[全5回/Week5]アンティークジュエリー入門「素材編」

もっと気軽に楽しみたいならコスチュームジュエリー

なぜ「コスチュームジュエリー」と呼ばれるのか?

コスチュームジュエリーと呼ばれる装身具は、原則として高価な宝石や貴金属を使用していません。

あくまでも装い(コスチューム)を引き立てるために作成されてきたからです。

これらの素材を問わない安価なジュエリーが本格的に作られ始めたのは、1929年の世界恐慌の後のこと。

当時の富裕層の女性たちは、ドレスにマッチしたジュエリーセットを用意する必要があったのです。

しかし世界恐慌によって豪華な宝石類を揃える余裕を失ってしまいます。

そのため気軽にチェンジできる安価なジュエリーセットが求められていました。

またファインジュエリーの需要がなくなったことで職にあぶれたジュエリー職人たちの救済策ともなったのです。

アンティークジュエリーとコスチュームジュエリーの違い1「制作年代」

通常「アンティーク品」「骨董品」とみなされる条件は「100年以上前」のもの。

製作されてから100年未満のものをビンテージと呼ぶことが通例です。

コスチュームジュエリーはビンテージのカテゴリに含まれ、大体1970年代までに製作されたものを指しています。

おそらく今後はアンティークジュエリー、ビンテージコスチュームジュエリーともに今後はさらに入手することが難しくなるでしょう。

なぜなら近頃ではどの国も自国の文化財が海外に流出することを防ぐため、持ち出し禁止となっているからです。

例えば中国の場合「1911年以前に製作された文化的遺物持ち出し禁止(民族文化遺物は1966年以前)」というルールが定められています。

参照元:http://www.gov.cn/gzdt/2007-07/10/content_678457.htm

他の国々も原則的には100年を超える文化遺物は国外持ち出し禁止。

博物館などで許可を得ていないアンティークは空港で没収されてしまうこともあり得るのです。

アンティークジュエリーとコスチュームジュエリーの違い2「素材マテリアル」

全てのアンティークジュエリーが貴金属や宝石で作られているわけではありませんが(真鍮やガラスも使われた)コスチュームジュエリーの場合、素材は安価な金属、そしてガラスや樹脂、プラスチックを使用しています。

しかし、もともとはファインジュエリーを製作していたプライド高い職人たちの手によるもの。

彼らは自らの誇りを護るために、並みのファインジュエリーを超える精巧なつくりの優れたデザインのコスチュームジュエリーを次々と生み出しました。

ジャクリーヌ・ケネディほか多くのセレブ達がコスチュームジュエリーのコレクターとなったゆえんです。

時代で選ぶコスチュームジュエリー

時代の変遷とともにファッションは移り変わりますが、もちろんジュエリーも例外ではありません。

20世紀初頭に登場したコスチュームジュエリーもトレンドにあわせて変化してきました。

コスチュームジュエリーを選ぶとき、時代を手掛かりにするのもひとつ。

あなたの好きなスタイルはどの時代にみつかるでしょうか?

