中東シリア問題と金

シリアの現状

年も押し迫った年末に、トルコ軍がシリアからの撤退を表明し、続いてアメリカ軍もISの掃討が一巡したとして軍隊の撤退を発表しました。

中東の問題については一回では説明できませんが、国際的にシリアが注目されていますので簡単な説明と金の関係をお話しします。

トルコやイラク、ヨルダン等と国境を接するシリア

シリアとは?

シリアという国は、「テレビのニュースではよく聞くが実際どういう国なのかわからない」という人がほとんどでしょう。

シリアは、イギリスの1970年代の撤退で誕生した中東に存在する国で、イスラエルやトルコなどと国境を接しています。

現在はアサド政権という独裁政権が政権を担っています。

アサドさんの出身部族は国内でマイナーな山岳民族で、そのマイナーな民族が政権を握っているのがシリア問題の根幹です。

アサドさんの宗教はイスラム教と言われていますが、厳密にはイスラム教ではないと一般的には言われています。

そのほかさまざまな宗教がありますが、ほとんどの国民はイスラム教シーア派の宗徒です。

この宗教対立が内戦を引き起こしていると一般的に言われています。

シリアとアメリカ、トルコの関係

シリアの紙幣に描かれたバッシャール・アル=アサド大統領

アメリカの場合、「独裁政権を許さない」という国是があり、シリアのアサド政権は独裁で、イスラエルの敵になる可能性があるので敵国なのです。

一方でトルコの場合は事情が複雑で、エルドアン大統領が今年の夏前から独裁大統領ということで国際的な批判を浴びましたが、シリアのアサド、サウジなどと比べればよほど民主的な政権です。

なぜなら、選挙で選ばれた指導者だからです。

中東ではイスラエル、トルコ、イラン、エジプトしか選挙制度がなく、なぜトルコが独裁と批判されるのか私には理解不能です。

もっとひどい独裁をやっている国、例えばサウジアラビアなどがあります。

トルコは国家創設以来共和国になり、トルコに居住している人は、それがクルド人であろうがトルコ人と規定しています。

トルコ国内にはイラン、イラクとの国境沿いにクルド人が居住しているほかに、シリア国境にクルド人が居住しています。

端的に言えば、この人たちは全員クルド人ではないのですが、国際社会では一括してクルド人としています。

トルコ政府は、イスラム教のスンニ派です。

そしてイラン、イラク国境に住むクルド人もほとんどがスンニ派になりますが、シリア国境に居住するクルド人はシーア派になります。

このシーア派を攻撃したいという思惑があり、トルコはシリアに出兵した経緯があります。

シリア撤退の実情

トルコ軍、アメリカ軍の撤兵はシリア問題の大きな転換点

今回トルコもシリア国境に潜伏しているISをほぼ掃討できたということが撤兵の理由になりますが、真意は違うと思います。

実はアメリカがシリア国境に居住するクルドに武器を供与し、アサド政権の打倒を目指したのですが、これだけ西側、東側の軍事大国がシリアを攻撃してもアサド政権は倒れないゆえにあきらめたのです。

シリア国境に住むクルドはアメリカの支援がなくなったので、トルコとまた内戦状態になるでしょう。

エルドアンがクルドを容赦なく攻撃するつもりでいることは、過去の経緯からも明らかです。

一方でアサド政権は一部の自民族だけを保護する政策を取り、そのほかの民族は弾圧、抑制しているのですが、東西両陣営がいくら打倒アサドを訴えたとしても倒れない、ということが今回の発表の一部です。

そしてシリアに大きく介入しているロシアが今後どう動くかが焦点になります。

ロシアの場合は、ロシア革命前後にロシア人が大量に移住していますので、その保護を理由に介入しています。

いずれにしろ今回のこのトルコ、アメリカの撤兵は、シリア問題の大きな転換点になることは間違いないというのが私の読みです。

中東のパワーバランス

インド以西のアフガニスタンを除く西アジアとアフリカ北東部の総称である中東

シリア問題を上記で簡単に解説したつもりですが、これでは収まりきらないくらい複雑になっており、今後、シリア情勢は大きく不安定になることが予想されます。

つまり中東情勢から、また金の価格が上昇する可能性を秘めている地域であり、このシリア情勢をきちんと把握することが大事です。

アメリカでも下院で民主党が過半数を握ったことから、議会の民主党、共和党ともにイスラエル擁護派が盛り上がっています。

その関係で最近、イスラエル情勢が動いているのです。

中でもアメリカの下院議長になると予測されるナンシー・ペロシがゴリゴリのイスラエル擁護派であり、対イラン制裁や攻撃に積極的だと言われています。

トランプが政権就後にイスラエルに大使館を移転させると表明したのは、このユダヤ支持者に報いるためであり、イスラエルと対立するイラン情勢が来年の主要テーマになることは間違いないでしょう。

アメリカ国内では、イラン制裁積極派が議会や政権で圧倒的多数を誇っており、来年はイラン情勢からも目が離せません。

このようにシリア、イランが年明け早々から動き出す上に、トルコでサウジの皇太子がジャーナリストを殺害した事件によって、おそらくサウジの王政や現国王の後継者問題も浮かび上がる可能性があります。

となると来年も中東はグチャグチャであり、これも金の価格を押し上げる要因となり得ます。

中東の盟主は?

