4月からの金と金利の関係
週末のNY相場は雇用統計を受けて、金利上昇、金価格下落という流れになりました。
そろそろまずい展開に入ってきています。
当コラムも毎日更新というわけにもいきませんので、この金の天井を見極めるためには、皆さん自身で考える必要があります。
最近メディアでも金と金利の関係が相関していることを報じていますので、今回はその金利の部分について、皆さんが自身でご判断できるように説明してまいります。
下記は、2019年4月1日からのドル建て金とアメリカ国債10年物利回りの関係になります。
青い線がドル建て金、黒い線が10年物国債利回りです。
黒い線が4月から横ばいのときには、青い線もほぼ横ばいになりますが、5月から金利が低下し始めると、青い線のドル建て金価格も上昇しています。
着目点は、週末(7月5日)の動きです。
雇用統計の好結果を受けて黒い線(金利)が上昇すると、同時に青い線(ドル建て金価格)も下がっています。
このように金利が上昇すれば金価格は下落、反対に金利が下落すれば金価格は上昇となっている反相関、反比例の関係になっていることを再度ご確認ください。
金利が上昇した理由は?
少し詳細な解説をしますと、この週末に金利が上昇したのは、雇用統計の非農業部門の新規雇用人数が増えたからではありません。
雇用統計では全米の時給平均が発表されますが、実はその時給が増えたことが要因として考えられます。
時給が増えれば収入も増え、結果として可処分所得が増えます。
自由に使えるお金が増えことによって、商品などの需給がタイトになった結果、物価が上昇し、物価の上昇と金利の上昇はイコールの関係なので、最終的に金利も上昇したという図式になります。
GDPの7割を占有する消費者のお給料が増えているので、アメリカ経済は好調そのものです。
つまり、景気が良い循環の中の減速期くらいの認識で、この減速は9月いっぱいまで続くでしょう。
しかし、10月から再びアメリカ経済は再沸騰するでしょう。
そもそもこの好景気循環の中で、金利が低下するのはあり得ないことです。
では、この説明をしてまいりましょう。
金利の変動要因の確認
今まで何度も書いてまいりましたが、金利の変動要因は以下の3つです。
① 物価の上下動
② アメリカの国家財政
③ 政策金利
今回は、①の物価の上下動に関してお話ししていきます。
消費者物価指数
皆さんは、店頭に並んでいる商品の価格で買うか否かを判断すると思いますが、その値段表示のことを消費者物価指数(CPI)と言うと覚えておいてください。
すなわち、コンビニやスーパーなどの店頭表示価格など、皆さんが製品や商品を購入する値段のことを消費者物価指数といいます。
この消費者物価指数が、アメリカのFRBが決定する公定歩合、つまり政策金利変更の判断基準になります。
アメリカでは、FRBがすでに消費者物価指数を政策金利変更の主な指標としておらず、PCE価格という税金や保険料などを含めた物価指標を使っていますが、世界では基本的には消費者物価指数を政策金利変更の重要な指標にします。
その消費者物価指数のアメリカでの推移を見ていきましょう。
アメリカの消費者物価指数の推移
下記がアメリカの消費者物価指数です。
よく考えてください、最近までアメリカは金利が低下しており、結果として低金利になっています。
上記のグラフに市場金利(アメリカ国債10年物利回り)を重ねてみましょう。
上記は黒い点線の折れ線が金利、青い線が消費者物価指数になります。
過去から見ていくと、青い線(物価)が下がれば金利も下がっているのですが、2019年に入ってからは物価はどんどん上昇しているのに、黒い線(金利)は下がっているという摩訶不思議な現象が起こっています。
金利は物価と連動していると上記の①で記しましたが、矛盾した現象が起こっているのです。
では、この現象を少しだけ解説します。
金利と物価の連動矛盾の解説
銀行に100万円の定期預金をした場合、金利が1%年利で付与される場合には、1年後の預金残高は101万円になります。
ところが物価が3%上昇していれば、1年前は100万円で買えたものが今年は103万円出さなければ買えなくなるのです。
銀行預金をすれば、実質2万円の損をしているのです。
この辺はなかなか理解しづらいでしょうが、銀行預金で2万円損するのであれば、誰も銀行預金なんてしないのはおわかりになるでしょう。
銀行預金をしないで何をするのかと言えば、株を買ったり、マイホームや車などの日常生活品を買うのです。
だからアメリカ経済は株価は新高値に行き、そして住宅は売れ、物価は最初のグラフのように上がるのです。
きちんとロジカルに考えると、経済指標とその通りの結果になります。
今回、雇用統計でまたお給料が増えたということは、株価が上昇し、物価も上がるはず、裏を返せば金利も上昇するはずなのですが、最近まで低下傾向です。
こういう理屈に合わないマーケットのことを「バブル」と呼びます。
経済状態と全く反対方向に金利は行っているわけです。
だから現状の経済だったら本来、金利は上昇しなければいけないのが、下がっているということです。
FRBがこの状況で利下げする!?
