納会がらみのNY金先物市場下落
3月29日のニューヨーク(NY)金市場は大幅に下落しました。
これは以前に説明した通り、NY金先物市場の納会によって急落しただけの話です。
今回はこれに絡めて、日本経済はこれから良くなっていくという話をさせていただきます。
先物市場には、必ず期限があります。
取引期限が来たら、信用玉を反対売買によって決済しなければいけません。
もしくは、買っている場合は差額を支払って金の現物を購入するか、金の現物をCOMEX(ニューヨーク商品取引所)で渡さなければいけないという規定があります。
2019年3月末で取引期限が来るもの、現状の場合、値段が上昇しているのですから、金の現物を買うつもりがないのに代金の一部しか支払わなくて信用買いをしている人が多いのです。
それを反対売買、すなわち売り決済するのですから、値段が下がるのは当然になります。
取引期限到来によって決済をした人たちは、2019年5月末で取引期限が来るものを買いますので、この行動を想定している人にとっては買い場になるだろうということです。
今、金を買うべきか見送るべきか
金の買い相場が続く条件は、
①ドルが今後も安い見込みがあること
②アメリカ政府の債務の拡大傾向が続くこと
になります。
下がったところを買うには、この2つの条件が変更になる可能性を自分なりに考え、買うか見送るかを判断しなければいけません。
個人的な見解としては、全世界で景気が減速して、アメリカの経済指標もまだ弱いものが相当数あることから、おそらくドル安は継続。
②に関しては、先日発表されたアメリカの経常収支が、リーマンショック時を除いて過去最悪の経常赤字であることを考えれば、財政の赤字も解消しないと見込まれます。
要するに、納会がらみで金が急落したところは買いであろうな、ということです。
なぜ金は循環的に買いになっているのか?
なぜ、去年の10月から金が買いになっているのかの説明をしましょう。
それは、日本の自然災害が大きな要因です。
ご存知のように去年の8月から9月にかけて、日本は豪雨や地震によって大きな経済的な落ち込みを経験しました。
それまでは、2018年にアメリカがドル高を誘導し、その結果、世界のほかの通貨安を誘導して世界的な景気上昇を目指すことになるはずでした。
しかし、結果は日本は自然災害、ヨーロッパは現状ではダメダメな状態、イギリスのEU離脱に関する混乱はご覧の通り、そして中国は失速です。
目論見が外れたドル高転換からの景気上昇
リーマンショックでは、アメリカが世界に先駆けてドル安を誘導した結果、景気回復を軌道に乗せました。
ただし、いつかはその方針を転換させなければいけませんでした。
それが去年の2月に一般教書演説やダボス会議でトランプ大統領が表明したドル高転換です。
これによって日本は円安、ヨーロッパと中国も通貨安の恩恵によって景気が上昇しなければいけなかったのですが、結果はご覧の通り…。
日本も中国もヨーロッパも通貨安によって景気が拡大するどころか、縮小という事態に陥りました。
そして去年の年末、トランプ大統領が「金利を下げろ」とFRBに要求したように、アメリカの金利が上昇すると世界の景気が停滞してしまう状態になったのです。
現状の世界経済の状況と金価格
実際にFRBが金利の引き上げを止めると、日本はすぐに上を向いてきて、さらに中国も上に向いています。
ダメなのはヨーロッパだけです。
日本は自然災害だから仕方がないものの、中国やヨーロッパには自国通貨安を誘導してやったのに何をやっているのだ、というトランプ大統領のいら立ちが目に浮かぶようです。
そこでトランプ大統領は世界の金利を引き下げるため、世界基準であるアメリカの金利を引き下げ、世界の金利が下がると日本と中国は一気に景気が回復してきたのです。
こう考えてると、景気回復が軌道に乗るまで金利は上昇しません。
すなわち金は金利動向にも左右されますので、当面は下がらないと判断できます。
世界経済の動向はこのような現状になっており、金利動向が金の将来を占うことになります。
