米大統領選挙はトランプ敗北必至の情勢

2020年11月3日、共和党の現職トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領の間で争われるアメリカ大統領選挙が行われます。

今回は現状における上記大統領選挙も踏まえた分析と金の状況の解説です。

劣勢に立たされるトランプ

2020年6月20日、オクラホマ州タルサで集会を行うトランプ大統領

選挙には、行われてみなければわからない部分がありますが、現下の情勢では現職のトランプ大統領が非常に劣勢に立たされています。

2016年の大統領選では信じられない逆転勝利を収めたので「まだどうなるかわからない」と言う訳知り顔の評論家もいらっしゃいますが、現時点での10ポイント差の逆転は非常に難しいと言えます。

前回の選挙においては接戦州が多く存在しましたが、今回は接戦の州が皆無に等しいからです。

すなわち、民主党のバイデン候補が取ると思われた州をトランプ大統領が取るというような予想外の勝利は見込まれません。

このまま選挙戦が進んでいけば、おそらくバイデン候補の勝利になるでしょう。

トランプ勝利のためには?

2020年7月15日、コロナ禍のニューヨークのワシントンスクエアパークで抗議集会をする人々

トランプ大統領が逆転勝利をするためには、経済が新型コロナを完全に打ち消し、再興させられるかどうかにかかっています。

バイデン支持層とは非白人と白人の大学卒以上であり、このうち新型コロナの影響で職を失った人たちの圧倒的な支持を得ています。

この人たちが寝返るとすれば、経済の再生以外あり得ません。

しかし、現時点では過去のデータにより秋からの第二波の可能性が高いと思われ、経済の再生は非常に難しいと言わざるを得ません。

この動向に変化がない限り、トランプ大統領の敗退は決定的のように見受けられます。

共和党と民主党の差異

民主党の象徴であるロバと共和党の象徴であるゾウ

保守的な共和党に対し、民主党はリベラルという言葉に象徴されるように新進気鋭というイメージです。

その代表的な政策は、今地球上で最も問題になっている環境政策になります。

この問題は、ブッシュ・ジュニアと大統領選挙を争ったアル・ゴア元副大統領によって提起されました。

その流れをオバマ前大統領も引き継ぎ、ほとんど失敗に終わってはいますがグリーンニューディールという政策を行っています。

貿易面では、共和党は代々保護貿易によってアメリカを繁栄させてきた自負がありますが、民主党は自由貿易を支持しています。

金に関してはこの自由貿易・保護主義にかかわらず、この問題が非常に重要になってきます。

バイデンが政権を取ったとしても…

1981年から1989年1月まで在任した合衆国第40代大統領である共和党のロナルド・レーガン

現在、アメリカと中国との間に生じている貿易戦争がバイデン大統領になれば収まると見ている方がいますが、バイデン大統領になってもトランプ大統領の政策を引き継ぐことになるでしょう。

