日出ずる日本、日沈み行くアメリカ

今回は、新型コロナ禍における世界経済と金価格を俯瞰し、日米両国の経済および円建て金価格の今後について考えていきます。

現状の世界経済は…

現在の世界情勢が、全世界的な金融緩和によって新型コロナショック発生当初の春と比べれば、安定した状況になったと言えることに異論をはさむ人は少ないでしょう。

その金融緩和とセットになった金利の低下、あるいはゼロ金利が世界を正常にさせているとも言えます。

以下のグラフは青線がドル建て金価格、オレンジ線がアメリカ国債10年物金利です。

参照元:TRADING ECONOMICS

ゼロ金利のお陰で、ドル建て金価格が史上最高値を更新したことが明らかでしょう。

ほかに日米の株価も金利の低下によって高値近辺にあります。

つまり、このゼロ金利という「低金利」の果実が現状の世界なのです。

にもかかわらず金利が上がっている国々

ここで重要なことは、政策金利をゼロに抑えているのに去年(2019年10月6〜7日)と比較して金利が上がっている国が存在する点です。

その国は7ヵ国しかありません。

1位 ブラジル  0.46
2位 スイス   0.28
3位 日本    0.26
4位 ポルトガル 0.11
5位 スペイン  0.11
6位 ドイツ   0.08
7位 フランス  0.03

この中で、一番経済規模が大きいのは世界3位の経済大国、日本です。

ちなみにアメリカと中国の前年同時期と比較した金利は、アメリカが0.8のマイナス、中国には10年物国債が存在しませんが、20年物国債は0.3のプラスになります。

アメリカと日本を比べると…

ニューヨーク、タイムズスクエアに立つナスダック

ここからは日米の対比でいきましょう。

アメリカは、ナスダックという主にIT関連の新興市場が去年の同時期と比較して45%も上昇しています。

これは低金利、ゼロ金利のたま物であり、まだ新型コロナショックから立ち直っていない状態です。

日本も政策金利はゼロおよびマイナス金利になりますが、去年の同時期と比較して9%上昇しています。

金利がこれだけ上昇していても、日本の株価は新高値までは行きませんが、去年より高いという事実です。

今の世界経済の現状は、低金利にすればするほど発展するわけで、まさにアメリカは最大限の恩恵を受けて、ダウも去年よりも4.9%上昇しています。

裏を返せば、その金利が上昇すれば、アメリカの株価が崩落するのも時間の問題と言えるでしょう。

もちろんドル建ての金も同様で、金の価格構成要因の【2】に当たる金利が上昇すれば価格は下がります。

日本の未来は非常に明るい

首都東京の朝焼け

日本のゼロ、マイナス金利は去年から変わっていませんが、市場金利は去年から0.26%も上昇しているのに株価は堅調、去年よりも景気が悪いのに9%も上昇しています。

単純な話、株価の比較であればアメリカのほうが成長しているように見えますが、実際は金利が0.8も下がっていることからの上昇。

一方、日本は0.26も金利が上昇しているのに株価が堅調。

低金利でかさ上げされたアメリカ経済と日本経済のどちらが強いか、もはや自明と言えるでしょう。

なぜ今後のアメリカは厳しいのか?

今後のアメリカがなぜ厳しいのかの答えは、実はそもそも去年まで株価が上昇していても不調だったからです。

下記はアメリカのGDP年率になりますが、リーマンショック以降、1980年代、1990年代のような成長は影をひそめ、低成長になっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

これは1971年と1974年のオイルショック後と同じような状態です。

そこでこの原因を探求し続けると、要因は中国にあると気づいたのがトランプ大統領になります。

要するに、資本コストがない中国といくら競争しても勝ち目がないことにトランプ大統領が気づき、そこで仕掛けたのが米中貿易戦争なのです。

またこのことにより、日本は貿易では中国に奪われた利益を取り戻す可能性があり、安全保障もアメリカのおかげで確保されることとなりました。

逆に民主党のバイデン大統領になったら、クリントン政権の時代のように日本にとって最悪でしかありません。

クリントン政権が日本に対して何をやったのか、もっと思い出して勉強したほうがいいでしょう。

なぜアメリカは中国をイジメるのか?

