金の値動きの基本はドルの上下動
金価格が乱高下しています。
今回は復習の意味を含めて、現在の金の動きを考えていきます。
何度も言わなくてもわかっているという方が多数だと思いますが、金の値動きの基本はドルの値段によって決定されます。
すなわち、ドルの価値が上昇すれば金の価格は下落、反対にドルの価値が下落すれば金の価格は上昇するのです。
ドルは、数ある通貨の中でも基軸通貨であり、通貨の王さまという意味合いを含んでいるので、ドルが不安定になれば、ほかの通貨もすべて不安定になることを意味しています。
ドル不安とは貨幣に対する信認の問題であり、すなわちドルの価値の下落は、紙でできたお金が本当に価値のない紙屑になるのに対し、金は地球上どこに行っても普遍の価値を有すのです。
国がつぶれたら単なる紙切れになるドルや円よりも、存在そのものに普遍の価値がある金に投資が集中します。
ゆえにドルが下がれば金の価値が上昇することになるのです。
反対にドルの価値の上昇は、アメリカの経済、財政、政治がうまくいっていることを意味しますので、人々は安心してドルを保有します。
結果としてドルの需要が増え、需要が減少する金の価格は下落するという意味があるのです。
これが、金の基本的な動きになります。
現在の金の値動きは金利の状況による
人類普遍の価値を持つ金ですが、当然、欠点もあります。
それは、ほかの金融商品は金利や利子、配当などが保有した分だけ利払われるのに対し、金の場合は保有していても金利が発生しないのが欠陥であり弱点です。
上記はアメリカの金利の推移ですが、2018年10月から金利は下がりっぱなしで、つい最近になって反転してきています。
基軸通貨であるドル金利がこの程度しかないので、この状況は金にとっては追い風になります。
国際的に金利が低下傾向にあるので、金利を目当てに銀行預金や債券投資をしても仕方がないからです。
去年から8月までの金と金利の関係
債券や銀行金利、そして株の配当などはどこで買っても保証されますが、その金利が去年から異常に安い状態が8月まで続きました。
結果として、債券は過去最高値に迫るような勢いで、特にドイツや日本で金利が安くなったのです。
金利を目当てに投資をしている人が一斉に債券投資や銀行預金を始めましたが、金利がスズメの涙ほどしかつかないのであれば、金を買ったり株を買ったりしたのです。
ですからアメリカの株は、米中貿易戦争などを理由に不景気であるのにもかかわらず、新高値に迫るような勢いで上昇しました。
そして、その株が買いすぎだろうということから、金も買われたのが実際の状況になります。
しかし、8月末にFRBがFOMCによって利下げを決定したことによって、市場金利は反転上昇し始めています。
金利が上昇していますので、金を手仕舞いする、すなわち売却して金利投資にまた投資家が戻ってきているというのが現状です。
上記は青い線が金の価格、そして黒い点線がアメリカの金利になります。
見事に、金利が下がれば金の価格は上昇し、金利が上昇し始めると金の価格が下がっています。
ドルの上下動と金の関係を見る
では、第一の要因であるドルの上下動と金の関係を見ていきましょう。
下記のグラフは、上が2018年1月からのドルの実効レート、そして下が同時期の金価格推移です。
金とドルの関係がリンクしているのであれば、2019年1月からドルの価格が上昇しているので、本来なら金の価格は下落しなければなりません。
実際は、金価格と金利は同じ方向に動いています。
すなわち、金価格が動く要因は、金とドルが反相関にあるという定義が崩れ、逆に金利と反相関するようになっているのが現状です。
よく金の価格が上昇するのはドルが安いからという説明を見ますが、実際のドルは最近は少し低下気味ですが、これは金利が上昇したから金の価格が下がっているのです。
現在の状況は、過去の金価格の歴史と比べるとかなりイレギュラーなスパンになります。
ですから、従前の金とドルの関係から金価格を予測するのは無意味になるのです。
フェイスブック新仮想通貨と金
金の専門家はなかなか少なく、こういう人たちが「わかっていますよ」感を出してデタラメな説明をしている文献をよく見かけます。
