大事なのはファクト
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い世界経済が混乱に陥り、結果として株価が下がったといわれていますが、それは間違いと明言します。
きっかけはIMF(世界通貨基金)の世界経済見通し(WEO)であったと認識することが大切です。
今回はそのことに関して解説していきます。
コロナウイルス感染拡大に伴い、結果として株価が下がったと言われていますが、それは真っ赤なウソです。
なぜなら、中国を筆頭に日本や東南アジアにまで感染が広がっている最中には、株価はちっとも下がらなかったではないですか?
この事実を考えると、世界に感染が拡大したときに一気に急落したというのは本当かという点を考えることが大事です。
要するに、今回の株価の急落原因は、コロナウイルスの感染拡大ではなく、当コラムが言っていた「生産性の低下」が一番の問題です。
リヤドG20から株価急落がスタート
日本の天皇誕生日の週末に、サウジアラビアのリヤドでG20が開催されました。
そこでIMFの専務理事が「中国の年間の成長率が0.4ポイント下落する見込みだ」と発表したことこそが株価急落のスタートです。
日本では天皇誕生日の振り替え休日の月曜、米国株式夜間先物取引が急落したことから、今回の急落が始まりました。
つまり、感染拡大のニュースが原因ではなく、IMFが「成長が低下する」と発表した事実から今回の下げがスタートしたことが大事なのです。
スタートの理由がわかればゴールも読める
なぜ大事なのかといえば、下落の原因がわかれば、ゴールという結果がどうなるかが読めるからです。
仮に感染拡大が原因だとしたら、感染が縮小したときから株価は上昇し始めると推測できます。
ただ、工場や会社などは、職場復帰したらといってすぐに稼働率が100パーセントに戻るのかといえば、関連する部品や取引先の復帰もマチマチですから、生産性が回復するわけがありません。
特に中国では1月の中旬から実質的な稼働停止状態なのですから、2月末までと考えると1ヵ月半も休業していました。
しかも、いまだに感染の疑いのある者もいると容易に想像できる状態で、生産が復帰できるわけがありません。
これを事実としてIMFの発表から下落が始まったとすれば、ゴールは生産性が回復してからということになります。
つまり、世界のサプライチェーンが復活したときから株価が回復するのです。
世界のサプライチェーン
自動車などは、中国で作っている部品が多数あります。
代替工場で生産できる可能性もありますが、実質1ヵ月半も稼働停止状態ということは、完成品メーカーが1ヵ月半収入がありません。
だから当然メーカーとしてはほかの国での生産を求めるけれど、今回の悲劇は、アジア各地で蔓延してしまい、アジアでも生産できなかった点です。
要するに、ほぼ完成品メーカーは稼働停止状態なのです。
典型例がアップルで、中国に完成品工場がありますが、生産が不可能と言っています。
加えて、世界のスマホがメーカーが違えど、日本製とアップル製で外見に大きな違いがあるかといえば、大きくは違いません。
だから、パナソニックやシャープなどの日系メーカーも生産できていない可能性が高いのです。
この影響と回復への道のり
買い物やSNSなどを行えるなど、高い生産性を誇るスマホが生産できないということは、世界経済にどれほどの影響が出るのでしょうか?