世論調査で現職のトランプ大統領を大きくリードする民主党の大統領候補、ジョー・バイデン

アメリカは今後数年はダメでしょう。

理由は、自由貿易の騎手であるアメリカが、なぜ一方的に中国をイジメるのかにあります。

そして、世界に対しても同じです。

本来、アメリカが自由貿易の騎手というのには語弊があり、昔から保護貿易の権化でした。

しかし、表向きは「自由貿易が大事」というおためごかしです。

アメリカの利益が減っていることをトランプ大統領が認めましたし、仮にバイデン政権に移行したとしても、この事実は覆しようがありません。

言わばトランプ大統領が言う「アメリカファースト」とは自明のことであり、これはバイデン政権でも継続されます。

要するにアメリカは、自国の成長が限界になっていると暗に認めているのです。

しかし、表立っては絶対にそれを認めず、仮にバイデン大統領になったとしても、それを続けることは間違いありません。

ただし、中国はなかなか言うことを聞かないので、実績を作るために注文のつけやすい日本叩きを始めるでしょう。

一方、仮にトランプ大統領継続なら、それが緩和されるというだけ。

ともかく、しばらくアメリカは低成長が続くでしょう。

アメリカに対して日本は?

世界最大の投資持株会社、バークシャー・ハサウェイの筆頭株主で、同社の会長兼CEOを務めるウォーレン・バフェット

先日、世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏が日本の主要な商社株の5%を入手しました。

この動きは実は2年前から確認されていたことです。

彼は安い株しか買いませんので、おそらく新型コロナショックで安くなったところを買い集めたのでしょう。

ですので、今から私たちが商社株を買っても遅いです。

このように世界の投資家は、従前から当コラムで指摘しているように日本の未来は明るいという見通しなのです。

金利が上がっている現状でも、株価が高値を維持しているのも重要な証拠でしょう。

逆にEUはイギリス離脱という試練を抱えていますので、当面はよいでしょうが何が起こるかわかりません。

金利面ではアメリカの一人負けです。

円建て金価格のゆくえ

金の価格構成要因は、

【1】ドル価格
【2】ドル金利
【3】アメリカのGDP

であり、これが日本円建ての金になった場合も基本的には一緒で、

【1】円価格
【2】円金利
【3】日本のGDP

になります。

【2】は、今まで日本はゼロおよびマイナス金利だったのですから上がるほかなく、現状は去年よりも上昇しています。

【2】金利の上昇は、金にとって下げ要因です。

金利が上昇して株価が上昇すれば、円の価格は絶対値で上昇します。

そうなると【1】の円でも金の弱材料となります。

最後の【3】だけが金の強い材料になりますが、総合的に考えて、金利は下がるところまで下がっているのですから、上がる時も早いと考えると、円建て金も下がるほかありません。

金をここから強気する根拠など全くない

円の基軸通貨であるドルが弱ければ円も絶対値では弱くなり、相対値であるドル円では円は強くなる

ただし、円の基軸通貨はドルになりますので、そのドルが弱いのですから円も絶対値的には弱くなります。

しかしながら、ドル円では相対値ですからドルが弱くなると円は強くなります。

この関係性をよく理解することが大切です。

つまり、ドルの弱さは金の強さにも連動しますので、昔のように1グラム1000円を割るようなことはないでしょう。

あの当時はドルの強弱によって円高が進行しました。

日本の絶対値も弱く、GDPも低成長、金利も今よりかは多少あったということなのです。

今はマイナス金利ですが、あの時はゼロ金利ではなくゼロ近辺の金利でした。

こうやって考えると、金をここから強気する根拠は全くないといっても過言ではないでしょう。

この記事のまとめ

今回の記事では、今の世界経済の比較的な安定は世界的な金融緩和、低金利のたま物。

日米の株価を比較すると、アメリカが一見好調に見えるのは新型コロナショックに際してのこの低金利政策があったればこそ。

そもそもアメリカ経済は不調であり、それを理由にトランプ大統領は中国に貿易戦争を仕掛けた。

日本の場合は、金利が上がっているのにもかかわらず株価が昨年より好調。

また、世界的な投資家連も日本の未来は明るいと見ている。

円建てドル価格について考察すると、日本の金利の上昇は金価格の下げ要因。

金利が上がって株価も上がれば円が強くなり、これも金の下げ要因。

こうして諸々考えれば、円建て金は下がるほかない。

こういう内容の記事でした。


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