金急騰の要因
以前「金を1280ドル台で買っておけばよい」と記し、かなり複雑多岐にわたって解説した点を、今回は整理してみます。
そしてそれによって、どうなったら下落するのかを考えていきたいと思います。
まず、金の上昇には以下の4つの原因が考えられます。
1. ドル安
2. 金利の低下
3. FRBによる資産回収(QE完全停止)
4. 需給の圧迫
それでは、それぞれについて解説していきましょう。
ドル安
現在、アメリカの1-3月期のGDPが1%を割れる可能性を視野に入れなければいけませんが、経済そのものは好調になります。
現在は1-3月期の3月で、このGDPは2月、3月の景気が劇的に改善する見込みがあるからです。
消費者信頼感指数などの現状の値は良い数字で、マスコミなどで発表されない5年後の期待指数は過去最高を記録しています。
期待指数が最高ということは、今後、消費が堅調になることが容易に推測できます。
消費の活発化により企業がこれから春に向けて生産活動を活発にする結果、アメリカ経済がより活性化することを示唆しています。
しかし、このような状況下でトランプ大統領は以下の発言をしました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-03/PNT8N96JTSE801
引用元:「ドル下落、トランプ大統領の発言で-相場「強過ぎ」とFRB議長批判」 - bloomberg
つまり、「ドルを強くするな」と言っているのであり、その結果、ドルはマーケットでは本来強くなるはずのものが弱いということが、金を押し上げているということです。
金利の低下
下記グラフはアメリカ10年物国債利回りです。
去年の10月から株価が急落したのは、金利高が要因でした。
現在、アメリカの株価はボーイング株の急落を受けて低迷状態ですが、この金利を見れば、株価が下がったところが買いになるのは一目瞭然です。
エチオピア航空機墜落以来、世界各地でボーイング737MAXが運航停止に追い込まれていますが、肝心のボーイング社は「安全管理体制に問題はない」と言及しています。
飛行機会社が顧客の最大の要求である「安全」に対して責任を負うと言っているのと一緒ですから、ほぼ問題がないとするのが妥当でしょう。
エチオピア航空機墜落と株価
エチオピア航空墜落の問題は、エチオピアがヨーロッパに近いことを考慮すれば、エアバスなどのヨーロッパ飛行機メーカーの圧力がかかっていると想像するのは容易でしょう。
おそらく競合他社が猛烈な売り込み合戦を行っていることから、このような飛行停止命令が起こっていると私個人は推測しています。
安全性は飛行機製造メーカーにとって喫緊(きっきん)の課題であり、それをメーカーが保証しているのに各国政府やエアラインが「停止だ!」と言っている構図に、本来はおかしさを感じなければいけません。
おそらく、この問題は時間の経過とともに終息するでしょう。
となると、ますます株価は高くなるはずです。
そして、この株価が上昇する理由は低金利になります。
低金利は、金の買いの要因になるということです。
FRBによる資産回収(QE完全停止)
FRBがQEの完全停止を決定したという報道がありますが、これは明らかに間違いです。
現在はQEの完全停止を検討している段階であって、決定した段階ではありません。
QE完全停止は、次回FOMC以降の検討課題に入っているだけです。
金利の利上げやQEの完全停止に関しては「数字やデータを見て慎重に判断する」と言っているのみであり、停止したわけではありません。
上記の金利のグラフを見ると、FRBが利上げを行ったのは9月と12月になります。
9月に利上げを行った結果、10月に金利が急騰しました。
予想以上に景気が良いということで、今まで以上にリーマンショックから買い支えをしているアメリカ国債を市場に放出したことから金利の急騰が起こりました。
逆に12月の場合は、トランプ大統領がパウエルFRB議長やFOMCに対して「金利を上げるな」とメディアを通じて言い続けたことにより、FRBが保有しているアメリカ国債という保有資産を予定通りの量しか放出しなかったために、金利が上昇しなかったのです。
これを受けて、金融関係者やアナリストの間にあるFRBは金利を引き上げるのを止めるのではないかという観測を、メディアが歪曲して報道しているだけです。
FRBの現在の姿勢
FRBの現在の姿勢は、過度に物価が上昇して景気が過熱し過ぎると利上げを行うことは変わっていません。
ただし、リーマンショック以降抱えたアメリカ国債という保有資産は、これ以上放出しないという方向に向かっています。
