キャッシュレスの利点
10月1日からの消費増税に対して、政府はキャッシュレス決済によるポイント還元制度を開始しました。
今回は、この件に関して説明していきます。
消費税8%のときには、数字の1円単位に端数が出ますので、その小銭の管理が非常に面倒なものでした。
しかし、電子マネーやクレジットカードによる決済によって、消費者は小銭の管理をしなくてよく、小売店側も金銭の受け渡し時の省時間化に伴い、人件費の切り詰めに成功しています。
中国の都市部や韓国などは、大幅に進行したキャッシュレス化によって、経済が活発化していることが確認でき、日本政府のこの減税はある程度、経済の活性化を促すことになるでしょう。
中国では、現金を持ち歩いていても買い物ができず、結果として、スマホで決済しなければいけないということをよく聞きます。
つまり、町全体のキャッシュレス化が進行していることになります。
政府の思惑
政府は、日本全体をキャッシュレスにすることは想定しておらず、令和が始まったと同時に新札のデザインに渋沢栄一が選択されましたが、この新札発行時に想定されるキャッシュレス化は6割です。
キャッシュレスでの買い物がマストではなく、比率を上げたいのが政府の思惑と思われます。
現在のキャッシュレスの割合は20%半ばくらいであり、残りは現金で買い物する人が多数を占めていますので、現金派の人も安心すべきです。
参考までに、現在の現金での買い物は6割を占有しており、これを新札発行時には2割まで低減したいというのが政府の思惑です。
こういう思惑がありますので、キャッシュレス減税を行った背景があります。
キャッシュレス減税効果
先週、1週間のキャッシュレス減税の推定累計額が経済産業省から発表されました。
キャッシュレス・ポイント還元事業に関する直近の状況について公表しましたhttps://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191011004/20191011004.html
引用元:経済産業省
この発表によると、このキャッシュレス還元の1日当たりの還元金額は8億円になるそうです。
この8億円という金額は還元ポイントになりますので、実際の小売店などで消費された金額は97%増しに仮定します。
意味は、キャッシュレス減税はお店によって違い、中小規模店では5%、大手小売店では2%になります。
その平均をとって3%と仮定すると、1日のキャッシュレスでの売り上げは約300億円になります。
計算は、300億円の3%は9億円という計算です。
1億円の違いは大きいですが、計算しやすくするために300億円とします。
この場合、日本の小売店の1日売り上げを300億円と仮定し、1ヵ月間30日とすれば、9,000億円の売り上げとなります。
増税後、売上は上がったのか?
ここで以下の資料を見てください。
商業動態統計速報 2019年8月分https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/result/sokuho_1.html
引用元:経産省
小売店の1ヵ月販売金額総計は12兆円です。(2019/8月期)
ここから計算していきます。
まず、この小売売上は1日に換算すると12兆円÷30日間ですから、1日の売り上げは約4,000億円になります。
このうち、日本のキャッシュレス普及は統計では約25%です。
上記の経産省のキャッシュレス還元で、国が支払う費用は1日平均で8億円、金額ベースで300億円となります。
これでは、キャッシュレスの売り上げが300億円で、日本の小売総計は1,000億円ですから、消費増税で大幅に売り上げが落ち込んでいると考えなくてはいけません。
キャッシュレス減税は成功した?
経産省のキャッシュレス減税の発表を再び見ます。
最初の1週間のポイント還元の金額は、現時点の試算では1日当たり平均約8億円、合計60億円程度となりました。
なお、10月11日時点の本事業の対象となる登録加盟店数は約52万店で、10月21日には約61万店になる見込みです。
キャッシュレス・ポイント還元事業に関する直近の状況について公表しましたhttps://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191011004/20191011004.html
引用元:経産省
最後の部分が重要で、本事業の対象となる主な点数は52万点とあります。
日本の小売事業者数を以下の統計から確認します。
小売企業
小売企業における企業数を地域別にみると、東京都の10万1千企業(小売企業に占める割合9.0%)が最も多く、次いで大阪府の7万9千企業(同7.1%)、愛知県の5万4千企業(4.9%)、神奈川県の4万9千企業(4.4%)及び兵庫県の4万3千企業(3.8%)となり、これら上位5都府県で29.1%となった。
これを企業数の多い主な業種についてみると、飲食料品小売業では、東京都の3万7千企業(飲食料品小売業に占める割合8.6%)が最も多く、次いで大阪府の3万2千企業(同7.5%)、神奈川県の2万企業(同4.6%)、愛知県の1万9千企業(同4.5%)及び埼玉県の1万7千企業(同4.0%)となり、これら上位5都府県で29.2%となった。
その他の小売業では、東京都の2万7千企業(その他の小売業に占める割合10.7%)が最も多く、次いで大阪府の1万7千企業(同6.6%)、愛知県の1万3千企業(同5.2%)、兵庫県の1万2千企業(同4.8%)及び神奈川県の1万1千企業(同4.5%)となり、これら上位5都府県で31.8%となった。
織物・衣服・身の回り品小売業では、東京都の1万5千企業(織物・衣服・身の回り品小売業に占める割合10.0%)が最も多く、次いで大阪府の1万3千企業(同8.2%)、愛知県の7千企業(同4.8%)、兵庫県の7千企業(同4.8%)及び神奈川県の7千企業(同4.5%)となり、これら上位5都府県で32.2%となった。https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syokozi/result-2/h2c6k8aj.html#menu2
引用元:経産省
日本の小売事業者数は112万軒であり、キャッシュレス減税に参加しているのが52万件というのは、半数の事業者しか参加していないのがわかります。
つまり、キャッシュレス減税で1ヵ月で300億円×30日間、9,000億円あると推計されます。
それに対して小売売上は、月間12兆円です。
そのうち、1/4がキャッシュレスなのですから、3兆円の売り上げがあると推測されます。
しかし、事業者は半数しか参加していないので単純にキャッシュレスの売り上げを全店舗が参加したとして、倍にすると1.8兆円になります。
全店舗での現金、売掛(リボ払いやローン)での販売を考えていくと、1日平均3兆円に対して、1.8兆円の売り上げは悪くはない数字、むしろ、9月の増税前を上廻っているのではないのかなと思うのです。
功を奏したキャッシュレス減税
その根拠は、特に買いが集中したのはお酒や薬、タバコなどの日用品の買いだめ、そして住宅や自動車の増税前の駆け込み需要があると思われるからです。
これらの単価の高い商品は、増税直後に購入が増えるとはとても思えません。
上記の自動車販売の小売は、全国112万の業者に対して6%を占有していますが、その金額は30%程度占めるのではないかと想像すると、決して1.2兆円の差は悪くはないでしょう。
経産省は今後もこの還元の金額を発表していくので、推移を見ていかなくてはいけませんが、おそらく増税の大きな影響は、買いだめによる消費減以外はあまり考えられないようです。
下手すれば、増税前よりも消費は良い可能性もあります。
キャッシュレス決済の今後
現時点では、増税後に不景気になるという問題は、問題がないと判断しています。
つまり、この政府の政策は成功したという判断です。
おそらく6月以降のポイント還元は、暫時減少という処置を9月まで延長すると考えています。
今回の台風ではないですが、急激な雨が大洪水を招いたように、急激にそのような処置を失くすことは避けるはずだということです。
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