前回は日本銀行が財務省の外為特会から60億ドルを取得したことについて説明しました。
今回は、このことについていろいろな情報が出てきたので更に解説します。
12月16日の日銀の60億ドル取得発表についての続報
以下が前回の記事になります。
この後、造幣局や財務省、政府から続々と情報が入り、今回の日銀のドル取得がどういう意図なのかが解明されてきました。
外為特会・造幣局・日銀、金塊取引で補正財源5000億円-関係者
引用元:ブルームバーグ
ここに金の取引が含まれていますが、重視する必要はありません。
理由は記事にも書かれていますが、この取引をマーケットや市中に影響があるようにするつもりがないと表明していることに尽きます。
記事中にはアナリストのコメントもありますが、当局者のコメント通り、マーケットに影響が出ないように最大限の配慮をしたと思います。
この記事からわかること、それは日本の財政がまずいのではないかという疑問です。
日本の財政赤字の現況
下記は、日本のGDPに対しての財政赤字になります。
現在のGDPは500兆円前後になりますが、現在その比率が236%ということは、単純に500兆円に2.36をかけた数字、すなわち1180兆円程度が赤字幅になるのです。
上記のグラフは2019年までですが、現在のさまざまな新型コロナ対策予算や先般決まった2020年度、21年度の補正予算でも、追加で40兆円の予算が含まれていることからも明らかなように、2020年、21年の予算はさらに赤字のパーセンテージが上昇していることは間違いありません。
おまけにGDPはマイナスになる公算が大きく、分母が減少しているのですから、GDPに対する赤字のパーセンテージはもっと上昇することになるでしょう。
日本の財政は危機的な状況になる可能性がある?
メディアを筆頭に、政府はこれだけ新型コロナが蔓延している中、なかなかゴートゥーなどの経済支援策を中止しないと批判しています。
表向きにはコロナの蔓延抑止としていますが、正直なところ「新型コロナで経済が立ちいかなくなったとしても、また持続化給付金や10万円の保証を受けられると踏んでいる」、だからこのような批判を繰り返すのではないでしょうか。
しかし、実際に新型コロナが蔓延をした時に、今後これらの政府からの支援や保障が行われるのかどうかを考えると、上記の記事、いわゆる余剰金に手をつけているような段階で多くを望めるのでしょうか。
当たり前の話ですが、給付する側は慎重になるのが当然です。
つまり、言われているほど日本に財政的な余裕はないということです。
度の過ぎた援助は人をダメにする
国民やメディアは、経済が止まれば国がまた保証してくれるという何の根拠もないことを前提に批判を繰り返しています。
保障や支援というのは当然原資があって行われるものですが、その財源が不足しているから上記のような記事が出てくるのです。
日本は資本主義の国であって、過剰な支援は個人や法人をダメにする元凶となります。
ただ国家理念として、皆さんが安心して働けるようにするために、失業したときには失業保険、高齢になった場合には老齢年金など、さまざまな社会保障があるのです。
根本的には今回の新型コロナに罹患したとしても、それは自己責任とすべきなのですが、それでは多くの国民が困るということで支援、補助を行っているのが現実です。
もちろん、政府は自由に働ける環境を提供する義務があるので、その環境を保証できなかったことから支援をしている側面もあります。
原資がなければ保障も支援もしようがない
新型コロナ感染が自己責任というと怒る人もいるでしょう。
しかし、実際に感染して誰かに責任を擦り付けようとしても、実際に誰に擦り付けるのですか。
最終的には、新型コロナに感染したのは自分が悪いと思わなければいけなくなるのは自明です。
つまり、新型コロナに感染したら医療費などが無料になるということはありますが、誰かのせいには出来ません。
自分で責任を取り、感染予防を徹底する他無いのです。
それをどうにか誰かのせいにしようとして、一番悪いのは安倍だの菅だのと言っているのがメディアや専門家連です。
批判をすれば、政府は安心して働ける環境を提供できなかったとして、ある程度の保証は行います。
しかし、それは原資があっての話であり、この不景気で税収が落ち込み、その上に巨額の赤字となると、新型コロナで落ちた税収を探すために、いろいろなキャンペーンを行うのが当然です。
それがゴートゥーであり、税収増のためにやっているのですから、おいそれとは中止にできないということがわかっていない人が多すぎます。
また国内旅行が原因でコロナが蔓延したとしたファクトは厚生労働省も認めている通り無いのです。
左寄りの発想が日本の財政赤字を膨らませた
これはアメリカも同様で、現在議会でモメているのは、こういった予算状況があるからです。
その対立の要約点は、大きな政府と小さな政府になります。