「FBの新仮想通貨の需要があるのだから、金の価格も上昇する」などもう言っていることがメチャクチャです。
そもそもFBの新仮想通貨は、アメリカ政府から差し止めを食らっており、計画通り発行できるかもわからない状態ものを材料にするなど、何もわかっていない証拠でしょう。
金に投資するのであれば、現在は今後の金利がどうなるかをよく見なければいけないということです。
今後の金利動向と金価格
まず、金の価格を予測するためには今後の金利動向を推し量らなければいけません。
金利動向の基本も以前から書いており、
① 物価動向
② FRBの誘導目標金利
③ アメリカ政府の財政赤字状況
の上記の3つの柱からなっています。
まず①の物価動向は、年間アメリカの物価上昇率は1.6〜2%程度で上昇しており、本来ならば金利は上昇しなければいけません。
②は後述しますが、③においてはアメリカは債務上限に関する法律があり、その上限を現在超えていません。
よくニュースで、政府閉鎖の影響で自由の女神の見学がでできなかったということを聞かれると思います。
これはアメリカ政府の借金が上限まで達してしまい、結果として政府を閉鎖して、その債務を減らすように努力しなさいということです。
ゆえにアメリカの赤字は、近年それほど目に見えては増えていません。
金とアメリカの財政赤字は密接な関係がありますが、現在この財政赤字は金を動かす材料となり得ないのです。
FRBの誘導目標金利の解説
問題の②FRBの誘導目標金利の解説です。
今週、FRBはFOMCを2日間開催します。
マーケットの注目は、トランプ大統領の圧力を受けて、連続で追加利下げをするか否かです。
現在のFRBの誘導目標金利が2%前後、そして実際の1年物金利は物価上昇と同じく1.6%程度になります。
誘導目標金利をマーケットは全く無視している状態なのです。
そうなれば誘導目標金利を下げるか、金利を上昇させるオペをFRBが行えばよいだけの話になります。
前回のFOMCはトランプ大統領の圧力に屈したかたちで誘導目標金利と市場金利の乖離を修正したかたちになっていますので、今回も誘導目標金利を下げて、金利を下げるというのが実際のところでしょう。
誘導目標金利を下げた場合、8月末にはその金利が反転し始めたのです。
今回もおそらく、FRBが利下げを発表すれば市場金利は上昇するでしょう。
その場合、金の価格は下落に拍車をかけるでしょう。
無人機によるサウジアラビア攻撃の余波
そんな中、この週末に大きい事件が起こりました。
無人飛行機によるサウジアラビア攻撃です。
犯行声明は、イエメンのフーシ派が出しています。
サウジアラビアはイエメンに対して軍事介入を行っており、その反対派がサウジの石油基地を攻撃するのは一見合理的に見えます。
しかし、おそらくフーシ派がイラン政府の意を汲んでの攻撃でしょう。
詳細は別のコラムで解説しますが、おそらくこの攻撃はイランの最高指導者の意を受けたイラン革命隊によるものです。
参考までに、弊社はこの攻撃は必ずイスラエルの総選挙(9月17日)前にあると予測していました。
詳細は省くとして、この正体不明の攻撃は、国際社会を震撼させていることは間違いありません。
今のところトランプ大統領はイランに対して報復は行わないと言明していますが、被害を見る限り、決して黙っていないことは明らかです。
仮に交戦状態になれば、景気のさらなる下押し圧力になります。
今後の展望と金価格
アメリカがイランと交戦に入った場合、株式投資が手仕舞され、債券投資に再び殺到することになります。
利回りが低下するので、金の価格は再び上昇する可能性が強いということです。
現在、FOMCの決定待ちの状況にマーケットはありますが、この結果が出次第、再びサウジ、中東情勢にマーケットの目が向かうことは間違いないでしょう。
この2つの状況がはっきりするまでは、金の価格は現在続落していますが、動かないと思います。
しかし、中東情勢が緊迫するのは必至ですので、予定通り11月までは下がらないと考えています。
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