村上 隆のアートスタイル
表現形式
- 絵画
- 彫刻(造形)
- 版画
表現様式
- スーパーフラット
- ネオポップ
- コンセプチュアル・アート
村上 隆作品の特徴と魅力・評価ポイント
特徴と魅力
村上隆といえば、「オタク文化」とアートの融合を実現したアーティスト、として広く知られています。
「DOB君」「たんたん坊 TAN TAN BO」「ゲロタン」
ほか、村上が創造した(あるいは再解釈した)キャラクターは、様々なシーンに登場しました。
特に世界中で争奪戦となった、
- 2003年からスタートしたルイヴィトンとのコラボレーション
- 2018年のUNIQLOとの「ドラえもん」Tシャツやぬいぐるみ
手に入れた方も多いのではないでしょうか。
日本人にとっては日常的になじみのあるアニメや漫画はサブカルチャーと呼ばれアートの王道とはみなされませんでした。
村上隆はこれらのムーブメントを日本の芸術のひとつの形としてとらえ、アート作品に取り入れたのです。
現在は同様のアプローチを行うアーティストは多くいますが、村上隆が取り組みはじめた時期のアート界にとって非常に画期的なことでした。
この村上独特の表現方法「スーパーフラットセオリー」は世界標準の美術様式として認められる、現代美術の1カテゴリを確立しています。
また村上隆アートの特色は、常に海外マーケットを意識した作品作りを行う点にもあります。
このような「売れるアート」「商品になるアート」として成立する村上隆の作品は、彼の「ビジネスとして成り立つアートであるべき」というアートに対する向き合い方がありました。
みずからの言葉通りに2001年から「有限会社カイカイキキ Kaikai Kiki 」を運営し多くのスタッフを抱える経営者でもあります。
そしてアートに限らず、アーティストマネージメント、ギャラリーやカフェの運営、出版、など多方面にビジネスを展開。
東京の中野ブロードウェイには、カイカイキキが経営するギャラリー「ヒダリ ジンガロ Hidari Zingaro」「バー ジンガロ(Bar Zingaro)」があります。
評価ポイント
村上隆アートを語るうえで、最も大きな功績は日本美術・文化の伝統をオタク文化に取り込んだ「スーパーフラット」です。
スーパーフラットの概念の出発点は、
- 日本美術の伝統的な遠近法や陰影を使わず平面での表現
- 現代の日本発サブカルチャー「マンガ」「アニメ」「ゲーム」の二次元表現
との融合でした。
そして、村上隆が打ち出したこのスーパーフラットという理念は、
「表現物の平等性」
ファインアート(絵画や彫刻)もサブカルチャーもコマーシャルアートも価値は同じ
- 「コンピュータから生まれるアート」
- フラットなディスプレイ画面からのアートの創造
にまで拡大されます。
一見アニメや漫画の延長に映る作品が、他のアーティスト一線を画す背景には、日本文化への深い理解とコンピュータがあります。
20代のころは日本画家を志した村上にとって、浮世絵や琳派などの日本画と現代のマンガ・アニメは、同様に「線で描写する」日本伝統の美の表現でした。
現在オークションでは億単位の落札は当たり前、現代美術のスタートして君臨する村上隆ですが、その奥底には日本が培ってきた和の美しさへの憧憬がありました。
村上隆をよく知らない人から見れば、子供だましとも取られてしまう作品すべてににじみ出ているのです。
村上 隆のプロフィール
幼少期
1962年東京に生まれる。
モノづくりの好きな父親、のちに日本画家となる弟「村上裕二」ともに自然とアートの世界を志すようになる。
またアニメをこよなく愛し「タイムボカン」「未来少年コナン」「ヤッターマン」「ルパン三世 カリオストロの城」を好きだったアニメとして挙げている。
特に「さよなら銀河鉄道999」に心酔。気に入った画面を自分のスタイルで解釈し再表現したいと強く願う。
青年期・学生時代
1986年東京藝術大学美術学部日本画科卒業
1993年東京藝術大学大学院美術研究科にて同大学院の日本画博士号取得第1号となる。
しかし大学院の修了制作が次席だったこと、尊敬できる現代芸術家との出会いから現代アートに転向している。
創作初期
1991年現代アート転向後の最初の個展「TAKASHI, TAMIYA」を開催。
TAMIYAとは現在の「株式会社タミヤ(世界有数のプラモデルメーカー)の意。
ふたつの星と同社が販売した製品の米兵のシルエットを組み合わせたグラフィックなどを出品。
また同年動物愛護・環境保護の政治色の強い「ランドセル・プロジェクト」を発表。ワシントン条約で取引規制されたクロコダイルやカバの皮革を白い壁に並べたインスタレーションだった。
