アメリカの次期大統領にバイデン氏が就任することがほぼ決まりました。
今回は、バイデン新政権で何が変わるのかについて解説します。
大統領選の結果はほぼ確定
両候補の勝利、敗北宣言によって大統領選挙の結果が判明するのが慣例ですが、今回はトランプ大統領が敗北宣言をしなかったので法的な決着となります。
法的とは、12月14日の選挙人投票による決定を指します。
トランプ大統領が各地で起こした訴訟はすべて敗北という結果になっており、あとは14日を待つだけです。
参考までに、下記リンクをご確認ください。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-29/QKKHP9T0G1L301
引用元:ブルームバーグ
バイデン次期大統領の政治家としての実績
バイデン次期大統領の政治家としての一番有名な実績と言えば、妊娠中絶を認めさせたことになります。
今では当たり前になりましたが、アメリカでは宗教的な問題もあって、長年法的には中絶が認められませんでした。
下記リンクのロー対ウェイド事件において、中絶を規制するアメリカ国内法の大部分を違憲無効という判決を勝ち取る過程で中心的な役割を担ったのが、当時民主党の上院議員であったバイデン次期大統領でした。
ロー対ウェイド事件
引用元:Wikipedia
このロー判決を議員で主に支持したのが当時、上院議員であったバイデンで代表となりますが、このロー判決に関する文献は現在インターネット上にはないようです。ロー&ウェイド判決は日本でもさまざまな本が出版されており、その中の1つだと思われ記載しております。考察として、今、米議会を握っているマコネルやペロシが1990年代から議員を続けて、最高権力者になるのですが、バイデンは40年近くの上院議員を務めており、米議会で最高に熟練している指導者とも言えます。またそれだけ長生きできたのは、この人口中絶問題で活躍したからクリントンに負けても大統領になれた可能性があるのです。ファクトを提示せず憶測で伝えますが、ボブ・ウッドワードの【大統領の陰謀】の中でその記述があったのだと思います。
※ウッドワードは米国で証拠を伴った著述作家であり、客観的事実しか書かないことで有名な元ワシントンポストの記者です。
そのほか、オバマ政権下では副大統領として、長年にわたる上院外交委員会のリーダー格の経験を活かし、世界の紛争の解決に尽力しました。
すなわち、国民の権利意識や外交を専門として政治を進んできた人になります。
その人となりと疑惑
バイデン次期大統領の特徴は、人の話をよく聞く、つまり反論などにも聞く耳を持つ人で、温厚というイメージがつきまう一方、話が非常に長い。
この長い話で結局何が言いたいのかわからなくなってしまう、というのが欠点でしょう。
大統領選挙中、認知症疑惑をトランプ大統領に執拗に攻撃されましたが、これは長話によって自身で何を言っているのかわからなくなるという由縁もあるものと思われます。
選挙戦序盤では、失言や何を言っているのかさっぱりわからないことが多々ありましたが、後半になり自身が優勢になってからは、案外しっかりしてきているようでした。
そのほか、ニクソン大統領以来クリーンであったのはオバマ前大統領くらいで、ほかの大統領にはすべて疑惑が存在し、バイデン次期大統領も息子のハンター・バイデン氏の疑惑を抱えての登場となります。
記憶に新しいところでは、トランプ大統領のロシアンゲート疑惑になりますが、あの強心臓のトランプ大統領をもってしても特別検察官の追及に情緒不安定になっており、バイデン次期大統領にそれだけの根性があるか否かが試されることになるでしょう。
参考までに、ハンター・バイデンの疑惑に関しては立派な証拠は存在しておらず、あくまでも疑惑は疑惑のままです。
ともかく特別検査官を議会に任命されて追及されると、どんな大統領でも心身不安定になるということで、その辺も注目されます。
アフガニスタンにおける医師・中村哲さんの死
アフガニスタンで医師の中村哲さんがゲリラグループに惨殺されて1年が経過したことがよくニュースになります。
これは今回の次期大統領選挙と無関係のことではありません。
アフガニスタンとの戦争は、9.11テロを受けて当時のブッシュ大統領が始め、その後継のオバマ前大統領がより一層ひどいものにしたとの風評が一般的です。
オバマ前大統領が最終決定者であるのには変わりがありませんが、オバマ就任前にアフガニスタンとパキスタンを訪問したのが当時のバイデン上院議員と共和党上院議員でした。
ゆえに、その端緒はバイデン次期大統領にもあると言えます。
現況のアフガニスタンは、中村医師がやっていたように、農業の再生がなければ内戦の終了はなく、それをひどくしたのはオバマ・バイデンコンビであったことは疑いようのない事実です。
つまり、オバマ前大統領がアフガニスタンで起こした失敗、トランプ大統領はその失地を回復させましたが、再びどうしようもないことをやるのであろうと想像できます。
アフガニスタンでの戦争は実質上、第二のベトナム戦争で、アメリカが負ける戦争です。
対イラン・対北朝鮮・対中外交は?
