ロシアは本気で領土交渉をする気があるのか
丸山穂高議員の北方領土懇親会での発言がかなり問題になっています。
「体調不良のため出席できない」丸山議員
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/17967.html
引用元:NHK政治マガジン
野党は議員辞職勧告案、与党はけん責決議案を国会に提出しました。
この与野党の対応の違いについて、違和感を覚えるのは私だけではないでしょう。
野党は「国会議員をやめなさい」とする一方、与党はけん責案を提出する。本当に許せないのであれば、全会一致で議員辞職決議案を通そうとするはずです。
今回は選挙にからんでの与野党の思惑違いもあると思いますが、日ロ交渉は本当に適切なのかを考えていきます。
サンフランシスコ平和条約に署名したことから、日本の国際社会への復帰が決定しました。
その間に日ソ共同宣言にも調印し、北方領土の解決を図ってから平和条約を早急に締結することも盛り込まれています。
しかし、現在まで平和条約の締結も、北方領土の解決も図られていないのが実態です。
ここで感じるのが、そもそもロシアは北方領土を返還する意思があるのかということです。
北方領土問題は今まで一歩も前進していない
ロシア(旧ソ連)は、北方領土問題をエサにずっと日本と交渉を続けています。
しかし、一方的に日本から援助を引き出す一方で、領土交渉に関しては一切の譲歩を示しません。
サンフランシスコ平和条約締結から、北方領土に関しては一歩も前進していないという現実があるのみです。
もちろんビザなし交流や共同事業など、多少の前進はあったかもしれません。
しかし、これらロシアの主権を認め、北方4島をロシア領と認めることが前提条件です。
ビザなし交流や共同事業がうまくいったとしても、日本に北方領土を返還する根拠は何もなくなります。
むしろロシアの主権をもっと認めるかたちになり、結局、返還されなくなるということです。
領土問題は、占有している国に有利に傾くという現実を忘れてはいけません。
ロシア人の本音とは
安倍首相とプーチン大統領は、互いに就任以来30数回も会談を重ね、かなりの親密さをアピールしています。
その過程で、プーチン大統領が柔道の黒帯であり、親日家という誤解を招いています。
例えば、ロシアでは日本のアニメが大人気で、この人たちと話していると「日本のアニメは大好きだ」と口々に言いますが、いざ領土問題の認識を聞くと「絶対に領土を割譲しない」と言い出します。
これとプーチン大統領の柔道好きは同じで、柔道を愛しているから親日家という構図をメディアは垂れ流していますが、決してそんなことはありません。
韓国にも日本のアニメファンはたくさんいますが、いざ日韓双方の問題になると、一方的に「日本が悪い」と言い出し始めます。
つまり、柔道好きだろうがアニメ好きだろうが、国益に関わる問題は別という認識が必要です。
領土を割譲したことのないロシア
ロシアはソ連時代をも含めて、領土の割譲をしていません。
また、本来の国際協定では南樺太も日本の領土のはずなのに、日本政府は北方領土の返還しか主張しません。
もちろん、その背景は日ソ共同宣言なのかもしれません。
どんなロシア人とでも話せばわかりますが、国土を分割することに非常に神経質、というよりも明らかに非情な態度で反対してきます。
民主的に選ばれたプーチン大統領が、その国民感情を無視するようなことができるのかと言えば、できるわけがないと思うのが通常です。
現在のロシア情勢
ロシアは2015年にウクライナに侵攻し、領土の一部を占領しました。
そもそもこの侵攻は、過去のアフガニスタンやチェチェン侵攻と同様、一方的な侵略戦争です。
これによってロシアは、2015年から国際的な制裁を受け、経済は青色吐息です。
ただし、貿易の60%以上を占める原油の販売を従前のドル建てからルーブル建てに変更してからは、貿易収支は安定傾向を見せています。
リーマンショック前まで原油価格は100ドルを超し、直後に20ドル台まで売り込まれたときにロシアはピンチでした。
