トルコの金利推移
トルコへの制裁を全面的に解除すると10月23日にトランプ大統領が記者会見で表明しました。
まず、この見通しはここでも記した通りのことです。
そのほかの中国、北朝鮮、香港、イラン、韓国もこのコラムを全部読んでいないと理解するのは無理ですが、予測通りになるでしょう。
つまり、事実をもとに推測していれば、予測というものもほぼ当たるということになります。
参考ですが、現在、不安定を露出する懸念があるのはノルウェーです。
おそらく、数ヵ月以内には不安定さを露出することになるでしょう。
今回、トルコの出だしで入ったのは、トルコは2018年に金利が急騰し、つぶれるのではないかと言われた国ということを例に、現在では金利が安いことがより国が発展するということを説明していきます。
そして、その金利というものは、金の動向に強く影響するということです。
上記のグラフはトルコの10年物金利になります。
2018年の5月くらいから急騰し、国家としてつぶれるのではないかと言われたのは記憶に新しいものです。
このときに世界的な機関であるIMF(国際通貨基金、一般的にはアメリカ財務省の代理人と呼ばれる)は、トルコ政府に対して「金利を引き下げる」ことを要求しました。
しかし、トルコの大統領であるエルドアンは、反対に中央銀行に対して「金利を引き上げろ」と要求したのです。
そして、IMFの意向をくんで、要求通りに金利を引き上げようとしたので更迭してしまいました。
金利を上げる? 下げる?
ここで質問です。
国家の財政破綻の危機に瀕していたトルコ、このときに
①金利を引き上げるのが正解?
それとも
②引き下げるのが正解?
なのかを考えてください。
金利を引き上げた場合
最初に①の金利を引き上げる根拠を説明していきます。
国家が倒産の危機に瀕している際には、IMFないしは経済学の教科書には、金利を引き上げるのが正解だと記されています。
この理由は、国家が倒産するときに人々は一斉にトルコから財産を引き上げます。
皆さんも同じことをするでしょう。
日本がつぶれるとわかっていたら、真っ先に円をドルやユーロ、人民元に交換するのと同じことです。
円がつぶれるのに、もしくは高い確率でつぶれるのに、そのまま持っていようとする人がいないのと同じことで、2018年にはトルコの倒産が懸念され、本当に危機一髪の状況までいきました。
当然、人々は先ほどの日本の例と一緒で、トルコの通貨であるリラを投げ売りし、外国の資産や金を買おうとしたのです。
では、それを防ぐのにはどうしたらいいのかということの正解に、IMFや経済学の教科書には金利を引き上げて、トルコリラの価値を魅力的にせよという教科書通りの勧告をトルコに対して行ったのです。
金利を引き下げた場合
②の解説に参ります。
トルコのエルドアン大統領はその勧告を一切の無視して、金利を反対に「下げろ」と言いました。
なんやら、アメリカの大統領と同じことを言っています。
この理由は簡単で、現代社会のように貧富の差が開いた社会では、資産を引き出したくてもそもそも財産がない人、トルコを脱出して海外での居住を求めたくても、その資金がない人が例外なく多いのです。
日本も同じですが、日本を捨てて海外で生活することを選択する人は多いでしょうが、ほんの一握りだろうと考えるのが一般的な認識と言えます。
日本で海外に居住先を余裕もって転居できるのは1割にも満たないでしょうし、トルコは5%もいないでしょう。
過半の人は、トルコ国内にとどまらなければいけない状況にあったのです。
金利を引き上げたらどうなった?
金利を引き上げ、しかも年利で20%という高金利であれば、どうなると思いますか?
100円のガムが来年には120円になり、その翌年は144円です。
参考までに、140円ではなく、年利20%であれば144円になります。
これに対してお給料は、毎年20%物価が上昇すれば、消費は完全に停滞します。
消費が停滞するということは、企業は儲からない、つまりお給料は20%も上がるわけがありません。
もし、お給料が5%しか上昇しなくて、物価が20%上昇すれば、生活は15%苦しくなるということです。
2018年当時、IMFや世界の主要機関、政治家はトルコに対して金利の引き上げを要求しました。
しかし、それに対してエルドアン大統領は、「金利を引き下げろ」とトルコ中央銀行に要求したのです。
答えは…
皆さんの選択はどちらでしたか?
