今回は、現況の金相場が煮詰まっていることの根拠を例証を示しながら検証し、今後の展開について説明していきます。
金相場が煮詰まっている理由
以下のチャートは、いつものようにドル建て金価格の日足に単純移動平均10(白)、30(黄色)を加えたものです。
白と黄色の線がデッドクロスをしていますが、この黄色がアップトレンドのうちは、ダマしになる可能性が高いことはいつもの説明の通りです。
しかし9月に入り、この黄色の線がアップトレンドから徐々に横向きに変化していることが見て取れます。
この状態ではなんとも言えませんが、こういう場合はチャートのスパンを広げてみたり縮小したりすることで、案外答えは見えてくるものです。
それではドル建て金4時間足に縮小してみましょう。
4時間足はデッドクロスをし、しかもその線の方向性は双方ともに下向きになっているのです。
この形では戻りそうになるとも感じますが、現時点では売りになっているように見えます。
このように1種類のチャートしか見ないという癖をやめ、判断が微妙なときにはほかの足も見ることも大事です。
このほか1時間や週足なども見て、総合的に判断しましょう。
なぜ金が売りっぽくなっているのか?
ここからファンダメンタルズを組み合わせて考えていきます。
金の3つの価格変動要因の一つ、金利の動向を見てみましょう。
以下のグラフは、アメリカ10年債利回りの推移です。
金利は8月上旬に底を打ち、反転して上昇しています。
以下のグラフは青線でドル建て金価格、茶色い線でアメリカ国債10年物利回りを表しています。
比較すれば明らかですが、金利が下がれば金価格は上昇し、金利が上昇すれば金は下がっています。
つまり、ファンダメンタルズ的には、今の金価格は主に金利の上下動によって動いていることになります。
金利の変動要因の分析
金利は、
【1】物価
【2】政府債務
【3】政策目標金利
主にこの3つの要因によって変動しています。
それぞれ見ていくと、【3】の誘導目標金利に関してはアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が来年まで、ないしは長期にわたりゼロ金利を維持すると言明しているので考察の対象外になります。
【2】の政府債務に関しても、今アメリカ議会でコロナ給付金の議論が紛糾している通り、増えることはあっても減ることはないでしょう。
つまり、借金が増えるわけですから、金利は上昇気味になるということです。
ゆえに金は安いということができます。
金利を動かす物価動向を確認
結局、金価格は金利で動いており、その金利は変動要因【1】の物価で動いています。
下記はアメリカの消費者物価指数です。
物価は上昇しているのです、この不況下でも。
つまり、今のアメリカ国債10年物市場の金利上昇は物価の上昇を反映しており、正常な動きなのです。
もちろん、これを後押しする材料もあり、ジャクソンホールでの会議ではFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が物価目標を2%から2%超に引き上げています。
これは、物価は予測以上に上がるとFRBが見込んでいるということです。
以下のグラフはアメリカの卸売物価指数です。
卸売物価指数は、消費者物価指数を3ヵ月先行すると一般的に言われていますが、7月の卸売物価指数も上伸です。
さらに言えば、ISM指数の物価インデックスも大幅に上昇しています。
製造業価格インデックス
8月 7月
2020-09-01 02:00 PM ISM Manufacturing Prices Aug 59.5 53.2
非製造業価格インデックスの価格インデックスも7月と比較して7ポイントも上昇しており、おそらく8月の物価はさらに上昇します。
金融緩和をやり過ぎたことによって、物価の統制ができないような状態にすでに入っている可能性が高いということです。
今後の物価と金利の動向
テクニカルは毎日チェックすればよいですが、経済統計で物価の動向が発表されたときには金利が動く可能性が高くなります。
今回のケースでは9月1日のISM製造業指数、9月4日の非製造業の価格インデックスが大きく上昇したことが金利の上昇につながりました。
9月10日には卸売物価指数、翌11日には消費者物価指数、日本でも9月10日に発表があります。
これらの指標も物価上昇を示すようであれば、金利はさらに上昇する可能性が高く、金は下に沈む可能性が高いということです。
参考までに株価は、ISMの指数は価格が上昇しているだけでなく、新規受注も大幅に上昇しています。
萌芽してきた二番底の可能性
物価が上昇して新規受注が増えれば、企業の業績はよくなって当然ですので、株価はいったん上昇しましたが、企業は製造やサービスを提供するのに借金でまかなっています。
その借金の金利が上昇したので反落をしたわけで、この金利上昇が続けば、株価はどうなるでしょうか?
株価はここ最近、ドル安で買われましたが、これはFRBが低金利を維持をすると言っていたことが背景であり、その低金利が物価上昇を背景に守れない可能性が出てきています。
となると、ようやく二番底の可能性が萌芽してきたことを示す兆候があるのです。
この記事のまとめ
今回の記事では、テクニカル分析で金は下方向になりつつあるということ。
ファンダメンタルズ分析では、現在の金価格が主に金利の上下動を変動要因として動いていること、その金利は物価によって動いていること。
さまざまな指数が物価上昇を示唆し、金利の上昇および金価格の下落が予測される。
同時にドル安で買われていた株も、この金利上昇の局面に入ることで二番底へ向かう可能性が出てきた。
こういう内容の記事でした。
さらっと書きましたが、相当に怖いことを書いているということをしっかり認識してください。
コメントを残す