ダイヤモンド革命「合成ダイヤVS天然ダイヤ」
様々なメディアで「合成ダイヤモンド」について取り上げられることが多くなりました。
その背景にあるのがジュエリーとして十分通用するカラット数と透明度を持つ合成ダイヤモンド=ラボグロウンダイヤモンドの登場です。
天然と変わらないダイヤモンドが「自由自在」に合成できることができるようになったことで、ダイヤモンドの価値そのものが問い直されています。
今回「2021ダイヤモンド考察」と銘打って
- 「ブラッドダイヤモンドの現状」
- 「天然ダイヤモンドの価値」
- 「今手に入れるべきダイヤモンド」
の3テーマを取り上げました。
本記事では天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドとの違いとは何か?を中心にお伝えします。
最後まで読んで頂くと
- 改めて知りたい天然ダイヤモンドの価値
- ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドの違い
これらの事実について理解を深めていただけます。
ダイヤモンドを手に入れてみたい、と考えている方はぜひご一読ください。
意外と知られていないダイヤモンドの歴史
古来ダイヤモンドはインドの聖なる石
有史以前から18世紀までの長きにわたり、ダイヤモンドが産出される場所はインドの限られた場所(現在のハイデラバード近くのゴルゴンダ)だけでした。
1725年ブラジル、1866年南アフリカ共和国でそれぞれ発見されるまで、世界に流通していたのはすべてインド産ダイヤモンドだったのです。
まさに聖なる石だったダイヤモンドは、インドの厳格な身分制度=カースト制度との象徴でした。
最高位のバラモンだけが「白いダイヤモンド(カラーレスダイヤモンド)」を所有することを許可されました。
ちなみにイエローはヴァイシャと呼ばれる富裕層、一般庶民は内包物の多いグレーやブラックを持つことが許されました。
戦士と騎士(クシャトリヤ)は赤いダイヤモンドと呼ばれていたレッドスピネルを所有していました。
きわめて絶対量が限られていたうえに、地球でもとも固い物質であるためカットが難しいダイヤモンドは長くインドの秘宝ともいうべき存在でしたが、中世以降ヨーロッパの王侯貴族にも珍重されるようになりました。
ダイヤモンドの旅路「鉱山からショーケースまで」
ダイヤモンドが鉱山からあなたの指に届くまでの道のりをご紹介しましょう。
全世界の鉱山から掘り出されたダイヤモンド原石のほとんど(全体の8割程度)は、ベルギーのアントワープに輸送されます。
ここでラフカットされた原石を仕入れ業者(サイトホルダー)に供給してきたのがデビアスです。
多くのサイトホルダーは仕入れた原石をインド(スーラト)に送り研磨加工を施します。
※一時は世界のダイヤモンド原石の9割を研磨加工していたインドでしたが、2014年ごろから次第にライバル中国にシェアを奪われつつあります。
研磨されたダイヤモンドルースは世界各地に輸出され、宝飾会社に仕入れられてショーケースに並びます。
改めて認識したい天然ダイヤモンドの価値
天然ダイヤモンドの希少性
たしかに天然ダイヤモンドには、希少性をコントロールされてきた歴史があります。
アフリカのダイヤモンドを牛耳ったセシルローズの目論見通りにデビアス社が価格と流通コントロールシステムの構築に成功し、世界恐慌や二度の大戦後のダイヤモンド価格暴落も乗り越えてきました。
しかしもはやデビアスのコントロール下にあるダイヤモンドは世界のダイヤモンド流通の30%以下、ロシアやカナダの新興勢力にトップシェアの座を譲っています。
また以下の理由によって、天然ダイヤモンドはありふれた石になるのではないか?という危惧を持つ人もいるようです。
- ロシアのミール鉱山やカナダのダイアヴィック鉱山など巨大なダイヤモンド鉱脈が次々と登場したこと
- さらに膨大なダイヤモンド埋蔵量がみこめること
(例 2018年アメリカMIT大によると1000兆トン以上のダイヤモンド埋蔵の可能性があることがわかった)
とはいえ、現在の技術で到達できる採掘可能エリアには限界があります。
場所にもよりますが、100メートル掘り進むごとに温度は約3度、圧力は10気圧増加します。
深度が4kmにも達するアフリカのタウトナ鉱山(金)の場合、最深部の地中温度は60度にも達します。
研究者たちが主張する通り、もしかしたら地球内部にはダイヤモンドがぎっしり詰まってるのかもしれません。
しかし私たちが手に入れられるのはそのほんの一部なのです。
二つと同じものはない天然ダイヤモンド
天然ダイヤモンドがラボグロウンダイヤモンドと区別されるのは、「ダイヤモンド結晶成長の痕跡」「結晶時に混入するマントル物質(内包物 インクルージョン)」という自然のなせる技です。
これらの違いによって天然ダイヤモンドはほかの合成人工ダイヤと全く違う存在としてみなされます。
ちなみによくいわれる蛍光性の有無や強弱は天然合成の判断基準にはなりません。
すべての天然のダイヤモンドが蛍光を発するわけではなく、キュービックジルコニアや一部のラボグロウンダイヤモンドには蛍光を発するものがあるからです。
天然ダイヤモンドは地底マントルに導く唯一の石
4C基準においては評価ダウンの原因となるインクルージョン=内包物ですが、これこそ手にすることができる唯一の地底マントル物質なのです。
インクルージョンの多いダイヤモンドは「ごましおダイヤ」などと揶揄されることもありますが、より地球の神秘を感じさせてくれる存在といえるのです。
ラボグロウンダイヤモンドとの共存は可能?
