中国経済は破綻する?
今回は、巷でささやかれる、近い将来に中国は経済がスローダウンして破綻に追い込まれるという説の真相についてお話ししていきます。
中国経済が破綻するというタイトルの本や雑誌の売れ行きが良いという厳然たる事実が出版界にありますので、今後もこのような本は多く出版されるでしょう。
しかし、実際の政治・経済の世界ではあり得えません。
将来のことはわかりませんが、現時点で中国経済が破綻するような事実もありませんし、その兆候もないのです。
日本のメディアは売れ行きが良いという単純な理由で、このような出版物を多く出してきます。
中国という国は基本的には、今、問題となっている韓国とは違い、非常に大人の国であり、また大人の対応をする国です。
アメリカと対立しているから、子供じみたケンカをするというイメージがあるでしょう。
しかしそんなことはありません。
人民元安誘導報道について
下記はドルと人民元の為替レートです。
週明けから米中の対立を受けて、チャートが上の方に行っています。
このチャートが上の方に行っているのは、ドルに対して人民元安が進行しているという意味です。
ところが、この人民元安に対して、アメリカと言うよりもトランプ大統領が中国を為替操作国に認定することを発動しました。
理由は、中国は対米貿易で輸出に関する報復関税を緩和するのに、人民元を安く誘導していると言っています。
全くの事実誤認も甚だしく、間違いの認識です。
このことについて書くのは、結局、日本の報道もこのアメリカの言い分を是とし、同様の主張しています。
アメリカ側の言い分
まず、アメリカ側の言い分について解説していきます。
アメリカには為替操作国への認定要件というものがあります。
具体的には、貿易赤字額やそのほかの要件があるのですが、中国は赤字額においては、はるか以前から為替操作国でした。
今回、為替操作国に認定されたことの意味は全くありません。
本来、アメリカには、為替操作国に認定された国に対して報復処置を行う国内法の基盤があります。
しかし、今回の米中貿易摩擦においては、最初に報復関税を行い、後追いで為替操作国に認定したのです。
アメリカの国内法の要件では、最初に為替操作国と認定し、その通告を行い、善処を求めます。
それでも改善されなかったら、報復処置を行うというのが為替操作国の認定のロードマップです。
その順番が逆になったのであり、実質、中国は為替操作国だったものを後追いで認定しただけの話です。
中国の為替操作国認定とは、まるで意味がない政策になります。
実質、為替操作国なのですから。
中国側の認識
中国からすれば、アメリカの操作国認定は、丸っきり的外れという認識です。
日本のメディアや知識人も、中国が意図的に為替操作をしているような発言をしていますが、的外れな指摘になります。
理由は簡単で、いくら共産党政府管理とはいえ、中国は為替相場を管理などしていません。
中国は風変りな為替制度をとっており、日本やアメリカ、そのほかの先進国の為替制度のように自由な取引制度になっていないのです。
中国の特異な為替制度
基本的には、人民元は朝、寄り付き前に金融当局が誘導目標を発表します。
日本銀行やFRBの誘導金利目標と一緒で、マーケットは金融当局の発表する誘導レートに近づこうとするのです。
誘導レートは自動的に算出されており、その値は前日が元高に行けば、2/3のレート元安の方向に示した方向がその日の誘導目標になります。
中国人民銀行や中国共産党は、人民元の誘導目標に口出しができない状態になっており、意図的に誘導などできなくなっているのです。
どこの国でも一緒ですが、短期間にレートが変動をすることを嫌います。
日本やアメリカなどは制限など設けていませんが、中国は一日に1%以上の値動きを示した場合、取引はできますが、それ以上のレートの変動を止めてしまいます。
この辺が、日米などの自由主義と為替システムが全く異なる点です。
為替の専門家となれば、その辺の事情を理解していなくてはいけないのですが、それを理解していない専門家が日本にはいっぱいいます。
現在、人民元安が進行しているのは、マーケットの自然の形であり、アメリカの言うように意図的に人民元安を誘導しているのではないというのが重要なポイントです。
なぜ人民元安が進行するのか
なぜ人民元安が進行するのかと言えば、まず、人民のお給料は増えているのに、企業の利益が増えておらず、企業の衰退、特に国有企業の衰退が明らかになっています。
国全体として、人民の個人消費が40%を占有するので落ちませんが、株式投資を中心に見ている日本人が多いので、中国経済が減速している印象になるだけのことです。
そして、中国は特異な投資によって成長が偏在している国家になりますので、その投資マネーが株式は衰退の一方、全体の景気が減速すれば不動産も低迷しますので、海外投資に目が行きます。
これが人民元安の真相であり、決して金融当局、共産党が意図してやったわけではありません。
経済実態を反映した人民元レートですので、これに反発するアメリカや日本人の専門家と称する人々に中国政府は反発するのです。
中国に詳しいとか言っている人はたくさんいますが、ほとんどは無知に等しく、メディアで間違っていることを言い続けています。
メンツの文化の実態
中国は、メンツを大事にする国ということを聞いたことがあると思います。
この言葉だけが一人歩きして、非常に誤解が多いようです。
例えば、日本人で初対面にお会いした人には「こんにちは」、「ごきげんよう」と言うのが当然のことになります。
一方、中国人同士が初対面の場合、「お前は何者だ」ということを必ず聞かれるそうです。
中国人にとって、会社とは共産党組織の一部であり、経営者のほかに共産党のトップも必ずいます。
そして、その共産党のトップが企業を監視しているのです。
日系企業が中国に進出した場合、必ず合弁会社になるのはこういう理由によります。
共産党の監視がない会社は中国には進出できませんので、必ず中国共産党も出資して、共産党の保有分も会社にあるということを示すために、そのようなことを行うのです。