なぜなら、その輸出によって外貨を稼いでいたからです。
現在は60ドル台で安定していますので、大きなピンチになりますが、ウクライナに軍隊を駐留させて、その上、極東に軍事的な覇権を確立するのは現時点での国力では不可能です。
基本的にウクライナに侵攻したのは、ソ連時代からの夢、不凍港を領土に作りたいという思惑からで、裏を返せば、それを達成した今、国力が余っている場合は、現在の日本に対する友好的な態度を捨て、軍事的な行動をとる可能性があります。
ロシアの対日思考回路
ロシアは結局、中国と一緒です。
中国がかつて周辺国に朝貢を要求してきたのと同様、北海道のアイヌがロシア帝国に朝貢していたことから、ロシアでは日本は属国という認識が一般的です。
日本が媚びへつらわないと相手にしないと明確に言う国であることを忘れてはなりません。
つまり、日本という臣下の国とは対等に付き合う気がないという国民性だということをまず知っておかなければいけないのです。
そういう国が、安倍首相とプーチン大統領がいくら仲が良いからと言って、通常の交渉で返還してくれるとは思えません。
丸山議員はある意味本当のことを言った
領土というのは守るのではなく、取りに行かなければ返還は実現しません。
ロシアが現在の日本の返還交渉を相手にするかと言えば、実に気分よく臣下として持ち上げてくれるからある程度の相手をしてくれると考えるのが無難です。
ロシアを君主として、日本が朝貢のように皇帝プーチンにうやうやしく謁見しているという構図は、ロシアが描いているイメージでしょう。
だから相手にされている、というのが本来の構図だと思います。
しかし、領土というものは国家の財産なのですから、日本が下手に出たからといってロシアが返還するかということを、もう少しお考えになったほうがいいでしょう。
あなたの財産100万円を、下手に出てきた部下に、お世辞やおべっかを言うからといってあげますか? という構図と一緒です。
そして、いろいろ献上品を持ってきたら、それをありがたく受け取るが、100万円を渡すかと問われれば、渡すわけがないと思う人は100人中99.9人になるでしょう。
現在の領土交渉は、結局そういうことです。
丸山発言は国会議員としては話にならない
戦争をしてでも取り返すとか、取り返さないというのは、問題発言すぎて話にもなりません。
そもそも平和憲法を謳う日本の国会議員にはあり得ない発言です。
ただし、その処分方法に関して、野党は議員辞職勧告を提出しましたが、与党はけん責処分を提出しました。
これは、与党自民党が丸山議員の発言はある意味的を得ていることから、けん責処分でとどまったと推測される一方、野党は単にヒステリックになって辞職まで求めているのであろうと推測されます。
交渉の当事者は政府、自民党ですから、本人たちが穏健な処分を求め、関係のない人たちがヒステリックになっている印象です。
穏健な処分をしようとしている人たちは、その処分によって交渉に被害が及ぶ人たちです。
つまり、丸山議員があのような発言をしようとしまいと、今のロシア交渉に影響は何もなしということが推測できると思います。
メディアはそれを針小棒大に扱い、国益を損ねるなど言っていますが、本当に影響大なら、交渉の当事者がイの一番に厳罰を求めるのが当たり前です。
ところが厳罰を求めているのは野党という、摩訶不思議な話で盛り上がっています。
北方領土の返還は実質無理
北方領土の返還は、政府が実質無理と言っているようなものには全く注目が集まらず、どうでもいい議員の破廉恥発言に注目が集まっています。
現在の交渉過程を見れば、本当に返還されると思いますか?
援助だけ腐るほど与えて、成果は何もなしという風にしか見えません。
丸山議員の発言は誰でも眉はひそめるでしょうけど、現状の交渉は単なる「返してください、お願いします」という外交です。
本来はロシア側に返還のメリットなど何もないのですから、強い態度で出なければいけないのではないかと思います。
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