金の価格変動要因で一番重要なもの
最近、アメリカ株が好調なのに金価格が上昇しているのを不思議に感じている方が多いと思います。
今回は、その解説です。
金の価格変動要因では、ドルの上下動が一番重要です。
お金を発行しているのは政府で、その政府の信用が落ちることはお金の信用が落ちるのとイコールです。
そして、世界の基軸通貨であるドルがお金の王さまですから、その上下動が重要になってきます。
金の価値が上昇するということは、景気低迷により株価が下がることによって税収が減るからアメリカ政府に信用がなくなるということです。
だから冒頭で紹介したように、株価が下がると金が上昇すると思い込んでいる人が多いという結果になります。
しかし、今は株価が上昇しているのに金の価格も上昇している、「おかしいではないか!?」ということになるのです。
では、その解説をしていきましょう。
金価格と金利
二番目に重要な金の価格変動要因は金利です。
理由は、金はほかの金融商品と違い、金利が派生しないからです。
ほかの金融商品は、銀行預金であれば利子が発生しますし、株であれば配当金が発生します。
金の場合、保有していても利子も配当金も発生しないのが欠点です。
つまり、世界的に金利が上昇する局面において、金の価格は低迷することになります。
金利と金価格の関係を確認
金利と金価格の関係がどうなっているのか、実際に見てみましょう。
上記はドル建て金価格とアメリカ10年物国債の金利です。
青い線がドル建て金価格(左軸)、黒い点線がアメリカ10年債金利(右軸)になります。
このグラフは、右軸と左軸がきちんと相関するようになっていないので見にくいのですが、グラフの真ん中あたりに注目してください。
青い線の金の価格がどんどん下がっているときに、黒い線の金利は上昇しています。
10月は金利が上昇しているのに、金価格も上昇しているという意味がわからない状態になりますが、この時に何があったのかを考えます。
すなわち、株価が急落しました。
株価が急落したから信用不安が起こり、その結果、株価が急落したのです。
参考までに、去年株価が急落したのは2月と10〜12月にかけてになり、そのときに黒い線の金利は急騰しているのがわかります。
今の株価は金利を横にらみで上昇しており、現在、金利が2.7%程度ですから低金利ということになり、低金利ならば株価が上昇するというサイクルになっているのです。
上記のグラフの青い線と黒い線の相関を見ると、金は金利が上昇すると下がり、金利が下降すると上昇するのがよくわかります。
金利の上下動要因と米金利
金利の上昇・下降の要件として、まず国の借金があります。
お金を発行するのは政府になりますから、政府の借金が多過ぎると当然返済が滞るリスクがありますので、金利は上昇します。
上記の黒い線は、現在下降気味になっていますので、アメリカ政府の借金が返済不能になるリスクは少ないとマーケットは判断しているのです。
しかし、去年の12月20日から始まった政府閉鎖は、政府債務が上限に達し、予算の執行を停止されたことで発生したのですから、アメリカの借金は多いのではないかと思う方も多いでしょう。
でも、本当に借金返済不能の可能性があるときに、3.2%程度の金利で済むでしょうか?
少なくとも、ベネズエラのように10,000%くらいになるでしょう。
マーケットは、アメリカ政府の借金が返済不能になることはないという前提で、今のアメリカの金利市場は2.5~3.2%の水準で動いています。
現在の2.7%程度の金利は過去の推移と比べると低金利になりますので、金の価格が上昇しているのです。
つまり、今後の金価格は株価に関係なく、金利の上下動によって動いています。
金利が下がれば下がるほど金は上昇し、金利が高騰したら金の保有には注意したほうがよいということです。
金利は今後どうなるか?
2月19日にFOMCの議事録が公開されました。
その中で、委員のほとんどが年内にFRBの資産縮小を終了させることに賛成しているという記述が一番重要になります。
FRBはリーマンショック以降、ずっと資産を拡大して、アメリカ国債を毎月買っていたのです。
これをQEとか資産の拡大と言います。
ところが、経済が回復してきているので、前任のイエレン議長がこのQEの停止や資産の拡大停止、縮小を2017年12月に決定しました。
この資産の縮小とは、保有しているアメリカ債券を市場に放出することです。
債券の市場への放出は、債券の価格を下げる効果を示します。
ご存知のように、債券価格は下がれば金利は上昇します。
これが去年、金利が3.2%まで行った原因です。
その原因となる債券の放出を、年内を目途に止めるとFOMCの意見が大勢になっているのですから、金利はこれからは上がらないだろう、という意見がマーケットの大勢を占めています。
金の価格は金利が低いと上昇、金利が高いと下降になるのですから、年内、金利が上昇しないとなると金の価格はまだ高くなる可能性を秘めているのです。
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