会社というのは中国にとって共産党の一部であり、その会社の名前を名乗れば、共産党のどの部分に組織されているかがわかり、相手の氏素性も明らかになるのです。
中国には、こういう形式ばったところが日本と同様に存在します。
つまり、このような形式ばった会話を最初にしないと、中国では信用されないことが多く、多くの共産党幹部などは、この形式ばった言い方をしているから出世したという見方があることも事実です。
メンツに関する最近の傾向
現在の首相、国務院代表である李克強などは、完全なる合理主義者であり、この形式ばった話し方が非常に苦手という性格らしいです。
面識を持ったとしても、最初に実務的な話をすることから、メンツの話を早くしたい中国国内では超の付く合理主義者と言われています。
こういったメンツという形式ばった会話を好むことがないというのも最近の中国の傾向になります。
中国人と話すときには、形式上の会話が非常に大事なのです。
メンツの最重要点
メンツの最大に重要な点は、相手が過去に言ったことを最大限に尊重することになります。
台湾は、実際の政治体制を見れば、併合など不可能に近いものがありますが、中国は建国以来「一つの中国」と言い続けている手前、それを否定してはいけないという暗黙のルールが存在するのです。
建国から今年で70年近くになりますが、毛沢東以来ずっと言い続けていきたメンツをつぶすことは、中国人の信用を失います。
台湾と中国は一つの中国ということを相手に強要しているのです。
台湾が中国の一部であるということを否定すると、中国人からは全面的に信用されません。
これは台湾に限らず、どんな分野でも同じです。
その人が言っていることを言下に否定することは不道徳と見なされ、親交はもとより、そういう人たちとは一切の商売をしません。
ウソでもいいから「台湾は中国の一部である」と話すと、スムーズに進むのです。
尖閣も同じで、中国が領土であると言っている以上、それは尊重しないと中国人と対立することになります。
メンツを踏まえる限りは現実的に動く中国人
実際に商売の話になると、いろいろなトラブル、合意内容など紆余曲折がありますが、その辺は従前から言っていることを侵害しない限り、中国人はフレキシブルに、つまり現実に即して対応します。
ですから、日本企業は初進出時には非常に苦労しますが、中国人と親密になれれば、合弁企業と言えども共産党は非常に好感を持って接してくれるので、事業は成長しやすいとう特徴を持っているのです。
中国のメンツ文化と台湾
台湾は中国の一部であるという主張は、現在の政治体制を見た場合、誰が見てもその可能性は少ないと思うのが普通です。
これは中国の建国の祖である毛沢東がずっと言い続けたことですので、毛沢東のメンツをつぶすわけにはいかないという意識が強くあります。
アメリカが台湾に武器を売却したことに中国政府は猛反発していますが、それはあくまでもポーズの可能性があるということです。
台湾の場合は、建国の祖が言い続けたことですので、隙があれば進出しようと思っている節は否定できません。
共産党の幹部がどう考えているかの問題です。
アメリカが台湾に武器を売却したことには猛反発していますが、それが米中貿易交渉の主要な議題に上るかと言えば否ですし、その交渉過程で武器売却の話題が上ったことも聞いたこともありません。
つまり、武器売却はいたし方ないことだと中国側は考えており、米中交渉は現実的に交渉しているというのがおわかりになるでしょう。
香港問題の本質
香港については、イギリスから返還されて以来、中国は一国二制度と言い続けています。
香港問題は、香港が単に言うことを聞かないだけの話です。
一国二制度と言いながらも、デモなどに介入をするのはおそらく治世上の問題であり、それほど大きな問題とは思いません。
香港人の3人に1人がデモに参加していることには、中国政府も頭を痛めているでしょう。
中国に併合されるのに50年の猶予があるとはいえ、その間に香港人の不安が高まることも想定内であると考えられます。
実際には、香港の存在は共産党政府にとって非常に便利なものであり、50年経過しても香港は現在のままの方の可能性が高いのです。
こういった建前と本音を使い別ける中国人は、合理主義者にとっては非常に面倒くさいことでしょうが、このメンツ、つまり言い続けてきたことは尊重してやらなければいけない文化があるのです。
結局、我々は中国人を知らなすぎる
現在、子供じみた対応をするトランプ大統領がおかしいと思いますが、中国も中国だという心象も得るでしょう。
しかし、中国は現実的な対応しかしておらず、トランプ大統領の素っ頓狂な要求に対しても、人民会議で協議の上、大人の判断をしているというのが実際の感想です。
これは建国以来続いていることですが、中国は国際社会の要望に応えようとしています。
尖閣や台湾、香港問題に介入すると言えば、よりエキサイトな反応をする場合もありますが、長い目で見れば現実的な目線で、大人の判断、つまり国際社会の要求する方向に政治の舵を切っているのが現実です。
中国の健全な発展は先進国の希望
今回の米中貿易問題は、世界が中国に対してアンフェアだと感じていたことです。
その1つに中国国内で儲けた外国企業は、そのお金を国外に自由に持ち出すことができないことが挙げられます。
これはアメリカだけではなく、日本も韓国もヨーロッパもです。
その文句をトランプ大統領が代表して言っているだけで、G7でトランプ大統領にすり寄る各国の首脳がたくさんいるのは、この中国問題に頭を悩ませる首脳が多いからです。
ただ、中国は現実的な対応をし、国際社会の要請に常に応えようと努力していることは確かであり、歩みは遅いですが、国際社会に認められるように国内を改革しているのが事実になります。
韓国と比べると、中国の大人っぷりが際立ち、逆に韓国の幼稚性が際立ちます。
国際社会が中国に求めるのは、より一層の発展であり、中国につぶれてほしいと願っている先進国はありません。
中国がつぶれるという話は現在の世界情勢では考えられない事実であるのです。
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