ジャーナリストであるカショギ氏暗殺として、世界各国から疑惑の目が向けられているサウジアラビア皇太子のムハンマド・ビン・サルマーン

ここまで解説していくと、中東情勢はわかりにくいという人が過半になると思いますので、この中東でのパワーバランスを解説していけば、なんとなく問題の一端がおわかりになると思います。

中東の大国と言われているのはイラン、サウジアラビア、エジプト、トルコです。

このうちイラン(シーア派)は現在、経済制裁の真っただ中にあり国力を落としている最中です。

エジプトもアラブの春以来、というよりもそれ以前から国力を落としていますので、中東のリーダーと各国は認めていません。

サウジがアメリカと同盟を組んで中東の盟主と言われていましたが、10月のトルコ領事館でサウジ人ジャーナリストを皇太子が殺害(サウジは否定)したことをきっかけに、盟主の座をトルコに奪われたと言っても過言ではありません。

トルコは今年、エルドアンさんがクルド人の抑圧やアメリカとの関係悪化から国力を落としました。

上記の4ヵ国に中東の盟主と言われるような国が現在なく、非常な緊張状態にあるということです。

今後トルコが盟主になる?

アメリカとの関係が改善すればトルコが中東の盟主となる!?

中東では今までサウジが盟主と名乗っていましたが、皇太子の不祥事によって国際社会からつまはじきにされ、この皇太子が現国王の後継者となれる保証はないという状態で政治が不安定になる可能性があります。

そこでアメリカとの関係改善から、今後トルコが中東の盟主になることが予想されます。

ただし、トルコはエルドアンの前政権時代からEUの加盟を目指しており、ヨーロッパではは、ヨーロッパ大陸に属する国家という見方もあり、欧米と対立する中東にとっては中東なのか欧州なのか微妙な国というのも見方の一つになります。

いずれにせよ、中東の盟主がどこになるかわからない状態であり、今後、金にとっては支援材料になります。

中東の大国一覧

アラブ首長国連邦やイエメン、イスラエル、オマーン、カタールなど約15ヵ国が中東諸国とされる

中東の大国はイラン、トルコ、サウジ、エジプトというのが経済学者や歴史学者の一般的な見方です。

現在、イラン、サウジ、エジプトが脱落しているのはお話ししました。

残るはトルコですが、アメリカとの関係改善が今年は目立った年になりますが、数年前からロシアとの改善も際立っています。

そして今年は中国に借金の申し込みをしており、イランとはロシア保有のパイプラインを通してクルド自治区から原油の供給を受けています。

ここに登場した国に共通しているのは、近年、金の保有量を増やしていることです。

一般的にここ数年、金の保有を増やしている国は中国、ロシア、インド、トルコ、メキシコ、イランと言われています。

イランの場合は国家財政がかなり厳しい状態ですので、ここ数年保有を増やしていませんが、経済的に潤えばアメリカに対抗するためにまた保有を増やしてくるでしょう。

インドに関してはまた別で申し上げますが、イランともかなり関係が深く、やはり金の問題にはナイーブな関係となっています。

つまり、来年の金は中東を中心に動く可能性が非常に高いということです。

来年の金は中東を中心に動く!?

暗にドルを否定するような行動を取っているトルコのエルドアン大統領

具体的には、トルコのエルドアンは経済危機の最中に「今後は金を政策の中心に動く」と明言しており、いわば暗にドルを否定するような行動を取っています。

例えばアメリカと対立するイランを擁護し、アメリカが止めるのに中国と接近し、サウジの皇太子を謀議によって貶めました。

このカショギ事件で、アメリカとの国交を正常化させたエルドアンの政治的な手腕は本当に感心します。

こうやって説明していくと、トルコを中心に世界の金相場が動く可能性もありますが、明日がわからない中東情勢ですので、あくまでも憶測の範囲です。

いずれにせよ、金の動向でも中東のパワーバランスが来年も注目になるでしょう。

政治が不安定になれば、これらの国は金の保有をさらに増やしてくる可能性がありますので、余計に金の価格は下がらないと思っています。


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