【2020年9月1日】金価格が高値から何故下がり出してきたのか?

今回は金が多少高値から下がってきていることを解説していきます。

これが『なぜか』をきちんと理解することも金の値動きを読み解く上で重要なことです。

ここ最近の金の値動き

以下のグラフはドル建て金価格の日足です。

参照元:TRADING ECONOMICS

これが大天井か否かという判断はまだできませんが、ドル建て金の動きは高値を出したあと、事実として下がってきています。

円建て金の場合は、ドル建てに遅れる傾向がありますので、おそらく下がってくることでしょう。

ここで考えたいのは金を動かす3つの要因、

【1】ドルの上下動
【2】金利の上下動
【3】GDP

がどうなっているかです。

これを見ておけば、金が現在下がっているのは妥当なこととおわかりいただけると思います。

【1】ドルの動き

以下のグラフはドルインデックスの日足です。

参照元:TRADING ECONOMICS

金が高値を出し続けたのはドルが値下がりしたからと何度も言いましたが、ちょうど金が高値2075ドルを出した時にドルが安値を更新しています。

そのドルが反転上昇し始めると金は反対に下がり始めました。

ゆえにドルの動きを見ておくことは、金価格にとって非常な重要なことがわかります。

上記の日足ではドルが上昇しているのがわかりにくいので、ドルインデックスの4時間足を下記に添付します。

参照元:TRADING ECONOMICS

ドル安が一巡し、下値を切り上げているのがよくわかるでしょう。

今後のドルの見通しとして、以前のコラムでは上昇するか横ばいしかなく、売る材料はあまりないと記しました。

その好材料が、7月末で期限切れを迎えた新型コロナ給付金が再び交付されるとドルは上昇します。

根拠としてユーロの実効為替レートの日足を添付します。

ユーロは8月20日頃にユーロ復興基金の創設を決め、金融緩和を実施しました。

この結果を受けてユーロは急騰しています。

つまり金融緩和を行えば、その国の通貨は急騰することになります。

3月以前にユーロが急騰しているのは世界的にコロナ禍に対して金融緩和を行い、それにユーロも入っていたからです。

アメリカの場合は7月31日にコロナ給付金が切れ、そこからドルが急落しています。

コロナ給付金が決定するのは、早くても議会の夏休みが明ける9月10日以降。

つまり、ドルと金価格の関係が今まで通り動くとすれば、金の急落は9月10日以降になる可能性が高いです。

【2】アメリカの金利の動き

以下のグラフはアメリカ国債10年物利回りの推移です。

参照元:TRADING ECONOMICS

アメリカ国債10年物利回りは、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が3月に緊急利下げをした結果、下がっています。

そこから金の急騰が始まったわけです。

ところが、ちょうど金が2075ドルの高値を出した時から金利は上昇し始めています。

ゆえに金が2075ドルの高値から1920ドル近辺(8月26日現在)まで下がっているのは妥当なことになります。

【3】GDP

すべての統計はGDPを類推するために発表されています。

ここ最近の景気に関する統計、超先行指標と言われるメトロポリタンおよびフィラデルフィア消費者信頼感指数は以下の通りです。

以下のグラフがNY連銀指数。

参照元:TRADING ECONOMICS

以下のグラフがフィラデルフィア連銀指数になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

上記のように景況感が下がっています。

つまり、アメリカの景気は低迷傾向にあり、結果としてGDPは下がります。

これらの指標が発表されたらGDPは低下することになりますので、金の価格は下がります。

【1】〜【3】を踏まえれば…

金が高値2075ドルから下がってくるのは当然の結果であり、同時に金の価格を動かす要因が【1】ドル、【2】金利、【3】GDPであることが改めて証明されています。

今回の場合は【1】〜【3】まで皆金の価格は下方向を示唆しており、その結果が高値から150ドル下がったことになります。

株価が依然高いままなのはなぜか?

ところが、一方で株価は以下のNYダウ日足の通り高いままです。

参照元:TRADING ECONOMICS

金は高値から下がっているのに株価は逆に新値を更新している、これはおかしいという方も多いでしょう。

この理由はアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の資産、以下のバランスシートの拡大によって説明がつきます。

参照元:TRADING ECONOMICS

GDPが去年から約10%減少、前期からは32%減少しているので、前回紹介した恒等式、

マネーストック×流通速度=生産量×価格

によれば、左側のマネーストックを増やせば自然とGDPは回復することになります。

マネーストックとは、上記のFRBのバランスシートのことですから、これを増やしたのです。

ところが前年でも、前期比でもFRBは40%以上緩和を行ってしまっているので、株価は去年よりも10%安でもなく、そして前期比でも30%安でもありません。

つまり、金融緩和の影響は株価に如実に現れているわけで、金の価格は影響されていません。

この記事のまとめ

今回の記事では、【1】ドル、【2】金利、【3】GDPという金価格の変動要因のいずれもが、金が下がることを示唆。

一方で株価がまだ高いままなのは、FRBのバランスシートで説明がつくということ。

金が本格的に下げるのは、アメリカのコロナ給付金の再開が決定する9月10日以降!

そういった記事でございました。

金の専門家と称する人たちは「金が高いの金融緩和を行っているからだ」と主張し続けていますが、金融緩和で金が高いことは現時点では一切事実として認められません。

こうしたエセ専門家たちとは関わりにならないことがトレーダーとしての成長、引いては人間として生きる上での糧となるでしょう。


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