金とドルの関係

ドル実効為替レートとドル建て金相場の関係

今まで何度も説明してきましたが、今回は、ドルが下落すれば金が上昇する、その反対も真なりについて例外の事例を示していきたいと思います。

参照元:TRADING ECONOMICS
オレンジ色の線は金ドル建て価格、青い色の線はドル実効為替レート。グラフは2018年7月2日から2019年1月14日までのもの。

青い線とオレンジの線が反相関の関係にあることは、何度も説明したかと思います。

特に去年の12月に入ってからは、青い線のドルが下落したことによって、オレンジの線の金が上昇していることがわかります。

このグラフではわかりにくいので、青い線(右軸)を反転させてみましょう。

こうやって見ると、青い線のドルが下がると金の価格が上昇していることがわかります。

去年10月くらいから、金とドルの関係が非相関に変わったことがおわかりになるでしょう。

明らかに、金とドルの関係に連動性がなくなっています。

金価格とドル価格、非相関の原因

金の価格決定要因は、ドルの上下動だけではありません。

金利や需給なども、ドルの上下動ほどではないにしろ影響します。

では、去年の10月に何が起こったのかを検証してみましょう。

① 株価が世界的な上昇を起こした
② 長短金利のフラット化などによって長期金利が上昇した
③ ロシア、トルコ、中国、イラン、インドなどの新興国が一斉に金を買っている

①については、アメリカの株価が10月の上旬に史上最高値をつけて翌営業日から反落し、年末から年明けまで下落が続いたことをお覚えている方は多いでしょう。

これは、株価の下落によってリスク回避の目的から一斉に投資家が金を買ったことから、金価格が上昇したことが理由として推測されます。

ですから、ドルは高いままなのに金の価格が上昇するという、今までドルと反相関していた金相場が順相関になってしまった原因の一つでしょう。

金利と金価格

②の長期金利上昇に関しては、金には金利がつかないのでマイナス材料です。

実際に去年10月からの金利は急騰しています。

参照元:TRADING ECONOMICS

上記はアメリカの10年債の利回りです。

投資家は、株式の配当利回りと債券の利回りを比較・検討しています。

今の状態で金利が何%、株式の配当利回りが何%、どちらに投資したほうがお得かを考えているのです。

去年10月の場合には、株式の投資よりも債券の利回り投資のほうが有利に見えたので、投資家は株式を売却して債券を買うから株価が急落したのです。

しかし、金の場合は株式よりも儲かるものではありません。

なぜなら、金には利子がつかないからです。

去年の10月に金が買われたのは株式急落の側面もありますが、ほかの材料もあったであろうと思われます。

そして、金を中心とした経済圏を作ろうとした③の材料が出てくるのです。

トルコなどによる金買い付けと金価格

下記のグラフは、去年さんざんに保有量を減らしたトルコの準備金です。

参照元:TRADING ECONOMICS

去年8〜9月のトルコ騒動の際、トルコの準備金は100トン台まで急減しましたが、騒動が一服すると一気に100トン以上買い付けました。

結果はグラフの通りです。

トルコ一国で100トン以上の金を買い付けすれば、金の価格が上昇するのは当然です。

そのほかに中国、ロシア、インド、メキシコなども買い付けを増やしていますので、金価格が上昇するのは当然の帰結になります。

今後の展開

① ドルが現在、急騰している
② 金利は急騰から急落になっている
③ 新興国は中国を筆頭にこれから旧正月、ほかの国はアメリカの政府閉鎖に代表されるようにまだ予算が執行されていない

などの材料があります。

①は現在、ドルが米中摩擦が解消するかもしれないことを理由に急騰していますので、マイナスの材料です。

②の金利は、金利安は金にとってはプラスの材料ですが、株式が安値に沈みましたので、株と金どちらが儲かるかが投資家の選択になります。

個人的には株のほうが儲かると思いますけどね。

③のケースは、新興国がまだ買い付けに走っていないことから、マイナスの材料です。

上記の材料は目先の材料であり、長期的な材料ではありません。

例えば①のドル高ですが、おそらくドルは5〜6月くらいまで安い可能性が高く、金利も上昇しないのでドル安も相まって株価が急騰するでしょう。

③の新興国は、お休みや予算の執行が始まれば買い付けをしてくると思います。

つまり、目先は弱いが長期的には買いになる、ということです。

考え方によっては、1月が買い場になる可能性があるかもしれません。


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