1994年村上隆のアイコンとなる「DOB君」考案。和製ミッキーマウスの失敗作などと日本のアート界では不評だったが、アメリカに可能性を見出す。「ジャパニメーション」はアートの世界基準になると確信していたそう。
創作中期
1996年「有限会社 Kaikai Kiki(2001年~)」の前身となる工房「ヒロポン・ファクトリー」を創設。現在も頻繁に登場する「TAN TAN BO」「フラワー」などのキャラクターの絵画やフィギュア作品を量産。のちにサザビーズで1516万ドルの高値を付ける「マイロンサムカウボーイ」も1998年作。
早くから海外市場を意識し、とくにアメリカ市場を意識したプロモーション活動を行う。
1998年カリフォルニア大学ロサンゼルス校美術建築学部客員教授に就任。
2001年イッセイミヤケとのコラボレーションにより「OVAL オーバルくん」Tシャツなどを販売。この「オーバル=目玉」が無限増殖するパターンはきゃりーぱみゅぱみゅの2011年「PONPONPON」MVとの類似性を指摘する声もあった。しかし村上自身が否定。
2001年「スーパーフラット三部作」と題される大規模個展が世界各地でスタート。
「SUPERFLAT」を皮切りとして、2002年「Coloriage (ぬりえの意)」、2005年「Little Boy」を開催。
「Little Boy」は「爆発する日本のサブカルチャー・アート」として、全米批評家連盟によるベスト・キュレーション賞を受賞
2003年からルイ・ヴィトンとのコラボレーションスタート。「モノグラム・マルチカラー」「ルイ・ヴィトン ミーツ ネオ・ジャポニズム」などがある
この頃から中国を中心としたアジアの富裕層の注目を集めるようになる。
創作後期・現在
2008年「マイロンサムカウボーイ」がサザビーズで1516万ドルで落札される。当時の現代アート作品のアジア最高落札額をマーク。
(現在は「曽梵志(ゾン・ファンジー)」作品の落札額2330万ドルがトップ)
2013年映画「めめめのくらげ」で監督デビュー
2015年「五百羅漢図展」開催。国内では14年ぶりとなる大規模個展
2017年「N’s YARD」オープン。自作品や自コレクションを展示
2018年「Kaikai Kiki Gallery」で奈良美智の取り扱いスタート
村上 隆の代表作
「五百羅漢図」
世界の絵画史上においても最大級の全長100メートルに及ぶ巨大絵画。
「五百羅漢」とは釈迦の500人の弟子。
古代中国から伝わる四神「青竜」「白虎」「朱雀」「玄武」のタイトルの4面で構成される。
「フラワーボール」
初期から現在に至るまで「お花」モチーフの作品多数。本作も初期の代表作。同モチーフは「MOMA」とのコラボレーション「フラワークッション」にも採用。
「Eye Love SUPERFLAT」
ルイヴィトンのモノグラムを再解釈。シルクスクリーンなどマルチプル作品多数。
「3-Meter Girl」
その名のとおり最大3メートルの巨大フィギュア。
日本のメイドカフェにヒントを得た美少女フィギュアで、「Miss Ko2」同様に世界中にファンを持つ「海洋堂」に製作依頼
「宇宙の産声」
金箔でおおわれた高さ4.5メートルもの大型彫刻作品
村上 隆の市場価格・オークション落札情報
2008年5月14日 サザビーズ/ニューヨーク
「MY LONESOME COWBOY」
15,161,000米ドル(約16億円)
2019年11月23日 クリスティーズ/香港
「he Simple Things」
21,725,000香港ドル(約3億円)
「Wow, Kaikai Kiki」
19,325,000香港ドル(約2.6億円)
村上 隆の作品と出会える場所
Kaikai Kiki、村上隆が運営するギャラリーで常設展示。
- Kaikai Kiki Gallery/東京
- N’s YARD/栃木
村上隆作品を所蔵する貴重な美術館
- COMICO ART MUSEUM YUFUIN/大分
村上 隆のその他トピック
アート界のみならず、多方面に話題を提供する村上隆。
2019年に入ってからも意欲的に国内外での展覧会は目白押し!
国内ではドラえもんのスーパーフラット的解釈として「スーパーフラットドラえもん」
海外では、香港で「MURAKAMI vs MURAKAMI」が行われました。
また、最年少18歳でグラミー賞主要4部門を制覇したビリー・アイリッシュの「you should see me in a crown」のMVを手掛けたこともニュースとなりました。
またオークションのヒートアップぶりにも注目を集め、今後も世界のアート界の最重要アーティストであり続けることでしょう!
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