この説明を読んで①だ、という人はなかなかいないのではないでしょうか。
ほとんどの人は②の金利を引き下げるのが正解と言うでしょう。
2018年当時、エルドアン大統領が正解だと叫びましたが、世間のコンセンサスは「トンデモない独裁者だ」と一斉に世界は非難しました。
日本でも、その論調が大勢を占めましたが、誰がどう見ても②が正解です。
覚えておいてください、これは、経済や金融の知識のある専門家が主導した答えであって、決して何もしらない人が①を支持したことではありません。
専門家と称する人が「エルドアンは独裁者でトンデモない奴だ」と批判したのです。
しかも、この問題の性質が悪いのは、経済学の教科書やIMFのマニュアルにも倒産の危機に陥った国への処方せんは、まず「金利を上げること」だと書いていることです。
考えてみると…
考えてもみてください、日本が倒産の危機に瀕したときに金利の高い、安いなんかで、その円の売却を思いとどまるのかということです。
金利が高かろうが、安かろうが、なくなってしまう円に全財産を傾けることなんて到底できない相談です。
そして、ほとんどの人が国に残る現状で金利を引き下げれば、儲からない企業が20%の金利よりも1%の金利を好むのは当然であり、その借金によって新たな設備投資をし、人を雇えばますます国は発展します。
金利を引き上げれば、企業の経営者は、返済できない見込みの借金などしませんし、トルコに残ってもいいことがないので、借金だけして海外逃亡すると考えるのが当然です。
結果は歴然なのに、いまだに世界は、国がピンチになれば金利を引き上げるのが常識です。
こんな常識がまかり通っているのですから、経済は考えれば考えるほどわけがわからなくて当たり前です。
いまだにIMFはトルコに対して金利を上げろと要求していますが、間違っているのはエルドアン大統領ではなくIMF、経済学の教科書、専門家なのです。
ここからの教訓
この理屈から派生したのがMMT理論です。
MMT理論とは、国家が借金を行っても倒産しないのが近現代の国家だから、好きなだけ借金して国家の財政を厚くしなさいという理屈になります。
日本の借金などは、GDPに対して世界最悪の借金なのですから、通常の理論では倒産するのです。
なぜなら、借金でクビが回らなくなって返済ができなくなるから。
でも、日本はバブル崩壊からまもなく25年が経過して多額な借金なのにつぶれません。
だから、国家は好きなだけ借金をしてもよいという理論がMMT理論なのです。
誰がそうみてもトンデモ理論なのですが、これを最近、世間を席捲しているのです。
では、具体的にみていきましょう。
国債とMMTの根拠
国家の借金とは国債です。
日本は、この国債の発行がGDPに対して世界最悪レベルで、純粋な借金額(国債発行残高)が一番多いのはアメリカです。
この国債を買う人がいることによって、借金が成立します。
リーマンショックや日本のバブル崩壊以降、世界の国家は借金の残高、つまり国債の発行残高を一斉に増やしました。
通常、借金でクビが回らないのであれば、貸し倒れのリスクが高まりますので、金利は急騰します。
でも、実際の金利は日欧などマイナス金利です。
アメリカも巨額な借金をしても、10年借りるとしても1.8%程度です。
古い世代の方などは10年の借金などは、5〜6%が当たり前の感覚ですので「安い」と思うのが通常の感覚です。
つまり、リーマンショック以降に巨額な借金を抱え込んでも世界の国家は、倒産リスクがないと言っているみたいなものですから、MMT理論はもっと借金しろと言っているのです。
富裕層が国の財政を支えている
だいたい、リーマンショック後に世界の国家の借金は以前より3倍になったといわれるのは普通です。
この場合、金利は急騰するはずなのに、むしろリーマンショック直後よりも下がっています。
日本などは、リーマンショック以前(2008年以前)がゼロ金利ですが、2015年に日銀がマイナス金利を導入しました。
当然、その間も東日本震災の復興もあり借金額も増えているのに、金利は逆にマイナスになってしまっています。
普通は、借金の金額が上昇すれば金利は上昇するのに下がっているのです。
だからMMT理論は、もっと借金をすべきだと言っているのです。
誰もが思うでしょうが、この場合、国債に投資している大口のお客さんが「やっぱり必要になったからお金返して」と言えば、簡単に国家は破綻します。
もちろん、その投資家に代替する投資家が現れれば、その限りではありませんが、通常はドタバタになります。
つまり、リーマンショックから世界景気が立ち直った理由は、国家が国民や外国の金持ちに借金を申し込んでも、それに応じられる富裕層がいたからです。
エリザベス・ウォーレンという者
今、アメリカの民主党の大統領候補選挙にエリザベス・ウォーレンという者が、富裕層に徴税強化を訴えていますが、そんなことをすれば、富裕層は国家にお金を貸すのをやめてしまいます。
彼が大統領に当選すれば、富裕層は国家にお金を貸すのをやめて、世界は大混乱になるでしょう。
国民受けはいい大統領候補ですが、そんなことをすれば、世界経済がどうなるかがわかっていないトンデモ人間です。
今の日本もそうですが、アメリカも世界も、富裕層優遇の政策をやめたくてもやめられない状況なのです。
トランプ大統領はこのことをよくわかっていますので、「相手はバイデンよりもウォーレンのほうがいい」と言っているのです。
バイデンには苦戦するでしょうが、ウォーレンは楽勝だと思っているはずです。
この状況を説明して何が言いたいか、なんとなくおわかりになりましたか?
