インドノンバンク問題と金

インドという国

近年経済成長が著しく注目を浴びているインドですが、反面、経済成長の歪みも明るみに出てきました。

今回は金の投資国としても有名なインドの歴史と概略、そして過去のノンバンク問題をお話していきます。

インドで最も有名な建造物と言えるタージマハール

インドと言えば、小中学校の義務教育で学習する非暴力不服従運動で有名なガンジーを思い浮かべる方も多いと思います。

このガンジーと並んで学習するのがカースト制度という身分制度です。

日本人はこのガンジーやカースト制度に対する認識が非常に甘く、今回はこの辺を中心に解説してまいります。

身分制度とガンジー

イギリス国会議事堂に立つガンジーの像

ガンジーの研究家にとって、ガンジーがインド本国に戻る前に南アフリカで反アパルトヘイト運動をやっていたことは有名ですが、知らない人にとっては意外な事実でしょう。

このようにガンジーは人間を差別することに強い怒りを覚え、それを非暴力不服従運動に昇華させていきました。

ですから、義務教育の上では非常に優秀な人物という印象が持たれ、実際インド国内でも最も有名なインド人ですが、実は功罪(こうざい)があるのです。

それはカースト制度に起因し、ガンジーはこのヒンズー教による身分制度を破壊するどころか、容認した非暴力不服従運動であったことを教える人はほとんどいません。

ガンジーの功罪

司祭階級であるブラーミンを頂点に、武士階級であるクシャトリヤ、市民階級であるヴァイシャ、労働階級であるシュードラと続くカースト制度。ほかに制度外の人々が存在する。

何があったかを簡単に解説すると、ヒンズー教から発生するカースト制度には、非人間として扱われる人々がおり、その人たちの人権をガンジーが認めなかったという点が現代インドの発展の阻害要因ともなっているのです。

