金が下がらない理由はズバリこれ!
7月に金価格が頭を打つと言いましたが、なかなか下がらないじゃないかと感じている方も多いと思います。
そこで今回は、その解説をしていきます。
上記はドイツの10年物国債利回りです。
アメリカの金利の下がり方もすごかったですが、ドイツもひどい下がり方をしています。
上記はアメリカの金利です。
壊滅的な下げはすでに終了し、反転上昇し始めていますので、アメリカの金利下げはひとまず終了したと判断しています。
ただし、マーケットにはいつも二番底というものがあり、それがもう一度ある可能性がありますので、まだ下げ余地はあります。
しかし、前回の金利低下以上には下がらないであろうというのが一般的な見方になると思います。
なぜなら金利の下げは、
①物価
②政策金利
③財政
上記の3点からくるからです。
アメリカでは債務上限延長の嵐であり、物価も上昇するでしょう。
問題は②の政策金利であり、その政策金利は7月末まで待つほかありません。
アメリカでは、もう金利が下げる根拠がなくなってきており、政策金利の下げは100パーセント金利に織り込んでしまっているので、下げ余地がなくなるのです。
ところがドイツは、まだ金利が下がる余地があります。
アメリカとユーロ経済の比較
下記は各国の最新の各国のGDP総額、ドル建てになります。
United States:20494
Euro Area:13670
China:13608
Japan:4971
Germany:3997
見ていただきたいのは、ユーロとアメリカのGDP総額は、それほど大きな差がない点です。
さらに注目は、中国のGDPがアメリカ、ユーロに肉薄しています。
その中で最下部にドイツがあるのは、ユーロの筆頭国はドイツだということです。
上記ではアメリカとユーロ経済に差があるように見えますが、これはユーロ安の影響で、ユーロが安すぎるからドル建てにしたら差があるように見えただけの話です。
ユーロの経済成長がなくてもユーロ高になれば、アメリカとユーロの経済の差はほとんどなくなります。
世界経済の二台巨頭はユーロとアメリカであり、まだ中国が追いつくまでには時間がかかるということです。
中国がユーロに肉薄しているように見えても、それは人民元高とユーロ安の影響であって、数字上は肉薄していますが、実際にはその差は大きいのです。
金価格が下がらないのはドイツが原因
ユーロ筆頭国であるドイツの金利が冒頭のような状態です。
金価格の上下動要因は、
①ドルの上下
②金利の上下
③国家の財政
です。
金の動向にて散々に解説していますが、金利による上下動が最近の傾向になります。
世界第4位のGDPを誇るドイツの金利がこのような雪崩落ちの状況で、金の価格が下がらなくなっている可能性が高いのです。
ヨーロッパは隠し財産である金の大国
ドイツの歴史を振り返えると、小国の集まりがわずか最近、統一ドイツになったことがわかります。
小国の乱立が近世までのドイツの姿なのです。
有名なニーチェも一般的にはドイツ人とされていますが、国内で巨大なプロイセンに囲まれた小国の閣僚というのがその職業でした。
こういう国では内戦が多発し、国が変わるたびにお金が変わります。
そうなると、お金をたくさん持っていても、滅びた国が発行したお金は無効になります。
そこでお金持ちは、人類普遍の価値を持つ金を隠し財産として持ちたがるのです。
自分の国が侵略されたとき、敵は財産を差し出せと言いますが、無価値のお金を差し出し、金塊は隠しておくのが普通です。
日本では、かつて自民党の金丸副総裁が自宅に金塊を隠し持っていたことから、国税が金の保有を登録義務制度に改革しましたが、ヨーロッパでは今でも隠し財産としての地位を確立しています。
実は世界で金を一番持っている国
参考までに、世界で一番金を持っているのは、公式な統計ではアメリカになりますが、本当はローマのバチカン市国と言われています。
中世以降の歴史では、ヨーロッパでの戦乱がひどく、特にドイツは小国が乱立していたので、隠し財産は多いと思われます。
そのドイツの金利がこれだけ停滞したら、金利のつかない金をドイツのお金持ちが買ってもなんら不思議はありません。
経済規模ではユーロとアメリカは並んでおり、ドイツは停滞するユーロの筆頭国になるのですから、金の売れ行きがよくなっているということは大いにあり得ます。
ドイツ金利低下の原因
上記は7月24日に発表されたドイツ製造業PMIという景況感指数になります。
50が好不況の別れ目というのが基本的な見方になりますが、年初から50を割ったままで、景気が非常に悪いのです。
このPMIという景況感指数は、景気の超先行指数と言われ、この数字が上昇しなければドイツの景気回復はないというのが一般的な見方です。
グラフでは、6月に一度戻していますが、7月に再び沈み込むという最悪の展開になっています。
では、なぜこれだけドイツ経済が悪いのかと言えば、次項のようになります。
ドイツの経済が悪くなった理由
ドイツの主要な貿易相手国はアメリカ、フランス、中国の順ですが、このうちアメリカと中国向け輸出の落ち込みがひどくなっているのです。
昨今の貿易戦争によって輸出がままならないことがドイツ経済不振の第一義になります。
この貿易戦争は落ちつくことがあるのかと言えば、その答えは明らかにNOであり、米中、米独の貿易摩擦はまだ続く可能性が高いでしょう。
貿易摩擦がなくなるまで、ドイツ経済の不振は続くことになります。
以前にご紹介したように、メルケル首相は地方選挙での敗退から辞任を表明しており、指導力のあるリーダーが不在です。
貿易以外の産業振興をしようとしても、現在の政権はまさにレームダック化しており、新首相が就任するまで新方針は出ないと見るのが妥当でしょう。
つまり、八方塞がりなのです。
7月25日開催のECB理事会
この原稿を執筆している7月25日は、6月にドラギ総裁が明言したように、金融緩和が見込まれるECBが開催されます。
金融緩和について、ECBには①金利の引き下げ、②お金のバラマキの二択しかありません。
このうち①の金利の引き下げは、上記のドイツの金利は下がるところまで下がっており、これ以上引き下げてもそれほどの効果はないことが見込まれます。
これだけドイツの金利が下がっても、ドイツの産業は上向かないのは経済データで実証済みです。
そうなると当然、お金のバラマキをするだろうというのが市場関係者の読みになります。
お金をばらまけばお金の価値が減りますので、金の価値は相対的に上昇する、これがアメリカの金利低下が止まっても、なかなか金価格が下がらない理由でしょう。
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