金の動きは去年とほぼ一緒!?
金の価格形成にて、アメリカ国債10年物利回りが2%以上と以下では、金のマーケットの景色が違うという点について解説をします。
下記は、2018年のドル建て金の動きを系列2(オレンジ)にとり、2019年の動きを系列1(青)、11月1日までにとったグラフです。
横軸はすべて2018年になっていますが、青い線は2019年と置き換えてください。
1年の流れを同じグラフに表現したものです。
このグラフによると、両年とも6月までは同じような動きになっています。
しかし、6月以降は全く違う動きです。
円建て金価格でも昨年とほぼ同じ!?
円建ての金も同様で、6月以降に2018年と2019年は全く違う動きになっています。
なお、縦軸は日本円になりますが、重さの単位がトロイオンスになっており、グラムの表記ではありません。
31.1035を除すれば、グラム表記になります。
上記の両グラフで、なぜ6月に動きが乖離(かいり)したかが疑問になります。
乖離の動きの理由はこれ!
下記はアメリカ国債10年物利回りの推移です。
見ての通り、2019年6月に長期金利が2%を割りそうになっています。
そして、7月から本格的に金利が下がり始めました。
この結果、金価格が急激に上昇したのです。
つまり、金の市場において、10年物国債の金利が2%を超えるか超えないかでは、マーケットの景色が違うことになります。
最近の金急落に関して
ここ数日の金の急落に関しては、企業の決算やアメリカの11月は年間を通じて一番景気のよい月になることなど、さまざまな説明をしました。
この11月の意味とは、年末商戦で工場がフル稼働になるので、景気がよいという意味になります。
その代わり、工場部門は12月になると稼働率を下げてきますので、年によっては12月には大きく景気が落ち込みます。
去年などはその典型で、12月にアメリカの景気が大きく減速し、株価の急落、金の急騰につながりました。
こうやって見ると、企業決算は今年の場合、7〜9月は中国の問題などであまりよい決算ではありませんが、10〜12月の年最大のセールス拡大期をひかえ、見通しは明るくなるのが通常です。
ゆえに、金利が上昇しているというのも理由の一つになると思います。
金利が2%に近づいたから金が急落した
現在、アメリカの長期金利は1.94%程度であり、2%を越えようとしているのが見て取れます。
長期金利が下降していることによって、金価格が暴発したのであれば、今度は11月になって金利が急騰しているわけです。
金利が2%に近づいているから、金が急落したという結論も出るわけです。
この予測は、金利が2%以下になったら金が急騰したのですから、金利が2%以上になる見込みがあれば、金はまだまだ急落することになります。
金が急騰した原因が本当に2%以下の金利であれば、2%以上になれば金は急下降する結果になるという予測は、極めてロジカルと言えるでしょう。
実際に金利は2%を超えるか?
では、金利が2%超える可能性があるのかということになります。
金利の変動要因を前回までに4つに規定しました。
① 物価
② 財政
③ 政策金利
④ 企業決算
これらをそれぞれ分析すれば、金利が上がるか下がるかはある程度見えてくるはずです。
物価と財政と政策金利から見る2%超えの可能性
①の物価は、FRBの指標であるPCEも一般的な物価指標であるCPI、そしてそのコアもたいだい1.4〜1.6で推移しており、現在の52週金利1.6程度の上限に来ており、むしろ金利はこれから下がる可能性が高いことになります。
②の財政に関しては、アメリカ議会は債務上限を定めており、これ以上の財政赤字拡大は見込めないので、金利が上がる見込みはないと言えるでしょう。
③の政策金利は、前にも触れましたが、FRBは52週金利と政策金利(FFレート)を近似させるといっていますので、12月のFOMCで金利を下げる選択肢もないですが、上げる選択肢もありません。
もっとも今の経済状況は、金利を下げると金利がよくなる状況なので、FRBに利上げの選択肢はなく、つまりは金利が上がる見込みがないのです。
企業決算から見る2%超えの可能性は?
残るは④企業決算ですが、この内容は総じてよいと言えます。
アメリカの企業決算が悪いわけでもないのに、「アメリカが景気後退している」と言う人が大勢いますが、「正気ですか?」と聞き返したいものです。
そして、上述しましたが、アメリカの企業、特に製造業は年末のクリスマス商戦に向けて工場をフル稼働します。
その場合、設備投資は雇用を積極的に行い、不足する資金を銀行や株式市場から調達します。
金利は短期間にまだ上がる側面がありますが、その上がった金利はすでに11月の中旬に入ろうとしている最中にこれ以上、上がる見込みがないということです。
この11月に出た資金需要が12月まで超えるケースも稀にありますが、一般的には11月の上旬の資金需要で打ち止めになります。
結論
金利の変動要因から分析すると、①~③はこれ以上金利が上がる可能性を示唆するような材料がなく、④が主に金利上昇の主因になっているとわかります。
つまり、12月の商戦に間に合わせるように設備投資や雇用を行って資金不足になっているので、企業が一斉に資金を集めている、すなわち資金需要が増えているから金利が上昇していると思われます。
しかし、この資金需要は11月の上旬がだいたいのピークになりますので、今後は下がる見込みが高いのです。
今わかっている事実からすれば、金利はこれ以上、上がる可能性は少ないと言えます。
そして、金の価格もそろそろ底を打つ可能性が高いと言うことができるのです。
そのほかのエビデンス
実は、金の価格は前年の動きを忠実に反映します。
今年は2019年になりますので、2018年の動きを忠実に反映するのです。
詳細は機会があったら書きますが、この背景は、経済指標が前年同月比で発表されることにあります。
去年の場合は11月8日が高値になり、11月13日に底を打って再び上昇しました。
11月8には株価も頭を打って、その後11月23日まで売られ続けています。
金の場合は、11月13日に底を打つ可能性が高いということです。
この場合、去年は株価が売られたことによって買われていますので、株価にも注意しなければいけないということです。
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