年末の資金需要
2020年の金相場は、年末に1500ドルアンダーだった価格が1580ドルまで急騰しました。
今回は、その解説を行ってまいります。
年末は、一般的には年越しの資金需要と言われるようなことが日本に限らず、アメリカでも起こります。
これはクリスマス、年末年始の休暇にかけて取引先への支払いや従業員の賃金は発生しますので、短期資金の需要が高まることによって金利が上昇するのが一般的になります。
つまり年末、特に日米の最終営業日にかけて、金利が急騰するのです。
何度も解説しておりますが、金利が急騰すれば金の価格は下がります。
そして年が明けたら、アメリカの場合はクリスマスが明けた1月2日から、金利は再び低下するのです。
年末からの金利と金
下記はアメリカ国債10年物利回りの1年間のものになります。
以前に説明した通り、12月から金利が上昇し始め、年明けないしはクリスマス明けの12月26日前後から急落しています。
日本も同様です。
これにドル建て金価格を合わせてみましょう。
青はドル建て金価格、黒い点線はアメリカ10年物国債利回りです。
年末から年明けにかけて見事に反相関の関係になっています。
2019年10月からの拡大を見ると、金利が上昇しても大して金価格は下がりませんが、金利が下落すると金価格は急騰しているのがおわかりになるでしょう。
金高騰の理由
ここにNY株を見てみましょう。
正月が明けてからイラン問題で株価が下がったと世間は騒いでいますが、アメリカ株は順調に上昇しています。
28,500ドルから28,800ドルという1%ほどの上昇です。
一方、金利は年末の1.9から1.8台へと6%台ということになります。
ゆえに金のマーケットは金利を見ながら動いていると結論づけることができます。
さらにアメリカの実効為替レート、年末までは以下のようになっています。
年末にかけて、アメリカの実効為替レートは急落しています。
金の価格は国力と金利と相関関係にあるとするならば、ドル安、金利安で金の価格が急騰したということなのです。
年末の記事に書いた通りの展開で、驚かれている方も多いと思います。
ゆえに年末から年始にかけて80ドル以上も急騰したのです。
ここから導き出される結論は、非常に簡単なことです。
今後の問題
金利の今後がどうなるのかを考えていきましょう。
まず当然、年末から年始にかけて急騰した金利は元の水準、つまり12月上旬から中旬にかけての水準に戻ります。
冒頭に挙げたグラフから、12月の下限が1.8だとすれば、現在の金利が1.79ですので、金利による金価格の急騰は終わったと結論づけることができます。
つまり、これ以上金の買いを保有しても意味がないのです。
ただし、金の価格変動はドルの変動と金利の変動になります。
上記の説明は、金利の年末年始の特殊要因は終了したという意味で、ほかの金利を動かす要因がある可能性はあります。
参考までに金利が動く要因は、
① 物価
② アメリカ財政
③ 政策金利
になります。
このうち①の物価が今後下がり続ける可能性がありますので、金の価格は急落した後に押し目買いになるであろうと考えることができます。
ドルの上下動から金価格を考える
金の価格変動要因の1つであるドルの上下動に関して考えていきましょう。
まず、上記に示したドルの実効為替レートは12月31日までのもので、1月2日からのものは明示されていません。
ただ、このドル実効為替レートの下落は、いつものトランプツイートの影響で、「ドルが高すぎる」とツイートしたことから始まっています。
一方、イラク米国大使館への襲撃から万が一の金ということもあり得ますが、今回の場合、アメリカの優位性や決済に一切不安がありませんので、ドルも上昇していると思われます。
双方の影響が互角だとは思いませんが、ドルはそれほど動いていないはずと想像できます。
ただし、金利が弱いので、おそらくドルは下落していると思われます。
結果として、ドルも弱いわけです。
今後の金価格の見通し
金利も物価が下がる見通しですので、金は年末年始のようには動かないだろうけど、価格はじんわりと上昇するというのが見通しになります。
その前に適正な水準、つまり年初に買われ過ぎですので、適正な値段まで売られてからの上昇になるということです。
今年は5月から急騰すると、去年の見通しに書きました。
安いところを見つけて現物の金を買うことを推奨します。
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