見た目は完璧だけれどコピー可能なラボグロウンダイヤモンド
パーフェクトな合成ダイヤモンドを製造可能とした「CVD(化学蒸着法)」「HPHT(高温高圧法)」の技術進化とコストダウンはとどまることを知りません。
自在にカラーレス、ブルーやピンクのカラーダイヤを創り出すことができるラボグロウンダイヤモンドの可能性は無限にも思えます。
しかしラボグロウンダイヤモンドはあくまでも「工業製品」です。
ガスの混ざり具合(CVD)温度や圧力の差(HPHT)で、多少個体差はあれども大量生産が可能な人工物です。
養殖真珠のように自然からの働きかけを一切介さず、製造工場の機械によってつくられるものです。
天然ダイヤモンドと同じ物質とみなされるけれども、同じ価値を持つようになる可能性はゼロなのです。
ラボグロウンダイヤモンド鑑定は100%可能か?
ラボグロウンダイヤモンドが一部の人々を不安にさせるのは
「天然ダイヤモンドと区別することは可能なのか?」
という点です。
結論から言えば、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと区別することは技術的に可能です。
たしかに2015年頃から0.1カラット以下のメレサイズHPHT合成ダイヤモンドが天然ダイヤモンドに混入したケースが複数あり問題視されました。
しかし2021年現在においては、天然ダイヤモンドにわざと混入された合成ダイヤを看破する鑑定機器はいくつも登場しています。
天然ダイヤモンドには合成ダイヤモンドにはない特性があり、現在の鑑定技術で十分鑑定は可能です。
ここでいくつかの鑑定機器をご紹介しましょう。
「デビアス社 ダイヤモンドビュー」
天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの大きな違いに結晶化の痕跡があります。
いわばダイヤモンドの薄い膜を重ねるように成長するCVDダイヤモンドの場合、その痕跡が残ります。
ダイヤモンドビューは、あらゆる角度から検査が可能で、ダイヤモンドの差異を見破る検査機器です。
「 GIA iD100」
宝石鑑定機関のトップ機関GIAが開発したダイヤモンド鑑定機器です。
天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンド(HPHTとCVDともに)などの人工合成ダイヤモンドを、約2秒のスピーディさで鑑定を可能にしました。
0.005 カラットのメレダイヤ、しかも台座にセッティングされた石も鑑定できる性能の高さを誇ります。
「GIAメレー分析サービス」
大量のメレダイヤを一度に鑑定できる分析サービスです。
1時間に2千個前後の石をスクリーニングすることが可能です。
天然合成それぞれの良さを知ることが重要
いまやダイヤモンドに求められるのは「輝き」だけではありません。
見た目の美しさと同様に、ダイヤモンドが美しいものであることが求められます。
ダイヤモンド採掘の闇の部分である紛争ダイヤの存在や労働者搾取、環境破壊など様々な問題は、「ブラッドダイヤモンド(レオナルドディカプリオ主演)」「ロードオブウォー(ニコラスケイジ主演)」などの映画に取り上げられ広く人々に知られるようになりました。
大規模採掘が不要なラボグロウンダイヤモンドは若年層を注目を集め、国内外のジュエリーブランドが素材として取り入れ始めました。
環境破壊や人権侵害など、大きな犠牲をともなうダイヤモンドは天然合成問わずNO。
安心して身につけていられる「エシカルダイヤモンド」であることが最優先される時代が来ています。
ラボグロウンダイヤ登場後も天然ダイヤの価値は変わらない!
ラボグロウンダイヤモンドは物質的には天然ダイヤと同じです。
しかし宝石の価値は化学的特性だけで決定されるのではありません。
天然ダイヤモンドには地球深部のマントルからやってきたというロマン、そして数億年という壮大な歴史があります。
その希少性が今後無価値になる可能性はまずありません。
(天然ダイヤモンドが価値を失うような事態は、すでに大金を払ってダイヤモンドを所有している個人や企業が許さないでしょう…)
そしてラボグロウンダイヤモンドが今後さらに低価格化が進み大量生産が可能となることも、まず間違いありません。
大切なことは天然合成それぞれの良さを知り、正しく選ぶことができる選択眼を持つことです。
結論としてはラボグロウンダイヤモンドの登場については
「純粋にファッションとしてダイヤモンドを楽しめるようになった」
と素直に感謝するのが賢明なようです。
コメントを残す