、アメリカの金利が低下傾向にあるため、世界の金利も低下気味になっています。
つまり新興国、特にトルコ危機の最も懸念する金利高は徐々に解消してきており、中国は不景気になるかもしれませんが、トルコや東南アジアなどの新興国の台頭によって中国の不景気を解消する可能性のほうが高い。
以上の理由によって、現在の金価格が高いことは一時的な現象で、いったんドル高によって価格は下がるでしょうが、年明け以降にドル安が進行することによって再び上昇すると考えています。
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