イラン問題もオバマレガシーの一つです。
バイデン次期大統領も多少は関わっていますが、アフガニスタンほどではありません。
このイラン問題の根幹は、イランがイラン合意によって従前よりもおカネが稼げるようになったことで、その稼いだおカネをテロに使っていたことにトランプ大統領が激怒したのです。
すなわち、イラン核合意から離脱してイランにテロをさせないようにしました。
それを復帰させるというのがバイデン次期大統領の主張ですが、うまく行くわけがありません。
多くのムスリム国家がイスラエルと和平を結ぶ中で孤立するイラン、また世界的に原油があり余っている状況で、核合意復帰が最善と考えるのはおかしいことでしょう。
北朝鮮に関しては、オバマ就任前の年末や再選の年末に暴発していることを思い出してください。
トランプ政権下ではおとなしくなりましたが、再び暴発の可能性があります。
バイデン外交は、トランプ政権の中国を筆頭とする新興国への向き合い方と変わらないというのが方針ですが、トランプ大統領ほどうまくやれるのかといえば非常に疑問です。
注目のSDGs投資と金採掘
環境ゲリラのグリーンピースの話題を最近聞かないと感じている方が多いのではないでしょうか。
彼らが活発に活動したのはオバマ政権下のことであり、トランプ政権になってから消え失せています。
また「イルカやクジラを拿捕するな」とか始まるのだろうなと、うんざりしている方も多いでしょう。
ただし、投資の趨勢としてSDGs(持続可能な開発目標)投資、つまり環境汚染や破壊に否定的な企業には投資をしないという考えが欧米を中心に主流になっています。
産金に話を絞ると、環境破壊の最たるものです。
採掘には大量の自然を破壊し、重機などの排ガスで空を汚染します。
そのほか地中に埋まっている有害物質の掘り出しもあり、環境投資という側面では金は有害としか言いようがありません。
グリーンニューディールの根本的な問題点
グリーンニューディールの一番の問題は、それを行うことによって何が期待できるのか、具体的な効果が何も例証されていない点です。
つまり、効果がないことに巨額の予算を使うと約束していることになります。
常識で考えればクレイジーですが、それが社会の潮流ですので何の疑問もなく受け入れるのです。
投資の世界ではSDGs投資といって、環境などに排他的な企業、政府などは排除される傾向にあるので、政府は方針として採用しやすいのでしょう。
しかし、そんな費用対効果にエビデンスがないようなものに振り回されるなんてまっぴらごめんとも言えます。
バイデン政権の経済政策は?
過去10年にわたるアメリカの貿易(通商)に関連するグラフを以下に提示します。
さらに以下は貿易収支です。
新型コロナ禍によって輸出入ともに激減し、最近では復調しているものの、バイデン次期大統領はこれを政策の主軸にしてくることは間違いがありません。
過去にこの貿易の拡大を行った国で、成功したのは日本とアメリカです。
日本では安倍前首相が貿易拡大を目指し、円安、株高のアベノミクスを行い成功させました。
アメリカではオバマ前大統領がリーマンショックを受けて、輸出額を3倍にすると宣言しました。
おそらくバイデン次期大統領は、この安倍・オバマ路線を踏襲するはずで、まず最初にドル安にしなければいけないでしょう。
どうなる日米関係?