建国当初、ヨーロッパ各国のほとんどが自由貿易だったのに対して、アメリカは典型的な保護貿易主義国でした。

その結果がアメリカの現在の繁栄につながっており、国の礎を築いた政策を民主党も無碍にはできません。

1980年代に共和党のレーガン政権下で勃発した日米貿易摩擦は、後継者であるパパ・ブッシュ政権を経て、民主党のクリントン政権でも継続されました。

アメリカが標榜する公正と自由は、アメリカから見た公正と自由であり、外国から見ればちっとも自由でも公正でもないのです。

現在の中国との摩擦にしても、一方的にアメリカが要求を押しつけている構図になります。

クリントン政権末期にITバブル起こり、ITの伸長が20年経過した今でも続いているのは、結局こうした摩擦の類がアメリカをさらに成長させている証拠です。

民主党がこれをかなぐり捨てる可能性はほとんどないでしょう。

リベラルよりも自国の利益を押し通す国

1993年から2001年1月まで在任した合衆国第42代大統領である民主党のビル・クリントン

かつてクリントン政権が日本に何をしたかといえば、当時、世界シェアの70%近くを握っていた半導体製造事業の20%を韓国と中国に資本分割せよという要求でした。

その結果、日本の半導体製造のシェアが現在では20%以下に沈み込み、韓国や中国のシェアが70%まで行ったのです。

その間、アメリカは自国の半導体製造を保護したことによってシェアを死守し、インテルのような巨大企業が誕生しました。

このようにアメリカは、自国の発展のためには我がままを平気で要求する国と見て取れます。

今回も世界的な不景気の煽りを受けて、ますます保護貿易に拍車がかかってくることでしょう。

民主党政権だからと言って、単純にリベラルになるわけではありません。

バイデン大統領が誕生したら

ジョー・バイデンは合衆国46代大統領になれるか!?

バイデン候補が2021年から大統領になるとして、金の市場にどのような影響が起こるか解説していきます。

まず、問題は貿易です。

貿易量が中国との摩擦の激化によって減ります。

しかし、アメリカの貿易依存度は10%以下ですので、影響はほとんどありません。

日本も10〜15%程度なのでほとんど影響はありませんが、例によってメディアは「大変だ」と騒ぎたてるでしょう。

その次にバイデン大統領がやることは明白です。

かつてのクリントン大統領が日本にそうしたように、中国のITを潰しにかかるでしょう。

そして、その間にアメリカのITや環境ビジネスを立ち上げるのです。

つまり、貿易という軽微な部分には目をつぶり、新たな環境ビジネスの展望を描き、一方では既存の新興ビジネスの支援を行うというのがバイデン大統領の眼目と見ています。

過去の金価格の変遷とバイデン時代の見通し

参考までに以下のグラフは金の過去の値段になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

クリントン政権下の2000年までは金の価格が下がり続け、ブッシュ・ジュニア時代の9.11テロやITバブル崩壊によって金の価格が上昇しました。

オバマ前大統領はリーマンショック勃発後の2009年ですので、貨幣の発行量が増えて金価格が上昇するのは仕方がないにしても、2期目の2013年からは下がっています。

トランプ政権下では、やはり金の価格は上昇する傾向にありますし、コロナ禍によってさらに上昇に拍車をかけた状態にあります。

一概には言えませんが、バイデン大統領が誕生するとなると下げ傾向が強くなる可能性が高いと考えています。

理由はアメリカの国力が上がり、他国は貿易依存率が軒並み20%以上なのに、日本やアメリカは10%程度だからです。

つまり、貿易の依存が高い国ほど没落し、依存率の低い国は成長がよくなっていくということです。

これは、金の変動要因の第3番目に当たります。

バイデン政権になったら金利は?

ゼロ金利を仮定して経営を行うテスラのような企業は、いつおかしくなっても不思議ではない

日本は新型コロナ禍前には、プライマリーバランスの2025年までの黒字化を目標としていました。

これは2025年くらいまでに金利を上げるという意味です。

同様に、金融庁の老後資金2000万円とは、金利が5%つけば年間100万円の収入と150万円の年金でほぼ大丈夫という試算に基づいたものと思われます。

つまり、日本政府は金利の引き上げを念頭に政策を進めていることがわかるのです。

現在、信用のできる国家はほとんどがゼロないしはマイナス金利ですが、いつまでもこんな状態が続くわけがありません。

要は、金価格の2番目の変動要因である金利が上がることから、金価格が下げに転じる可能性があると言いたいのです。

パラジウムや白金は?

日に日に近づく決戦の日、米大統領選挙は11月3日

まだ不明な部分は多いですが、バイデン大統領が誕生した場合、おそらく金の動きは劇的に変化します。

また、環境の民主党ですので環境需要、例えばパラジウムなどの白物系貴金属の値上がりも期待できるでしょう。

ただし白金(プラチナ)に関しては、リサイクルが進んでいるのでニュートラルとしておきます。

本日はこんなところです。