なぜ、政府閉鎖は関係ないのか?
年末に来て株価や金融商品が暴落しています。
世間ではこの原因を「アメリカ政府閉鎖や貿易戦争によって経済が停滞したから」と解説しています。
私から見ればこれらの説明は間違いであり、原因は明らかです。
今回をこの解説をしてまいります。
まず、アメリカ政府の閉鎖は、予算上限の問題は前々からわかっていたことです。
しかもその影響は、政府機能に問題がないものから閉鎖されていきます。
よくテレビなどで、自由の女神像への入場が停止されると報道されますが、これが閉鎖されてもアメリカに甚大な影響を与えるわけではありません。
観光客にとっては深刻な問題になるという人が多いですが、普通のアメリカ人にとっては何の影響もありません。
主要な省庁をはじめ、政府関連業務でも落としてはいけないところは動いています。
また、役人が出勤してもその間は無給になる可能性が法的にはありますが、過去同様のケースで給料は支払われていますので、ほとんどの役人には影響がないでしょう。
ただし、早急にやらなくてもいい経済指標の発表などは遅れます。
具体的には失業保険申請者数などは、もうすでに今週発表予定のものが延期になることが発表されています。
米中貿易戦争も株価暴落には関係ない
貿易戦争にしても、12月に入ってキリスト教圏である欧米はお休みですので、進展はありません。
つまり何も材料がないのに、これがきっかけに急落することもありません。
経済状態が悪化したからという説明もありますが、そもそも米中の貿易が不振になるのは貿易戦争が勃発したときからわかっていることであり、今さらなぜそんなことを材料にするのかさっぱり理解できません。
そもそも暴落というのは、予測しない事態が起こったから「暴落」するのであって、予測の範疇で20%以上も急落しません。
2016年のアメリカ大統領選挙におけるトランプさんの当選だとか、イギリスのブレグジット賛成の国民投票は、世間の予測と真逆の結果が出たのでマーケットが大きく動いたのです。
本当の原因は何か
おそらく原因は、夏のムニューシン財務長官の発言です。
まず、この説明をする前にアメリカの財務長官の主な仕事について説明しておきます。
アメリカの財務長官は日本の財務大臣と同じで、国家予算の管理が一番の仕事です。
つまり日本もアメリカも巨額な財政赤字を抱えていますので、その借金の調達をしなければいけません。
本来なら私たちがお支払いする税金で賄えるように予算は組むものですが、ご存知のように国債を発行して資金を調達します。
その国債発行がメインの仕事になります。
この場合、アメリカは今年の年初から減税を行っていますので、予算が大幅に足りない状態です。
そこでムニューシンさんがトランプさんの減税を滞りなく行うために大量の国債を発行して資金を調達しました。
つまりトランプ減税は、ムニューシンさんがいなければ実行できない代物なのです。
ムニューシン財務長官はクビになる!?
今回の株価の急落によって、「ムニューシンさんがクビになるのではないか」といううわさが報道されましたが、そんなことはあり得ません。
なぜなら、トランプさんがアメリカ議会中間選挙で敗北していなかったら、個人の恒久減税を来年の年初から行っていたはずですが、選挙で敗北してしまったので議会の承認が得られる見込みは少ないので実行できません。
でも、トランプさんは大統領就任前にこれを公約にしており、実現可能な環境になれば実現するはずです。
そのときに実績のあるムニューシンさんに任せたほうが誰だって安心するでしょう。
いろいろな閣僚がクビになりましたが、公約を実現するためにはムニューシンさんをクビになどするわけがないのに、平気でそういうことを垂れ流すのです。
よほどのポカをやらない限りはムニューシンさんがクビになることはあり得ません。
ムニューシン長官の功績と金利
ムニューシンさんへの信頼がトランプさんにとっては非常に大きいものであり、投資家にとっても信頼感があります。
あの大幅な時限減税法案と言えども、大量の資金調達に成功したのです。
しかもその条件は、トランプさんがパウエルFRB議長に「金利を上げるな」と最近何度もツイートしたように、過去最大の財政赤字なのですから、金利が急騰する可能性もありました。
実際、金利が春先に急騰しましたが、赤字と比べればわずかな上昇だったのはムニューシンさんの功績になります。
今年の年初にこれだけの赤字が膨らむのであれば債券の金利が急騰しているはずなのに、10月に一時10年物国債で3%超になりましたが、現在は3%以下の水準ですから実績があるのです。
財政赤字が膨らみ、金利の急騰をにらんでファンドは大量に国債をショートしていたのですが、この結果を受けて国債の売りを手仕舞いしなければいけません。
しかもファンドはインフレになることを見込んでいたのですから、株も大量に買っていました。
それがアンワイド(手仕舞い)したので株価が急落し、債券価格が急騰、金利が急低下したわけです。
ファンドの株の手仕舞いへ…
「株価は年末には今以上に高くなっているだろう」というムニューシン発言によって、世界の投資家は「信頼厚いムニューシンさんが言うのであれば」と一斉にアメリカの株を買いましたが、10月に金利の急騰によって株価が下落したのです。
しかもその金利の急騰には原因がなく、意味が現在でもわかっていません。
私はファンドの手仕舞いだと思っていますが、果たしてどうでしょうか?
10月の株価急落から高値を取るような動きがない、そして年の瀬が迫り「ジングルベル」が聞こえるようになってから、ムニューシン発言は間違いだったと気付いたのです。
結果として、みんなで株を手仕舞いして急落したというのが今回の株価の急落の原因です。
もっともクリスマス前に急落して、クリスマス明けに急騰するのはいつものパターンになります。
その幅が大き過ぎただけだと個人的には思っています。
つまりムニューシンさんの発言を信用して裏切られた投資家が過半であり、その換金売りが収まれば、株価は元通りに、そしてドルもドル高に、金はあまり変わらないのだ、という結果を見て下がるということです。
しかし、金の投資家にとっては1月に押し目を形成すると言ったのですから、ようやく買い増しのチャンスが1月にくることがおわかりになるでしょう。
世界で波紋を呼んでいるムニューシン発言
夏のムニューシン発言を受けて株式の公開を決定したのがソフトバンクモバイルです。
12月に株価が高いのであれば、12月に株を公開しようとするのは当然の話になります。
なにせ日本の株式市場最大の公開募集になるのですから、できるだけ高い値段で公開したいと思うのが人情です。
ソフトバンクモバイルの社長は「想定価格よりも低いことは失敗ではない」と強弁していましたが、明らかに彼らの思惑とは違う初値となってしまいました。
このようにムニューシン発言は、世界各地に波紋を呼んでいます。
しかし、金価格にとっては絶好の押し目がこれから形成をされるという嬉しいことになると個人的には思います。
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