FOMC利下げ決定
FOMCは世間の予測通り利下げになりました。
弊社では利下げはしないであろうと予測していましたが、これはどういうことなのかを解説するとともに、現在の金価格の動きを解説していきます。
日本時間8月1日未明、FRBはFOMCにて0.25%の利下げを決定し、これにより政策金利は2.25-2.5から2.0-2.25%に変更されました。
また、9月まで行う予定だったQE停止であるQT政策を即時停止しました。
金利については世界経済の低下リスク、貿易問題やイラン情勢、ブレグジットなどによってさらなる下振れリスクがあるということから、予防的措置としての利下げとなっています。
現在の政策金利と市場金利の関係は以下の通りです。
青い線(FFレート)に対して、黒い点線(市場金利)の乖離(かいり)がひどい状況には変わりがありません。
このFFレートとは金利の誘導目標になり、この乖離がひどい状況になると、FRBが誘導したい金利に今後誘導できないリスクが発生します。
しかも、利下げ後にさらに市場金利が下がり、今後、金利政策によって金融経済をリードできるのかという弊害が生まれています。
利下げの解説
この利下げの解説になりますが、まずFRBとはアメリカの中央銀行であり、国際経済を理由に利下げを実行する法的根拠がありません。
FRBの業務として法律に明文化されているのは、アメリカ国内の景況と雇用に関して責任を持つとされており、国際情勢に関しては法律上の規定がなく、それを根拠に利下げを行うことは、法律家からすればあり得ないことです。
パウエル議長もそのことは百も承知でしょうが、今回利下げをする理由は、アメリカの国内事情からは根拠がなかったので、国際情勢を視野に入れて敢行したという結論も出すことができます。
海外経済事情を考慮して予防的利下げを行うということは、異例中の異例です。
もし、この判断が今後、間違いと判明したとき、その役職や議長の名誉が司法によってはく奪される可能性をも残しています。
今回の利下げは異例中の異例
日本の中央銀行である日本銀行は、雇用については責任を持っておらず、国内景気においての責任を負っています。
アベノミクスのときに雇用に関して日本銀行は一切触れていませんが、物価と雇用の関係はフィリップスカーブによって証明されています。
物価目標を2%に据えるということは、雇用も増えることを前提条件にしていますが、それは日本銀行の責任の範囲外ということで、雇用に関しては触れません。
それが役人としての当然のことと、黒田総裁を筆頭に日本銀行は考えており、また、それが当たり前になります。
今回の利下げを行うことは、アメリカ経済にその原因がないのですから、仕方なく異例中の異例で国際経済を担保としたのです。
リスクを冒して利下げする根拠
そこまでリスクを冒して利下げを行う根拠は、トランプ大統領のプレッシャーと考えることが妥当です。
パウエル議長にしても、責任外のことを根拠に利下げをしたら訴追される可能性があり、そんなリスクを冒す必要がないのに、そのリスクを冒しました。
今回の利下げは、トランプ大統領の思惑によって判断がなされたとするのが妥当でしょう。
また、トランプ大統領は利下げ発表直後に「一気に利下げをやらないと意味がない、だから株価が下がった」とツイートし、また「いつものようにFRBは期待を裏切ってくれる」ともツイートしています。
これは「私はFRBにプレッシャーをかけてませんよ」ということなのでしょうが、そもそもプレッシャーをかけていないのであれば業務範囲以外のことを理由に利下げなどしません。
裏を返せば、利下げする理由もないくらいアメリカ経済は好調だということです。
よくアメリカ経済が不調と言うメディアがありますが、そんなことはなく、好調そのものです。
QEの即時停止について
QEの停止政策であるQTに関しては、即時に停止するであろうという予測通りの結果になりました。
これは、リーマンショック以降にアメリカ政府の発行するアメリカ国債をFRBが買い入れをしていたのですが、イエレン時代の末期にこのQEの拡大と停止路線をパウエルが踏襲しました。
QTを行うと必要以上に金利を押し上げる効果がありますので、これはトランプ大統領の要望通り停止したということになります。
FRBの仕事の確認
FRBの仕事は大まかに2つあります。
① 政策金利の上下動
② マネタリーベースコントロール
今回は①金利を下げ、②QTを停止という2つのことを同時にやったのです。
世間では利下げばかりが注目されますが、②のQTも大事なことです。
また、FRBも国債などの買い付け、売却などのオペを日常的にやっています。
しかし、メインのプレーヤーではなく、メインプレイヤーは銀行や証券会社などの投資家です。
もちろん、FRBのオペは心理的には大きな影響を与えていきますが、金額的には大した量ではなく、やはり投資家などの行動の面から今回の動きを解説していきます。
利率の動き
まず利下げを行い、そしてQTを停止という意味を考えていきます。
利下げとは、正確な名称は誘導目標金利の引き下げですから、市場金利は誘導金利が0.25%引き下げられたのですから、7月30日引けの金利から0.25%マイナスにならなくてはいけません。
7月30日の52週債券利回りは1.982%くらいになりますので、誘導目標は0.25%の下げですから、理論上1.73%程度になります。
現在、52週債券利回りは1.86%ですので、まだ金利は下がると見ていたほうがよいでしょう。
マーケットでのファンドの動き
金を筆頭とした世界の株式や為替、債券市場の割合は、現在6割を超えていると一般的に言われており、マーケットのメインプレイヤーはファンドであることは言うまでもありません。
このヘッジファンドに代表されるプレイヤーは、基本的には債券を売っています。
債券を売るとは、価格が下がり、金利は上昇にかけているということです。
ところがファンドのメインというのは、債券で利益を得ようとしていません。
これは株式を買っているためにヘッジ(保険)として債券を空売りをしているだけなのです。
株を買って利益を得ようとするのは当然のことですが、万が一、何等かの事件や事故などによって株価が暴落したらファンドは大損になります。
暴落しても暴騰しても、顧客の財産を失わずにお金を運用するために債券を売ってヘッジしているのです。
現在、株価は急落の最中ですから、株を売却していると想像できます。
どんな相場の教科書にも書いてあることですから、株買い-債券売りをセットでファンドは仕込んでいます。
すなわち、暴落しているので株を売り、債券を買い戻しているのが現在の相場の状況です。
ファンドは債券を買っていますので、債券価格は上昇、すなわち金利が低下しているのが現状になります。
現在の金価格の動き解説
金利が低下するということは、今まで金は金利が低下すれば買われ、逆に金利が上昇すれば売られていたので、金の価格は当面上がってくることになります。
しかし、このファンドの株売りもいつまでも続くわけでもなく、アメリカ経済は好調なのですから、どこかで株売り-債券買いを停止して、一転、株買い-債券売りになるはずです。
現時点では、株価の底値を割り込んでいる状態ですが、まだファンドが高値で買ってしまった玉整理が終わっていない状態ですので、株買いは新規に行っていないと予測されます。
債券買いを行っていますので、金利の低下は止まらず、当面の間、金は上昇することになるでしょう。
株価の低下にも限界があり、そろそろどこかでこれまでの株売り-債券買いのポジションを引っくり返し、株買い-債券売りになります。
債券売りは金利の上昇になりますので、結果的に金利が上昇すれば金は下落することになります。
その場面がいつになるかは、現時点では定かではありませんが、いずれ金利が上昇し始めるのは間違いないでしょう。
今は、金の価格が下がっていませんが、そのうち大きく下げ始めることになるはずです。
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