全てのマーケットの方向性が変わってきている!?

EU主要国での新型コロナ感染拡大が世界の金融市場の趨勢を大きく変えていることは皆さんも想像に難くないでしょう。

しかもここに来て、アメリカ議会が経済対策の取りまとめに入っているというニュースが入っています。

今回は金市場を含め、この点に関して解説していきます。

フランスの新型コロナ感染状況と株価

下記のグラフは10月20日現在のフランスの感染状況で、このまま行けば夜間の外出禁止以上の施策が取られる可能性が高いです。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は28日の国民向けテレビ演説で、30日から少なくとも12月1日までの約1カ月間、2度目となる全国的なロックダウン措置を導入すると発表した。

引用元:BBCニュースjapan

※この記事の執筆後、やはりロックダウンとなりました。

参照元:TRADING ECONOMICS

状況はフランスが最悪ですが、イギリス、スペイン、ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアなども似たりよったりです。

このような感染拡大はロックダウンなどの都市封鎖の可能性を想起させ、経済活動が縮小することから、マーケットが下がるのではないかという不安を覚えます。

しかし、下記はフランスの株価の推移ですが、思ったほど株価は下落していません。

参照元:TRADING ECONOMICS

これは人々が新型コロナウイルスとの付き合い方を学んだことによるものというのが一般的な解釈になります。

しかし、不安なニュースが飛び込んできています。

米下院が経済対策を通過させる可能性あり!

10月20日午前現在でのニュースは以下の通りです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-10-19/QIGCERDWRGG701?srnd=cojp-v2

引用元:ブルームバーグ

民主党のナンシー・ペロシ下院議長が今回の経済対策をめぐり、これだけ前向きな発言をするのは7月末に期限切れを迎えてからは記憶にありません。

つまり、この法案によって経済対策がまとまる可能性があります。

皆さんのほとんどは、この経済対策がまとまれば世界の株価はそれを好感して上昇するだろうと思っているでしょう。

実際に日経平均は10月20日9時45分現在で、このニュースを材料に前日比変わらずの水準まで買われています。

これは前日、夜間取引で1.1%株価が売り込まれたことの反動であり、実際は1.1%も上昇していることを意味します。

実際のマーケットはどうなる?

実質的な米下院における民主党のリーダーであるナンシー・ペロシ下院議長

しかし、実際のマーケットは皆さんの思惑とは正反対の方向にいきます。

アメリカが経済対策を行うのは皆さんにとっても、マーケットにとってもよいことでしょう。

一時的に好感をし、株価や金の値段は上昇をするかもしれません。

しかし、具体的に考えてみてください。

アメリカが予算を執行するにしても、今までに散々に過去最高の経済規模を行ったのですから、予算の枠はすでに超えてしまっているのです。

この場合、新たな財源はどこから賄うのでしょうか。

新たな経済対策予算の出どこ

2020年10月、観光客がいず閑散としたハワイ州ホノルルのマウナケアストリート

経済対策の財源は赤字国債の発行、つまりは国の借金を上乗せします。

折しも今年3月にFRB(連邦準備制度理事会)が緊急利下げをしたわけですから、金利はほとんどつきません。

そして、アメリカは金額ベースでは世界一の借金大国なのですから、誰が貸すのでしょうか。

もちろんアルゼンチンやベネズエラのように回収の見込みのない国に貸すよりはましな状況ではありますが、これ以上借金が増えれば回収は困難になるので、リスクプレミアムという金利が発生します。

すなわち、金利が上昇するのです。

おまけに物価も上昇しているのですから、金利の上昇はマーケットには容認されます。

つまり、経済対策をやることによって短期的には生活は楽になりますが、長期的には借金の返済が金利によって上昇するという損失が発生するのです。

この短期的な利益と長期的な損失のどちらが大きいかと言えば、当然長期的損失のほうです。

そういうわけで、おそらく一時的にマーケットは好感するでしょうが、その後は株価は下がることになります。

金も、金利高は悪材料になるので下がるでしょう。

金価格第一の変動要因、ドルは?

緩和が実施されると、ドルの超過分が一気に需要超過になるので、たちまちドル高になる

金の価格変動要因の【1】であるドルの動きはどうなるでしょうか。

これは株式市場も同じことで、新型コロナがあってもドル安と金利安によって株価は上昇していました。

そのドルは以前にも解説しましたが、緩和前にはその期待と需給の悪化から安くなります。

ところが緩和が実施されると、ドルの超過分が一気に需要超過になるので、たちまちドル高になるのです。

どういうことかと言えば、緩和とは通貨の供給を過剰に行うことなので、需給の面ではドルは安くなります。

これはあくまでも見込みの話で、実際の話ではありません。

しかし、実際に議会で経済対策が決定されれば、タイムラグがあったとしても必ず実行されます。

経済対策が実施されれば…

タダ乗りできるのなら誰もがタダ乗りしたいのが人間の習性!?

もし、経済対策が実施されれば皆さんはどうしますか。

自分が働いたお金ではなく、税金によって救済されるのですから、皆さんのコストはゼロ。

もらったもの勝ちですので、要件を満たしている人は我先に補助金目掛けて飛び乗ります。

当然対象が多ければ多いほど、供給以上に需要が発生することになります。

つまり、ドルは超過から引き締めへと転じるわけです。

これが議会で経済対策が決まった場合に起こることです。

短期と中長期の二つの視点で市場を見ると…

金の潮目が変わる!

経済対策は現在、ペロシ下院議長とムニューシン財務長官が詳細を詰めている最中であり、両者が合意に達すれば、下院は民主党が過半を占めているので可決するでしょう。

となると、両者が合意した時点でドル高に転じる可能性があります。

つまり、この経済対策がアメリカ議会で決定されると今までの低金利、ドル安から一転、ドル高、金利高に様相が変わってしまうのです。

今までの株式市場や金市場はドル安、金利安によって活況を呈していたのですから、金相場や株価にとっては下方向の圧力が働くわけです。

ほとんどの人は、経済対策という短期的果実をもとに株や金を買うでしょう。

しかし、中長期で見たら経済対策はドル高と金利高を生み出し、結果として下がるのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、フランスを中心にEU諸国で再度新型コロナの感染が拡大しているが、株価は思ったよりは下落していない。

これは人々が新型コロナウイルスとの付き合い方を学んだことによるものというのが一般的な解釈。

一方アメリカでは、足踏み状態が続いた新型コロナへの経済対策が妥結へと動き出した。

この経済対策が実施されれば、短期的には株買い、金買いになるが、中長期的視点では今までの金高の根拠であったドル安・金利安が一転してドル高・金利高に変じるため、金の悪材料。

こういう内容の記事でした。


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