皆さんがFRBの委員だとしたら、次回の政策金利をどうするか考えてみてください。
金利を下げて、株価や住宅価格をバブルにしますか?
バブルとは、実態経済と乖離した動きを指し、そしていつか必ず崩壊するのですから、FRBはバブルを発生させないように経済をコントロールするのが仕事です。
ここで次回のFOMCにて利下げを行って、ますますバブルを助長しますか?
バブルというのはいつか崩壊するものです。
つまりFRBは、バブルなど発生させたくありません。
では、金利を引き下げるのですか?
引き下げるわけないでしょう。
むしろ、下げるよりも引き上げ、ないしは据え置きにします。
つまり、昨今の報道で「金利を引き下げる」と言われているのは、実はあり得ないことを報道しているのです。
現在の問題は金利が安すぎることに尽きる
7月末に予定されるFOMCにて、金利引き下げの可能性を否定はしませんが、引き下げるわけがないと弊社は考えます。
そして銀行預金をしないで、ドルを売り、住宅や車、日常生活必需品を買うのです。
結果としてドルの価値はどうなりますか?
ドルの価値は皆が売るから下がりますよね。
そうなると、金の価格変動要因であるドルの上下動に引っかかります。
ドルが下がれば金は上昇する、実際その通り金の価格は上昇していますよね。
つまり、今回の金の高騰は、①金利の下落から②ドル価格の低下を招いているのです。
結果として金が高騰したと、今まで弊社が解説した通りの展開になっているのです。
現在の問題は金利が安すぎることに尽きることが理解できると思います。
今後の消費者物価指数
アメリカのGDPは2019年1〜3月は3.2%成長になりました。
ところがこの4〜6月期のGDPは1.5〜2%台と、成長が減速すると予測されています。
上記はGDPの年率成長で、2019年1〜3月期までは好調になりますが、4〜6月期は1.5〜2%になる予測ですので、報道の言う通りアメリカ経済は減速しています。
しかし、この2019年4〜6月期の前年比1.5〜2という数字は、2018年4〜6月期の2.9という数字に比べて1.5〜2%成長するという意味であって、決してアメリカ経済が縮小しているわけではありません。
むしろ、去年よりも1.5〜2%拡大しているのを「減速」、「景気が悪い」などと言うのは頭がおかしい人たちです。
なぜなら、去年と比べて成長の高さは遅くなりましたが、経済は拡大しているのですから。
上記のグラフには2019年4〜6月期の数字1.5〜2は書かれていませんが、書いてあると想像しておいてください。
そのまま消費者物価指数を再掲します。
最初に掲載した消費者物価指数になりますが、この6月の数字もGDPと同様に悪くなるとほとんどの人が考えています。
6月の雇用統計でお給料が増えているのに、物価が下がると言っているのです。
何も考えないで、取り敢えず世間が「利下げだ」と言っているから、その言質に乗って「利下げ」とか言っている人がほとんどなのが実態なのです。
週末の雇用統計でお給料が増えているということは、消費が活発になる、なぜなら今は銀行預金をしておくよりも株や金、そして車、家などを買ったほうが値上がり益が見込め儲かるからです。
銀行預金だけは間違いなく損をする状況なのですから、人が現金を持つよりも金融資産や不動産、商品などを持つのは当然です。
PCE価格推移
参考までにFRBが政策金利を決めるPCEも掲載しておきましょう。
消費者物価と同様に税金や社会保険料を含めたPCEでも物価の上昇が確認できます。
これで本当に利下げするのですか…、言いたいのはそれだけの話です。
消費者物価指数は7月12日に発表されますが、コンセンサスは前月比変わらず、つまり255.155という数字と変わり映えのしない数字、前年比はプラス1.6。
計算式は、
18年6月の数字:251.134×1.016=255.152
ということらしいです。
買いから売りで取る場面へ
現状を見て、中国との貿易摩擦で鉄鋼、アルミニウムなどの値段が上昇しています。
この鉄鋼、アルミが値上がりするということは、皆さんの食べる食料などの値上がりも意味します。
食品を作る機械は鉄鋼、アルミでできていますので、当然そのコストは皆さんに転嫁されるのです。
その上、お給料が増えていて、物価が先月比変わらずなんてあり得ないのです。
物価は上昇する、物価が上昇すれば、低金利が続くと見ていた金利市場は反転する可能性がある、つまり高騰していた金が下落に転じる可能性があるということです。
弊社の個人的な意見になりますが、もう一度、高値を付ける可能性もありますが、すでに天井は打っているかもしれないと考えています。
ともかく、「虎穴にいらずんば虎児を得ず」ではなく、「君子危うきに近寄らず」を選びたいものです。
買いで儲けるのは個人的にはもう終わったでしょう、ここからは売りで取る場面です。
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