「アールヌーボー」

つる性植物などイメージさせる美しい曲線を描くアールヌーボースタイル。

「有機的」と表現されるゆるやかな曲線で装飾された様々な装飾品はガレやラリックのガラス製品でおなじみのもの。

コスチュームジュエリーも花や虫など自然界に着想を得た優雅な作品が多く見つかります。

「アールデコ」

フランスからヨーロッパ全土、そしてアメリカまで影響を与えたアールデコ様式。

アールヌーボーと打って変わって、直線的モダンな印象の強いアイテムが主流です。

「アメリカンスタイル」

ジャクリーヌ・ケネディがことのほか愛したケネスジェイレーンはじめ、ハリウッド文化で花開いたアメリカンコスチュームジュエリー。

モダンで華やか、それでいて今にはない丁寧なつくりのコスチュームジュエリーと出会えます。

ブランドで選ぶコスチュームジュエリー

本来コスチュームジュエリーは、その時々のトレンドにあわせて制作されたもの。

流行が終われば処分されてしまう運命でした。

捨てることをためらった持ち主があえて手元に残したものだけが、コスチュームジュエリーとして今に残されているのです。

シャネル

素材ではなくデザイン、そして身に付ける人の個性にあったジュエリーを追求したシャネル。

シャネルの目指すコスチュームジュエリー製作の陰の立役者が「メゾングリポワ」です。

溶かしたガラスを型に流し込む「ポォードガラス」製法が特に有名です。

トリファリ

アメリカのコスチュームジュエリー人気はトリファリがもたらしたといって過言ではないでしょう。

カルティエ他グランドメゾンで活躍したアルフレッド・フィリップの優雅なコレクションは、ハリウッド女優をも夢中に。

細かくカットした色ガラスを密集させ、あたかも大きな石を彫ったように見せる「インヴィジブルセッティング」は大きな反響を呼びました。

ミリアムハスケル

エナメルフェイクパールを使った華やかなコスチュームジュエリーブランドとして名高いミリアムハスケル。

実は自身の名を冠したブランドネーミングながら、ほぼ自分でデザインすることはありませんでした。

ジュエリーの種類で選ぶ

時代の流行にあわせて作られたコスチュームジュエリーだからこそ、手に取り身に付けるとその時代にトリップしたような気分が味わえます。

このバックトゥザフューチャー感、ライトなコスプレ感はコスチュームジュエリーの醍醐味。

今のジュエリーには見つからない昔風のアイテムを選べば、さらに気分が盛り上がりますよ!

ロケット

中に写真、時には亡くなった人の髪をしのばせたロケットペンダント。

蓋にはイニシャルや植物モチーフが刻まれている繊細なつくりのものが多く見つかります。

ブローチ

古風なイメージの強いブローチは、アンティークジュエリーそしてコスチュームジュエリーともに多く見つかるアイテムです。

当時はスカーフやショールなどを留めておくために必要な実用品でもありました。

アメリカの「アイゼンバーグ社(Eisenberg)」のスワロフスキーやメタルを使った繊細なブローチは特に人気が高いアイテムです。

名古屋の「国際デザインセンター」にあるアメリカン・アール・デコ・コレクションのひとつ、ribbonをかたどったブローチは逸品。

リング

 

アールデコ期に流行した「ボンブリング (ドームリング)」は丸みを帯びたベゼルが特徴。

現代ではなかなか見つからないスタイル。一つつけるだけでインパクトがあります。

またイニシャルや紋章を刻んだ「シグネットリング」も、真鍮やブロンズ製のものならお手頃価格で手に入ります。

コスチュームジュエリーに会いに出かけよう!

アクセサリーミュージアム(東京)

http://acce-museum.main.jp/

1960年代からコスチュームジュエリー製作に携わってきた館長「田中元子」さんのコレクション。

ヴィクトリアン、アールヌーボー、アールデコ、オートクチュール 、プレタポルテとカテゴライズされた展示が見やすい。

コスチュームジュエリーのショッピングガイド

コスチュームジュエリーを手に入れたいと思ったら、リユースショップがおすすめ!

最近では一度に大量の買取を希望する人が多く、安価で良質なコスチュームジュエリーがよく紛れています。

 

リユースショップのオンラインサイトはぜひチェックしたいもの。

リファスタなら入念なチェックやクリーニングが完了しているので安心!

参考文献

「楽しいジュエリーセールス 」 早川 武俊

「コスチュームジュエリー」 別冊太陽 

「 アンティークジュエリー美術館」 別冊太陽 

「コスチュームジュエリーの世界」 田中元子

「世界の伝統装身具図鑑―神々の宿る銀」 露木宏

「日本の宝飾文化史」露木宏

「日本装身具史」露木宏編著


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