アメリカの知的財産権侵害の主張
中国のコピー商品は、粗悪ですが安いというイメージがあります。
かつて、日本でもそのような模造商品やコピー商品が製造されましたが、今はほとんど中国で製造され日本国内に持ち込まれているようです。
今回は、こうした中国のコピー商品がどのようにして生まれるのかについて話していきます。
アメリカは、中国がアメリカ企業が創意工夫した製品の特許を侵害して製造を行い、企業利益を損なっていると非難しています。
これが、米中の貿易摩擦の原因の一つです。
しかし、中国からすれば、現在の特許申請件数は10年前から約7倍にも膨れ上がっており、それを回避する努力しているというのは本当でしょう。
アメリカからすれば、努力していることは認めるが、その回避の歩みがあまりにも遅すぎ、実害をカバーできないということになります。
中国と日本の特許の違い
中国の特許件数は激増しており、これに対して日本国内では、日本の特許申請件数が少なすぎるという批判を目にします。
これは見当はずれの指摘であり、10年間で素晴らしい特許を中国が申請したら、とっくに日本の技術を抜き去っているはずです。
申請件数だけで見れば日本の特許は少ないのですが、少数精鋭なわけです。
一方で中国は10年間で7倍なのですから、その中にはどうしようもないものも多数含まれており、全部が全部、その特許を申請すればイノベーションが起こるような代物ではありません。
実際に世の中の役に立つ特許申請数を数えた場合、日本の特許の質のほうが数段上であり、何も件数を競う必要はないのです。
日中とアメリカの特許レベルの差
やはり技術レベルの違いから、日米の差は看過できないものがあり、日本のITインフラ整備の遅れは否めません。
アメリカは開発の土壌ができていますが、日本や中国はITに関してはまだまだ後進国というテーマで非難をするのはわかります。
ただ、中国も量から質への転換を図っており、この旺盛な技術革新の意欲は、大きく評価してもよいと言えるでしょう。
アメリカと日本、そして中国には技術開発の仕方に大きな差があります。
今回は、この点が模造品、コピー商品の氾濫につながることをご紹介します。
日本の携帯電話製造
日本のシャープの携帯電話を持っているとしましょう。
その携帯は、シャープが何から何まで作っていると考えて正解でしょう。
テクニカルな部分はあまり詳しくありませんが、シャープの強みである液晶などはシャープ製でしょうが、中には韓国のサムスンの製品もあるでしょう。
しかし、全体を見れば、シャープが国内外に散らばる工場で生産し、それを一ヵ所に集めて製造していると想像できます。
これはパナソニックや京セラであっても同様で、製造と組み立ては国内メーカーが担っており、技術流出が起きないように徹底的に管理されています。
深圳は山賊の街でもある?
中国の場合、現在、経済特区でIT集積地になっている深圳などに行かれた方は感じると思いますが、多くの雑多な中小・零細企業の集合体になります。
これらの中小・零細企業は携帯、スマホなどのさまざまな部品を作っており、その数は数万社とも言われます。
深圳で携帯電話の部品を探して組み立てると、誰にでも模造品が作れてしまうくらいの産業の集積地になるのです。
数万社の中から一つ一つ部品を見つけ組み立てていくというようなことであれば、ITにそれほど詳しくない人でもできてしまうレベルになります。
それが、地方から出てきた中国人が一山当てようとスマホの組み立てをして、その完成品を販売するのが中国の海賊携帯(中国では海賊とは言わずに山賊携帯)の出来上がりになるのです。
技術と山師の集積地である深圳
深圳は技術の集積地にもなりますが、山賊携帯で一儲けを狙うような山師の集積地でもあります。
アップル社から新製品が出ても、すぐに中国で模倣した部品が製造され、廉価で販売される構造上の理由です。
アップルはそこに製造技術や研究コストを乗っけて販売しているのに対し、山師たちは類似するデザインで機能を少し足しただけのようなものを深圳から見つけ出し、組み立てて販売するだけですから、非常に効率よく儲かります。
実際に中国では、正規のアップル商品も売れていますが、こういった山賊携帯のシェアもかなりの数に上るのです。
トランプ大統領が怒り狂うのも当然ですし、アップルはさらに頭にくるでしょう。
山賊小屋とも言えるデザインハウスとは
先ほど、深圳には数万社のIT企業があると記しましたが、その中から自分に必要な部品メーカーを探し出して組み立てるのには大変な労力が必要になります。
そこで近年登場しているのは、どの部品がどこで売られているかを紹介する、デザインハウスという携帯電話を組み立てるための専門的な事務所です。
デザインハウスに山師たちが一斉に行き、どのような機能のどのようなデザインで携帯電話を組み立てるのかを相談します。
するとデザインハウスは、組み立てたい携帯電話の仕様に沿った部品メーカーを紹介し、深圳の町を駆けづり廻らなくてもよいようなシステムになっているのです。
ある意味、合理的と言えば合理的ですが、やっていることは特許や知的財産権のことなど一切無視しています。
ただ、こういった次元から、中国のIT技術の発展は起こっており、実際にアメリカや韓国、日本以上のスピードでインターネットやスマホが普及した源泉はこのシステムにあります。
この技術移転の速さが中国を現在、IT大国に押し上げていると言っても過言ではありません。
中国の大手IT企業
中国の大手IT企業、ファーウェイ(華為)やZTEも山賊をやっているのかと言えば、そんなことはありません。
研究開発に多くの資金を投入し、自分たちの資本で技術を開発しています。
この辺は日本のシャープやパナソニックと一緒で、華為が他国や他社の技術を移転して販売しているということは現在ではありません。
もちろん、創業期には上記の深圳で起こっているようなことをやっていましたが、アメリカがこういったことを再三にわたり指摘していますので、今ではやっていないと思われます。
ただ、中国は14億の人口を抱えていますので、やはり人件費や開発コストが安く、販売価格も安くなるのです。
近年、華為などの中国大手IT企業の技術は、アメリカをも凌ぐ勢いになっており、それを懸念したアメリカが阻止に動いているのが実態でしょう。
中国の大手IT企業の生産方針
大手IT企業のスマホ生産のやり方を経済学では垂直統合と言い、現在、世界の大手のスマホメーカーはこのやり方を行っています。
この場合、コストは研究開発を含むので高価格になります。
深圳で行われているこの分業での生産体制は、研究開発コストを各部品メーカーが負担するので、垂直統合方式よりも断然に安くなります。
日本の労働慣行にも、例えばオーナーが親会社ですが、フロントは別契約で別会社が行い、レストランも別会社、清掃も別会社というようなホテルが最近は主流を占めています。
名前は大手上場企業のホテルですが、実質的な運営はほかの会社の寄せ集めになっているケースが最近ではほとんどです。
親会社が直接経営することは少なくなりました。
実際に自分で人を雇い運営するよりも、別会社に委託したほうが安くなるからそういう運営方式になります。
中国の携帯もそういう分業体制になっているので、安い携帯が世間に爆発的に普及するのです。
山賊がもたらした恩恵
一方でアップルのような高価格の携帯は、1台で最低でも10万円もするので、これほどまでに世界に普及したかどうかの疑問です。
結論は検討しなくても見えているわけで、10万円のスマホが世界人口の約半分の30億台も出荷できるわけがありません。
価格が廉価であったから、世界中にものすごいスピードで普及しました。
この恩恵はアメリカ企業も被っているのは間違いなく、これを考えるとアメリカの中国に対する要求は、冷静になればいくぶん弱まる可能性もあるのです。
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