これから統一地方選挙と参議院選挙をひかえる日本は、過去のデータから見ると株価は下がりようながなく、結果として景気が上昇することになります。
景気回復後にジレンマを抱える中国
中国も金利を引き下げると景気が一気に回復し、おそらく状況は好転するでしょうが、問題はどこで何を稼ぐかです。
貿易はトランプ大統領が貿易戦争を仕掛ける前からすでに衰退していますし、不動産を下げたら国内は暴動の嵐になるでしょう。
そうなった場合、中国はどこから収奪して、国家を発展させていくかの問題があります。
ユーロ圏の経済は八方塞がり
ドイツの景気後退を受けて、ヨーロッパは4月から減税を実施しますが、為替政策が一枚岩ではないので、どうしようもありません。
為替を自国の判断で切り下げたり、切り上げたりできないのはユーロの致命的な欠点になります。
こんなことをやっていれば、いずれユーロは崩壊するでしょう。
景気回復の根本は為替相場の操作、すなわち金融政策なのに、それができないのはユーロの致命的な欠陥です。
かつてギリシャが倒産しそうになりましたが、独自通貨があればあんな危機は起こらなかったでしょう。
そもそもギリシャは危機になる前から財政危機であり、それを回避するために緊縮財政を行ったから、あんな騒動になったのです。
緊縮財政をやれば余計に経済がマヒするのは常識です。
日本経済に課せられた世界的な使命
ひるがえって日本は、消費増税というのは天下の愚策が待っていますが、安倍首相は同時にキャッシュレス決済という実質上の減税を実施する予定です。
2%の増税ですが、同時に5パーセントの減税をするという意味になります。
2014年の消費税の5%から8%への増税は天下の愚策で、日本経済は停滞しました。
これはいつも言うように、消費をするたびに罰金を払うことと同じなので、そが多ければ多いほど経済が失速するのは当然です。
誰も好き好んで罰金なんか払いません。
今回は増税をするけれど、同時にそれ以上の減税も行います。
これがうまく行けば、日本はものすごい成長軌道になるでしょう。
ただし少子高齢化の日本で、キャッシュレス文化が浸透するかどうかは疑問です。
このようにアメリカ経済が若干減速している間、日本が世界経済を引っ張れるか否かによって、今後の世界の成長は決まるという重要な局面になっています。
世界景気回復後の金の動き
アメリカのドル安政策、そして日本の成長が世界をけん引する場合、各国政府の債務額は稼ぐ額(GDP)に対しての比率が減少するので、金を買う根拠がなくなってきます。
世界の景気がよくなった場合、現状は日本経済が世界をリードする役目を担っていますが、やはり人口動態から言えばアメリカが長期的によくなります。
その場合、いつまでもドル安を続けられるかの問題であり、実際に続けられるわけがありません。
その結果、ドル高、債務の減少となり、金を買う根拠がなくなります。
私は「そのピークが6月だ」と言っているのです。
つまり3月の末に金を買ったとしても、その持続は短命に終わる可能性が高いよ、ということです。
ただし相場、金のマーケットは、最初と最後が一番値幅があります。
こういった激しい下落があるということは、最終局面になっている可能性が高い、しかし、リスクをきちんとコントロールすれば、大きい最後の値幅を取ることができるのです。
今後の金戦略のまとめ
①3月28日のNY金の急落は買い場になると思う
②その根拠は
1. 意図的にアメリカはドル安、金利安という金の買い材料を並べている
2. その間に日本経済は、選挙や改元などをひかえ、本格的な景気上昇になる可能性がある
3. それが世界経済の回復につながり、今後、本格的にリーマンショック後の経済回復になる可能性がある。ただし、ヨーロッパと中国に関してはかなり懐疑的
4. その結果、今年のうちに金が高値を打つ可能性がある
5. 目先は頭を打つかもしれないが、インド、ロシア、中国、トルコ、メキシコなどはドル基軸に頼った経済に痛い目にあわされており、金の購入を続ける可能性は高いので大きな値下がりは見込めない? かもしれない
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