実効為替レートとは?
今回の米中貿易交渉で、かなりマーケットがいびつなかたちになってしまいましたので、その解説を行います。
そこで指標とするのが実効為替レートです。
上記は、韓国ウォンの実効為替レートです。
期間は9月3日から5月7日の連休明けまでになっています。
4月の中旬以降に実効為替レートが急落しているのが見て取れるでしょう。
実効為替レートとは、貿易量から勘案した為替レートのことです。
そもそも為替相場とは、外国の通貨を使って商品や財、サービスの取引を行うことになりますので、大きく言えば貿易のことになります。
貿易量が多くなれば上昇し、少なくなれば下落します。
では、韓国の実効為替レートがこれほどまでに下がっている理由は何でしょうか?
韓国の実効為替レートが急落している理由
答えは最近のニュースを見れば明らかですが、北朝鮮が謎の飛翔体と思われるものを発射したからです。
当然、北朝鮮の飛翔体の発射が失敗すれば、ソウルが火の海になる可能性があります。
その時期に好き好んで貿易を拡大しようとする人はいません。
ゆえに、韓国ウォンの実効為替レートは下がり続けているということです。
これは5月7日までしか発表されていませんので、以降に2度目の発射もしていますから、さらに下落しているでしょう。
実効為替レートは貿易量を反映しているわけですから、今起こっている事件にも関係があるのです。
米中通商交渉と両通貨の実効為替レート
米中の通商交渉は、トランプ大統領が5月5日に一方的に「制裁関税をかける」とツイッターで発言したことから、金融市場が大きく混乱しています。
交渉が決裂したのですから、アメリカと中国双方の実効為替レートを見てみましょう。
アメリカの実効為替レートはちっとも下がっていませんが、中国の実効為替レートはトランプ発言を機に一気に下落しています。
これには背景があり、アメリカのGDPに占める貿易の割合は、わずかに10%強程度です。
それに対して中国は50%以上を貿易に頼っています。
一口に貿易と言っても、国内で加工、生産したものを出荷するわけですから、アメリカは10%程度しかないので影響は軽微、一方で中国は50%以上あるので大きな影響が出ることを反映しているのです。
韓国の事情と北朝鮮
参考までに、韓国は60%以上を貿易に頼っているのですから、北朝鮮が謎の飛翔体を発射する度に実効為替レートは下がるわけです。
おそらく、皆さんの中には「国連は北朝鮮に対して何をやっているんだ」と言いたい方が大勢いらっしゃると思います。
理由は簡単で、これ以上制裁することがないのです。
要するに、制裁という制裁はし尽くしました。
ですから、安保理を開いてもこれ以上の制裁はできませんし、過去の経緯からいっても、非難決議をこれ以上行うわけにもいきません。
米朝戦争は眼前に迫っている…?
これ以上、制裁や非難決議を行うわけにいかないというのは、これ以上の非難をするのは過去に例がなく、その場合は国連軍を派遣して戦争をするというのが国連というお役所仕事ですから、非難決議も行えないということです。
また、アメリカは国連の最大のタニマチですから、トランプ大統領にへそを曲げられると「国連負担金を払わない」と言われかねません。
これには議会も同意しますので、アメリカのご機嫌を損ねると国連の存続問題にも発展します。
ですから、国際社会は北朝鮮を見守るほかありません。
つまり最終手段は国連軍の派遣しか残っておらず、戦争の懸念があるから韓国の実効為替レートは異常に下がっているのです。
戦争という最悪の事態の回避を水面下で交渉している最中ということもあって、国連の決議も行われないのです。
制裁開始日
5月7日までの実効為替レートしか掲載していませんので、制裁が発動されるのが5月11日以降になります。
この前までに中国の港を出た船舶には、制裁関税は付与されませんが、5月11日以降は輸出関税をアメリカから徴収されます。
この船舶は通常2〜4週間でアメリカの西海岸に到着しますので、平均をとって3週間後に制裁関税を受けた商品がアメリカ国内で販売されます。
従前より15%高い値段で販売されるのです。
だいたい、この平均が6月1日前後になるから、6月1日から制裁開始と報道されるのでしょう。
今後の米中の実効為替レート
5月11日から貿易量は米中双方が減ることになります。
以前より15%高い値段の商品など、売れる見込みがありません。
中国の貿易黒字は減りますので、実効為替レートは今まで以上に下落することになります。
一方のアメリカは、今まで下がらなかったのは5月10日までは通常に貿易が行われており、その影響は前記したように10%程度だから少ないのです。
中国への制裁が発動される5月11日以降は貿易量が減りますので、実効為替レートが下がることは自明です。
すなわちドル安になります。
金価格は本格的に始動する
ドル安の上に最近、株価が下落していますので、株を売って債券を買うという行動に投資家は出ます。
債券が上昇すれば、金利は自動的に下がります。
5月11日に発表されたアメリカのPPI(生産者物価指数)は予想以上に悪い数字でしたので、物価も上がらないので当面は金利も上昇しないでしょう。
となると、金にとって最大の価格上昇の要因であるドル安が確定してくることになり、二番目の要因である金利安もほぼ確定するでしょう。
4月はかなり低迷していましたが、5月になって金の価格は本格的に始動するでしょう。
円建て金価格について
円の実効為替レートは、連休前から大きく上昇しています。
これは中国経済の復帰などが挙げられると思います。
ドル円は、ドル÷円によって求められますので、ドルが今後、下落の見込み、そして円は上昇する見込みなのですから、そのドル÷円の価格は円安になるということは大丈夫でしょうか?
その答えの数字が大きくなるということは、円高ではなく、円安になるということです。
ドル建ての金価格も上昇し、円建て金価格も円安によって上昇すれば、円建て金価格はドル建て金価格よりも上昇することになります。
金価格は相当な価格の上昇が見込めることになります。
おそらく連休中のトランプ大統領の一連の不規則発言による金融マーケットの混乱は、”まぼろし”になる可能性が非常に高いでしょう。
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