もちろん、自動車やスマホは既存のものでなんとかカバーすることもできますが、新たな需要もあることも確かです。
そこにおいてどれだけの経済的な損失があるか図り得ないものがあります。
そうやって考えていくと、当コラムでは4月には「コロナウイルス?そんなものあったけ?」というくらいになっていると予測していますが、実際の生産現場はその1ヵ月半の収入減収を取り戻すためには3ヵ月はかかる、つまり5月から7月くらいまでかかるということになります。
こうやって考えると、感染拡大が原因なんてウソっぱちというのはおわかりになるでしょう。
経済指標と先行き
まだ2月ですから、実際問題として2020年に入ってからの2月の統計指標は出ていません。
有名なものに、「フィラデルフィア連銀指数」や「メトロポリタン指数」などが2月のものが中旬くらいに発表されていますが、2月中旬にアメリカにて感染者が確認され始めましたが、悶絶するくらいアメリカ経済の絶好調を示すものとなっています。
ですが、22日のIMFの「確実に生産性が低下する」という事実から、米国株式夜間先物取引が反応して急落しました。
今後アメリカの指標でいえば、「ISM製造業指数」が3月3日に発表されますが、おそらく劇的によい数字しか出ないでしょう。
そのほか、マークイット社のPMIや中国の製造業指数なども発表されます。
中国の数字を除けば、おそらくすべてよいでしょう。
この数字を見てマーケット、特に株価は戻しますが、3月も中旬に入ってくると悪い統計のオンパレードになります。
つまり、下げの本番は3月の中旬くらいからと考えることができます。
日本の統計はたいていの場合、1ヵ月半から2ヵ月遅れになりますが、主なものはほとんど50日後くらいから発表されてきますので、3月の下旬から悪い数字のオンパレードになります。
マーケットは事実を確認しなければ動かない
つまり、金のマーケットも含めてフライングして下げるということはあまりなく、今回の場合は生産性の低下を統計によって証明しない限り、下げ始めなかっただけなのです。
逆に感染者数が減ればマーケットが戻るかといえば戻らず、生産性が回復してからマーケットは戻るという流れになります。
特に金の場合、感染者が減ってから買うともっと落ちるのに早く買ってしまうリスクがあり、きちんと生産性が回復するのを待ってから買っても遅くはないということになります。
マーケットは事実を確認しなければ動かないということは本当に大事なことです。
参考
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2020/01/20/weo-update-january2020
引用元:国際通貨基金
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/02/9794348e8f73cc3a.html
引用元:日本貿易振興機構
中国の成長率0.4ポイント低下の意味
中国の成長が0.4ポイント低下をすると、以下の記事でIMFは述べています。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/02/9794348e8f73cc3a.html
引用元:日本貿易振興機構
この0.4ポイントという数字はどういう数字なのかを考えていきましょう。
まず、中国は日本の2.7倍の経済規模があり、日本のGDPを500兆円と仮定すると、中国は1350兆円の経済規模です。
その1%が13兆円、そして0.4ですから5.2兆円を「年間で失う」といっているのです。
日本の中国人のインバウンド需要が年間1.2兆円ですから、その規模の大きさに驚かれる方は多いでしょう。
問題は中国一国に限らない
東南アジア各国は中国から輸入し、輸出はアメリカという貿易構造の国がほとんどになります。
今回、中国からの輸入がストップしているのですから、アメリカへの輸出もできないということに気づいた方は正解です。
つまりアジア各国、特に中国経済への依存の高い韓国などで変なことになるのはもう自明なのです。
となると、IMFは今年の世界成長予測を3.3としていますが、これが1%以上減る可能性が高いことになります。
中国は世界の工場であり、中国の輸出が止まると全世界の工場が止まっているのです。
新型コロナは中国没落の象徴
この事態で株価は戻っても売り、ということがおわかりになると思います。
そして、こういった衛生面で全く信用がない中国に誰が工場を置くのでしょうか?
おそらく、この事件をきっかけに中国に新規工場を作る企業や投資家はいなくなってくる可能性が高いのです。
中国に工場を作るメリットは、人件費の安さと労働者が熱心に働くことが挙げられます。
しかし、すでに中国の賃金は毎年7%増えているのに対し、企業の利益は2〜3%しか伸びていません。
これではいくら中国の労働者が働き者であっても、コストに見合いません。
このようなリスク、誰も取りたくはないので、中国の成長の終焉と見ています。
栄枯必衰の情
中国の成長に頼り切っていた東南アジアやユーロ、日本もきちんと戦略を見直さなければ、一緒に没落していくことになるでしょう。
要するに21世紀の初頭から中国一強という状態でしたが、それももう終わりつつあるということです。
「栄枯必衰の情」と『平家物語』にありますが、その通りになっているのです。
中国の没落が確定的になれば、中国は金を買い増しします。
歴史の過渡期には不安が取り巻きますので、おそらく金は高くなるでしょう。
これは短期的な見方ではなく、長期的に見た話であり、目先の話をしているのではありません。
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