アメリカと日本の決定的な相違は、アメリカは世界最大の債務国、日本は債権国という点です。
日本の場合、どんどん金融緩和を行って借金を増やしても、貸しているお金がたくさんあるからいいですが、アメリカは外国人投資家にお金を貸してもらうほかありません。
対立する中国に買ってくれと頼んでも、これからドルが値下がりするとわかっているのに誰が貸すかということになるでしょう。
ゆえに、一番言いやすい日本に強硬に出資を求めてくると考えられます。
安倍前首相はうまくトランプ大統領を御して、貿易赤字を問題視してくるのがわかっていたので、ハナっから国債をもっと買います、武器をもっと買いますとやりました。
だから良好な関係を保つことができ、共に中国と対立することができたのです。
歴史的な事実を見ると、レーガン政権時に双子の赤字の解消を求めて日米貿易摩擦が起こり、それにクリントン政権がタダ乗りして余計に激化し、決定的に日米関係が悪化しました。
今回も同じになると見ています。
日本の安全保障はアメリカ次第ですので弱い立場になりますし、経済も対米依存を深めることになるでしょう。
そうなると、日本の立ち場はトランプ政権時よりも相当に弱くなるのが見えています。
肝心の金相場の見通しは?
金価格の変動要因【1】ドルに関しては、アベノミクスやリーマンショック後に行われた通貨安競争の再現になるでしょう。
つまり、ドル安になってくるでしょうが、果たして今回はそんなことができるのか?
今回の新型コロナ禍を受けてアメリカは、資金的に余裕があって文句を言わない日本に再び大量の債権購入を求めてくるでしょうが、日本の菅首相にそれを拒否する外交技術はない。
また、安倍・トランプ時代のような首脳同士の親交も期待できません。
バイデン政権が安倍・オバマ政権のようなドル安政策にもっていくことができないケースと実際にドル安になるケース。
これらを両方を考えないといけません。
ドル安は金価格の上昇要因、逆にドル高は金価格の下落要因です。
そして、価格変動要因【2】の金利に関しては、史上最大規模の緩和を世界で行っているので上昇は不可避。
あのリーマンショックの時も史上最大規模の金融緩和と言われましたが、金利は上昇しませんでした。
しかし、今回は上昇すると見ています。
この金利の上昇は金価格の下落要因になります。
リーダーシップとGDP
金価格の変動要因【3】GDPに関しては、トランプ政権時に好調を持続したのは、政策運営のうまさに拠ります。
バイデン次期大統領は、トランプ大統領ほど強いリーダーではありません。
トランプ大統領に逆らえば、地位は保全されませんでしたが、バイデン次期大統領の政治家としての特色は、人の言い分を聞くところにあります。
つまり、リーダーシップが発揮できるような人物ではないということです。
大統領の決定ではなく、合議制による決定になってくるのが必然となります。
そこで環境問題に代表されるように、根拠がない政策を連発して自滅したのがオバマ政権でした。
史上最高の若さで、どうしても他人の意見を尊重しなければいけないという側面が強かったのです。
それをカバーしたのはオバマ前大統領の聡明さでしたが、バイデン次期大統領にはその手の聡明さはありません。
あるのは人徳です。
バイデン合議体制の弱点
合議制による決定には、政権が一致団結して前進しないという重大な欠陥があります。
この非常時にこうした弱点を抱える合議制は命取りになることが多く、本来はトランプ大統領のように唯我独尊で決定していくような手法が現在の経済には向いています。
オバマ前大統領もバイデン次期大統領同様、皆の合意を重視しました。
その結果、金融政策は正しい方向性に決定されましたが、成長は鈍化しているような感じになりました。
一方、独尊のトランプ政権では飛躍的に伸びました。
かつて鳩山、菅、野田を筆頭とする旧民主党政権では首相が何も決定できず、迷走したのと同じです。
漠然と日米双方の国民も、トランプ政権や安倍政権のような経済成長が続くと思っているでしょうが、それは強いリーダーシップに拠るところが90%以上。
バイデン次期大統領も耳当たりのいいことは何度も話しますが、多分実績は何もなしという結果に終わるのではないでしょうか。
この記事のまとめ
今回の記事では、バイデン政権は合議体制になることが必然で、現在のような非常時においては、何も実績が残せない可能性が高い。
すなわち、ドル安の傾向が強まるとしても、経済の実態回復は伴わないというのが実像であろう。
金の価格構成要因【1】ドル、【2】金利、【3】GDPの中で、強い方向に出るのは【1】のドルだけ。
【2】の金利も上昇して金の下げ要因になる可能性が高いと見る。
【3】はまだ確定ではないが、金が下方向に向く可能性が非常に高いのではないか。
こういう内容の記事でした。
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