この思想をブラーミン思想と言い、ブラーミンとは支配者層を指します。

圧政に苦しむ民をガンジーは非暴力不服従運動に昇華させるのですが、最下層の非人間と認定される人の人権をかたくなに認めませんでした。

つまり最も立場の弱い人を置き去りにして、非暴力不服従運動を行ったのです。

実は人口統計がないインド

2030年までに中国を抜き世界1位になると言われるインドの人口

インドの人口は、一般的には13億人と中国に次ぐ世界2位とされていますが、この数字はあくまでも推測の話です。

なぜなら、インド政府は最下層とされる人たちの人数を正確に把握していないからです。

推定では、全人口の20%程度がこの最下層に属すると言われています。

つまり人口13億人とすれば、2.6億人が人間として扱われていないのです。

こんなものの統計をインド政府が取るわけもなく、1948年以来、人口統計を実施していなかったと思います。

当時はイギリスの植民地なのでイギリスが実施した人口統計調査であり、インドに主権が戻ってからは人口統計を行っていないのです。

そして、最低カーストが正確に何人いるかを公表すれば、国際社会から大きな非難を浴びることは必定だからです。

よくもまぁこんな時代遅れなことをやって、これから有望な国として「有力投資先」と大きな声で世の評論家たちは言えるよね、と言わざるを得ません。

なぜインドで仏教徒やイスラム教徒が増えるのか

ブッダ終焉の地であるビハール州ブッダガヤのマハボディ寺院の近くに立つ大仏

カースト制度から逃れるためには、ヒンズー教徒を辞めるほかありません。

ヒンズー教徒を離れるためにはかなりの困難が伴うことも確かですが、現在、インドでは仏教やイスラム教が多く拡大しているのはそのためでもあります。

仏教やイスラム教に改宗することによって、カースト制度から逃れることができるからです。

仏教の本場インドでは、日本からわざわざ僧侶が出向き、ようやく仏教が盛んになってきている状態です。

ミャンマーとインドの暗部

ミャンマーでの迫害から逃れてきた1000人以上のロヒンギャ族が流入したバングラディシュのコックス・バザール

お隣ミャンマーのアウンサンスーチーは、ガンジーの盟友であるネルー家族と親交を持つ敬虔な上部仏教徒です。

博愛主義であるスーチーも同じように、最近ロヒンギャ難民に代表される少数民族の軽視を行っていることも無視できないことになります。

このように歴史の良い面だけに焦点を当てるだけではなく、悪い面も見ていかなくては、その国の本質は決してつかむことはできません。

ガンジーは日本ではヒーローのような扱いですが、インドの最低カーストの人たちには憎き人にもなります。

ただし、この人たちは学校にも行けない、そして殺されても文句を言えないような人たちですので、その声が全く上がってこないだけの話なのです。

スーチーにしても同様ですが、ガンジーの功績は偉大だと認めた上で、一番弱い人の立場で治世をしてほしかったとは思います。

インド経済

首都ニューデリー近郊のオフィス街であるグルガオン

インド経済は7割ほどがヒンズー教徒ですので、この経済発展は、ヒンズー教の上位カーストによって形成されているのは想像に難くありません。

つまり実際の人口は13億人ですが、その7割は9.1億人、そして上位カーストはその5%、つまり4500万人程度で達成されたものなのです。

人口世界1位の中国が長年にわたり10%の成長率を維持できたのは、共産主義の結果と言えます。

共産主義には宗教もありませんし、また人間は皆平等です。

人口に見合った成長が行われたので、あのような成長になったのです。

ところがインドの場合は実質たった5000万人にも満たない人口で成長を遂げているのですから、潜在能力は非常に素晴らしいものと言えます。

しかし、人権を蹂躙しながらの成長であれば、現在の南アフリカのような状態になっていくという想定なく、インドに投資するのは冷静ではありません。

新興国・南アの悲惨な現状

南アフリカ、助けを求める人

現在の南アフリカは失業率は世界最悪、ジニ係数という治安の悪さも世界最悪です。

男性にはわからないでしょうが、間違いなく女性はこのような国では生活したくないと思うのが普通です。

女性がいなければ、子供もいなくなります。

では、なぜ南アは成長したのかと言えば、アフリカ最大の資本主義国家で、アフリカ大陸で稼がれるお金はすべて南アに流入してきたからです。

しかし、最近は中央アフリカや東アフリカなどでも原油が発見され、近年はケニアにも経済成長が抜かれている始末です。

すなわち、アフリカ大陸のお金が南アに流れてこないような状況だから苦境に立たされているわけです。

インドの未来

インドを中心にネパールやバングラディシュ、パキスタン、スリランカなどで構成される南アジア

インドの場合は、インド亜大陸で絶対的な大国ではありません。

もちろん、南アジアの中では盟主になりますが、東南アジアや東アジアを含めてみると、日本や中国はもちろん、東南アジアのシンガポールやタイにも抜かれているのが実情です。

インドがここから大きく発展するためには、やはりカーストやヒンズー教の撤廃がマストになります。

かと言って近年のインドの成長は、国際経済の中では無視できない存在です。

しかもそれが推測で5000万人程度の人口で達成された点に、有能さが秘められています。

インドが直面する問題

インドの成長バブルも弾けるか?

現在のインドは、高度経済成長が終了し安定期に移行する状態です。

日本でもバブル崩壊後から経済の成長安定期に入っており、中国でも2015年のチャイナショックは実はノンバンク問題になります。

日本のノンバンク問題は、一般的に住専問題と言われ、なかなかノンバンク問題にはなり得ないのですが、

住専問題=ノンバンク問題

という認識で問題ありません。

では、このインドのノンバンク問題はなぜ起こるのかに関してお話をします。

ノンバンク問題はなぜ起こるのか

金融引き締めで銀行からお金を借りられなくなった企業はノンバンクへ…

爆発的な経済成長をすると、為政者(いせいしゃ)は必ず「成長が急すぎる」と言って金利を上昇させます。

これを金融引き締めと言い、今まで融資を申請すればほぼ通ったところが、国が銀行に対して「無闇にお金を貸すな」と指導することになりますので、実行件数が極端に減ります。

結果、銀行に融資を断られた実業家や投資家は、銀行ではないノンバンクに融資を行うわけです。

そもそも優良な顧客は銀行に奪われ、やってくるのは問題のある融資希望者ですので、その結果は弊社が説明するまでもなく、ほとんどの融資が焦げつくことになります。

その不良債権問題が去年の10月くらいから問題視され、12月に爆発したのが現在のインドの状況です。

日本も中国も成長が一服したころにノンバンク問題が起こり、経済が停滞するのは、いくら対策しても防ぎきれないものだという認識で問題ありません。

インドで今後、起こること

中国に続きインドの経済停滞で金価格はどこまで上がるか

ノンバンク問題、つまり不良債権問題が起これば、銀行やノンバンクの融資は実行される件数が極端に少なくなりますので、結果的に国の成長が鈍化します。

例えば、日本の住専問題が発覚した90年代半ば以降、金の価格は暴騰しました。

中国の場合は2015年に発覚し、ドル高によって金の価格は下がっていましたが、その後、再び現在まで高値を伺うような姿勢になっています。

インドのノンバンク問題は中国のプロセスの中から発生し、その不良債権処理には間違いなく金融問題が噴出するでしょう。

参考までに、日本の金融問題発生前には1000円以下だった金の価格が、リーマンショック前までに5000円以上になりました。

中国に端を発した金価格は、3000円台からいくらになるのでしょうか?

弊社としては、今後の金価格の変動が気になるところです。


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