要するに、世界の金持ちは、国家を助けるだけのお金を持っていますので、国家はいくらでも借金ができる状態なので、MMT理論は国家に借金を推奨するのです。
国家に借金をする余裕があるから、金利は安いままなのです。
それよりも「もっと借金をしろ」と、金利を見ていると催促していると観察できます。
金利を下げることが今の経済には好都合
実際にトルコのように金利を下げるとますます国は復活していき、アメリカなど大統領自らが「金利を引き下げろ」と要求しています。
そうすれば、もっとアメリカは発展するとトランプ大統領は考えています。
来年の選挙戦になれば、もっと加速するのは自明です。
つまり、自分の再選を盤石にするために、低金利で株価はもっと上昇することを考えれば、そうやって当たり前なのです。
特にトランプ大統領の苦戦や支持率が急降下すれば、もっと「金利を下げろ」と騒ぎ立てるのは自明です。
考えてみてください、日本やドイツはマイナス金利で、アメリカは2%です。
まだまだ引き下げても大丈夫とトランプ大統領は考えているでしょう。
トルコやアメリカの事例からもわかるように、経済発展のためには金利を下げることが今の経済にとっては好都合なのです。
金利が下がれば、金はどうなりますかということだけです。
トランプ大統領の支持層
トランプ大統領の岩盤支持層と言われているのは、白人の工場労働者たちです。
この人たちは移民の流入によって失業した移民排斥の筆頭の人たちです。
ゆえにトランプ大統領は、メキシコ国境に壁を作ると吠えています。
ところが、これは富裕層にとっては諸刃の剣です。
安い労働力を使い、彼らのほとんどは富裕層になり得たのですから、白人労働者よりもコストの安い人たちを使いたがるのは当然です。
このトランプ大統領のやっていることをポピュリズム政治と言いますが、民主主義の基本論理はお金を貸してくれることではなく、根本的には誰でも平等な一票になります。
富裕層と市民層ではどちらが人数が多いかという問いには、もちろん、市民層のほうが多いわけです。
自己矛盾を抱えたトランプ政権
民主主義で社会が成り立っている以上、いずれは富裕層への課税強化や迫害は起こることです。
そのときには、国家にお金を貸す人はいますか?
MMTのように国家がお金を借り放題になれば、いつかはアメリカもマイナス金利になります。
一日一日に金利は発生し、富裕層は日に日にお金持ちになっていきます。
そのときに国家はもっと予算を拡大できるでしょう。
その借金は市民層が税金で支払わなくてはいけません。
いつまでこの循環は続くのでしょうか、永遠ではありません。
忘れてはならないことは、トランプ政権は富裕層に支えられているのではなく、貧困、中流層に支えられている点です。
政権を維持しようとすれば、富裕層をいじめるほかないことに、富裕層が気づいていないことを忘れてはいけません。
ポピュリズムが世界のメインストリームに
トランプ大統領が中流、下流、貧困層に向いているのは確かです。
富裕層にとって不利な「金利を下げろ」と公言していることからも明らかです。
どこかで富裕層に対してトランプ大統領がそっぽを向くことが、再選されればあるということになります。
民主党の大統領になっても彼らはリベラルですから、貧富の拡大を無視することはできないでしょう。
一見、無限に続く低金利のように見えますが、ポピュリズムの足音によって、もう風前の灯になっていると感じませんか?
ポピュリズムは間違いなく世界のメインストリームになります。
なぜなら、世界は民主主義であり、その人数が一番多い中流、下流、貧困層はポピュリズムを支持するからです。
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