改三分定銀の特徴
改三分定銀は、一分銀の不足をカバーするためにメキシコ8レアル銀貨の表面に「3分」と刻印することで3分の価値を持つ（3枚で小判一両）銀貨としたものです。
当時時メキシコ8レアル銀貨はメキシコドルとも呼ばれるほどに当時世界の基軸通貨として広く流通していました。
しかし日本国内では受け入れられず幕府の意図したレートで両替されませんでした。
その結果わずか半年で生産中止となりました。
おもて面
極印 「改三分定」
※極印には「大字」および「小字」がある。現存数が多いのは「小字」
※改三分定銀は1860年生産終了。確認されているメキシコ8レアル銀貨年度は1859年まで。
うら面
メキシコ8レアル銀貨裏面と共通
※裏面には手を加えず
改三分定銀のサイズと重さ
サイズ
直径 38.5ミリの円形
重さ
26.8グラム 前後
改三分定銀の銀の含有量
銀の含有率は90%前後
※1786年スペイン（メキシコはスペイン植民地）側通達の記録によると89.58%
改三分定銀の歴史的背景
改三分定銀は、日本側にとって不平等な交換レートで利ザヤを稼ぎたいハリスら外国人たちの強引な交渉によって誕生しました。
利益を得られない安政二朱銀の発行を停止させることは成功したものの、手に入れたい一分銀の増産がままならないことにいら立ったハリスの提案で誕生したのが改三分定銀なのです。
当時の基軸通貨だったメキシコ8レアル銀貨に「三分」の極印を打って3分銀貨として利用する、というハリスの提案を幕府は了承しました。
しかしそれまで四進法の貨幣制度になじんできた一般社会に「3分」という概念の銀貨はなかなか浸透しませんでした。
また外国貨幣はその純度によってのみ評価されたため（双替）、幕府の意図した三分の評価で両替されることはなくせいぜい「2分」程度でした。
半年足らずで生産終了となりました。
諸外国との貨幣レート問題が完全な収束を見るのは時代が明治に移ってからです。
1871年明治政府によって交付された「新貨条例」は、「1円＝金1.5グラム＝銀26.957グラム（メキシコドルつまり改三分定銀と同じ銀含有量）」と決定したものです。
このルールに沿って作られた1円銀貨を外国との取引に使う貿易銀とすることで、通貨レートの不平等から完全に脱却しました。
改三分定銀の買取相場の目安
過去10年間の改三分定銀の取引実績を検証してみました！
大手古銭買取店5社の平均取引価格は「40～80万」となっています。
半年足らずの間に流通した「改三分定」のほとんどはその後回収されて、明治政府の新貨製造に使われました。
歴史的価値が高く貴重な改三分定は高額査定が期待できるレアアイテムです。
大判小判マニアなら知っておこう！「25 世界をかけめぐったメキシコ8レアル銀貨」
世界初の基軸通貨！メキシコ8レアル銀貨
先にご紹介してきたように、「改三分定銀」はメキシコ8リアル銀貨をベースに作られた銀貨です。
外圧があったにせよ自国通貨として採用するほどの信用力をメキシコ8リアル銀貨が持っていた理由は何だったのでしょうか？
実は歴史上はじめて誕生した国際通貨・基軸通貨がメキシコ8レアル銀貨だったからです。
当時メキシコ8リアル銀貨は膨大な流通量と品質(純度)に対する信頼から、ほぼ全世界で流通し利用されていました。
メキシコドルとも呼ばれ、当時「トレードダラー」「貿易銀」として、最も認知度と信用力のある通貨だったのです。
ちょうど現在のアメリカドルをイメージするとわかりやすいでしょう。
なぜメキシコ8レアル銀貨が国際的に通用したのか？
歴史上はじめて誕生した基軸通貨であるメキシコ8レアル銀貨。
どのようなプロセスを経てメキシコ8リアル銀貨は世界の基軸通貨たるポジションに上り詰めたのでしょうか？
発端はコロンブスの新大陸発見（1492年）後、スペインによる中南米の大銀山の開発でした。
18世紀までは全世界の銀の産出量の60～70%を占めていたというデータがあります。
スペインはメキシコはじめ銀山保有国にいくつかの造幣局を開設し、多くの銀貨を生産しました。
また銀貨の品質については、スターリングシルバー以上の90%以上の純度を誇り、1786年の品位引き下げ後もほぼ90%の純度をキープしていました。
諸外国からは、神聖ローマ帝国時代からヨーロッパで流通してきた高額銀貨「ターラー銀貨」と同等のクオリティを持つ、とみなされて大きな信用力を獲得していました。
結果として中南米で産出される銀の生産量の大半が銀貨として流通する結果となり、メキシコ8リアル銀貨は欧米のみならず日本や中国アジア各国まで広く使われるようになりました。
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