金利の利上げは行う可能性はあるけれど、リーマンショック以降増やし続けたアメリカ国債という保有資産はもう放出しませんよ、という課題に直面しているというのが正しい表現になります。
要するに去年の1月や10月に起こった金利の急騰は、FRBの資産放出によって起こったものであり、その金利の急騰の原因の芽を摘む可能性があるよ、とFRBは宣言しているのです。
となると、今後FRBのQE完全停止によって金利が上昇することはない可能性が高いということです。
ここで強調したいのは、物価が上昇したら利上げはするよ、と言っている点です。
この辺は誤解しやすいところになりますので、よく理解したほうがいいでしょう。
大事なことは、FRBがQEの完全停止を止めたことが金の買い材料になるのです。
需給の圧迫
下記グラフは中国、ロシア、メキシコ、インド、トルコ政府が保有する金の推移です。
この5ヵ国の金保有が飛躍的に増えているのは一目瞭然です。
この結果、金の需給が引き締まり、価格が上昇しているということになります。
金急騰の原因を特定したあとはリスクを考える
上記の4つの理由によって金価格が上昇していると考えると、その原因がなくなった場合や崩壊した場合に価格が下落すると考えるのが妥当です。
では、その要因を考えましょう。
今回のドル安は…
ドル安については、アメリカ経済は現在好調そのものになり、ほぼパーフェクトに近い景気回復を果たしていると思います。
本来アメリカ経済が強いのであるならば、ドルも強くならなければいけないのですが、現在はドル安です。
これは、トランプ大統領やアメリカ政府がドル安を志向しているからにほかなりません。
ドルは市場性のある商品ですから、本来は需給や経済状態を反映しなければいけないのに、実際はドル安になるわけです。
人為的に操作したドル安相場になります。
ドル安はいつ終わるのか
ドル安への操作はオバマ政権でもありましたし、トランプ大統領の就任直後も当時のFRB議長イエレン氏によって行われています。
去年の4月にトランプ大統領は、そのドル安誘導をダボス会議や一般教書演説によって解除し、10月に再びドル安を志向しました。
人為的な操作は通常1年近く続きますが、今回の場合は去年の10月で半年しかもたなかったことになります。
今回もトランプ大統領がドル安を志向したのは夏になりますが、実際にドル安になったのは12月です。
ここから半年ということを勘案すると、6月がドル安のピークであり、私が予測した金7月高値説を強化する材料となります。
つまり、今回のドル安は、最短で6月に終了する可能性があるということです。
この時期は特に注意してください。
金利安とQEの完全停止のゆくえ
ドル安と同様、景気が過熱すれば中央銀行は通常、政策金利を上昇させて過熱を抑えます。
当面の間、金利は数字やデータを見ながら上げると宣言したことによって、しばらく金利は上昇しないと見るのが妥当になり、その結果、金が上昇したのです。
政策金利やQEの完全停止が復活した場合には、金は再び下がりますよ、と言っているのと一緒です。
次回の金利上げは一般的には6月か9月と予定されていますので、そう考えるのが妥当だと思います。
新興国の金買い
上記で説明した通り、中国、インド、ロシア、メキシコ、トルコなどの新興国が金を大量に買っているのも金買いの材料になります。
では、これらの国は今後も金を買うつもりがなければ、金の価格は下がる要因になります。
具体的には、中国はリーマンショックによって増大した借金の裏付けを金で保証しなければいけないという事情があり、ロシアは相も変わらず原油頼みの経済を解消したい、インドに関しては伝統的に国民が金好きな嗜好を持っています。
トルコは去年のトルコ騒動に関して、ドルに依存する政策を止めたという経緯がありますので、買うのを止めるわけがありません。
メキシコはもともと世界の通貨であった産銀国で、それが金にとって代わったことから金を購入している側面があります。
これらの国は近年大きく金を購入していますが、目先の5年、10年で購入しているわけではなく、長い目で買って行く可能性が高いのです。
結果として金価格はどうなる?
以上の通り、前半の3つの金が上がる理由はこの夏前にも終わる可能性がありますが、最後の理由に関しては、もっと長いスパンで考えないといけません。
よって、今年の6〜7月に金の買いトレンドが終了するかもしれませんが、それは売りに転換という意味ではなく、おそらく長い買い相場の単なる押し目で完了してしまう可能性があるということです。
コメントを残す