つまり、民主党は恵まれない人たちにもっと支援すべきとして財政拡大に舵を切れと言っているのに対し、共和党はもっと減税してそのおカネを経済活動に当てるべきという考えの対立です。
日本はひどいもので、皆が皆、アメリカの民主党的な考えをして、恵まれない人みんなにお金を配るべきだという人が大多数を占めているように感じます。
そして、この左寄りの発想が日本の財政赤字を上記に掲げたグラフのようにしてしまったのです。
今回、新型コロナで給付や補助は得た人は、その支援を打ち切ると言えば、必要でなくても必要だと言い張り、あらゆる手段を使って反対するでしょう。
そして、政治家は票が欲しいので絶対に反対票を投じることになるでしょう。
結果、一度交付した支援、保証は廃止などできなくなり、赤字は膨らむ一方。
20世紀は社会主義が人類の犯した大きな誤りでしたが、21世紀は環境問題と大きな政府が世紀の間違いとなるでしょう。
金の価格変動要因と金利の変動要因
金の価格は短期、中期的には下がる傾向ではありますが、長期的には上昇トレンドのままということになります。
金の価格変動要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
1990年代に金の価格が1000円を切ったことがありますが、要因はアメリカのドルが強い結果と考えています。
現在の金は、低金利とドル安になっているから大きな値段が示現しているのです。
ポイントは、この低金利です。
そして、その【2】金利の変動要因は、
【1】物価
【2】政策金利
【3】財政赤字
だと覚えてください。
このうち【3】の財政赤字は日米ともにひどい状態なのに、金利は安いままです。
金利の基本として、借金まみれの人には、金利が安くなるわけがありません。
しかし、実際には今史上最も安い金利になっています。
金利が高くなるのは、借金をしている人が返せる見込みがないからです。
日本もアメリカもその借金が返せる見込みがあるから、金利は安いままと言えます。
一方で今回の新型コロナで、日米ともにどれだけの借金が残るか不明な状態です。
ワクチンですべてが解決するだなんて…
世界は新型コロナがワクチンで収束するだろうという、とんでもない勘違いをしています。
- 実際には、どんな方向に転ぶのかさっぱりわからない状況
- ワクチンを開発してインフルエンザが終息しましたか
- SARSやMERSは終息しましたか
- 鳥インフルエンザは?
単純な事実を見るとワクチンが多少の安心につながるかもしれませんが、終息にならないのは明白なのに、皆が「ワクチンさえあれば…」と言っています。
そもそもこの新型コロナはどのように変異するのかもわからない状態であり、変異をしたらワクチンが開発されても効果がなくなるのです。
最悪のシナリオを防ぐためには
要するに、この新型コロナ感染は、全人類の50%が感染しないと終息しないというのが現段階での解決策であり、いくら感染が防げても、若しかしたらいつかかからないといけないものなのかもしれません。
しかし、現状で日本人の半分が感染をしたら、その人たちは経済活動に従事ができないので税収は減り、保証や支援など到底できなくなるでしょう。
そうなると、日本やアメリカ政府は負債を返せる見込みがなくなってきます。
これからいくら税金があっても足りないことが見込まれるのに、それでも政府に「保証しろ!」と言えるでしょうか?
これから訪れる最悪の事態を想定すれば、未来に向けてもっと資金を温存するべきなのです。
金価格のゆくえは?
冒頭で紹介した記事が事実であれば、金利は上昇するはずですが、まだ年末の恒例の金利上昇以外は観察されていません。
しかし、今まで盤石だった日本の財政も、クラック(ひび)が入りつつあることが認識されました。
金の価格は金利と密接にリンクしています。
金利が上昇の可能性の中、金を強気するわけにはいきません。
ただし、債務不履行の可能性が出てくると金の価格は上昇することを忘れないでください。
この記事のまとめ
今回の記事では、日銀による財務省外為特会からの60億ドル取得に関する続報に接するにつれて、わかったことは言われているほど日本の財政に余裕はないということ。
新型コロナ禍において支援金などの出費がかさみ、逆に税収が激減する中、政府がGoToキャンペーンのような税収増のための政策を実施するのは当然至極。
もはや日本の財政は、国民が政府に対して「保証しろ!」だなんて言えるような状況にはない。
しかし、こうした状況も、何から何まで「困ってるんだから保証しろ!」と国民が要求してきた帰結。
財政危機であれば、金相場の下落要因となる金利の上昇が起こるはずだが、まだ起こってはいない。
ただし、その可能性は十分に考えられるので、今は金を強気なんてできない!
こういう内容の記事でした。
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