来たるべきインフレでは「インフレに強い金」にはならない!

株価が2月15日の週に入って連日の新高値更新です。

日経平均に至っては30年ぶりの高値で、バブル経済期と株価が一緒とメディアは大騒ぎ。

今回は、このことに関して解説していきます。

バブル時代と株価が一緒なら景気はいいの?

2021年1月、飲食店の時短営業要請下で人影もまばらな新宿、歌舞伎町前

もはや若い方は日本のバブル時代をご存じないでしょうし、当時を生きた者にとっても皆がその実感があるというわけではありません。

言えることは、バブルで狂乱していたのは一部の人たちであり、そのほかの人たちはほとんど普通の生活を送っていたということ。

熱狂していたのは株や不動産などの資産を持っていた人で、その人たちは投資をすれば儲かるという状態でしたので、熱狂していたのでしょう。

その時の株価と現在の株価が並んだということが現在のニュースになっているのですが、皆実感がないというのが本音。

では、なぜ株価が高くなっても景気のよさを感じられないのかを解説していきます。

現在の株価は完全にインフレ相場

まず、インフレというものは何かを定義しなければいけません。

おそらく、ほとんどの人にとってインフレの意味の理解は、物価が上昇することになるでしょう。

この解釈はある意味では正しいのですが、物価の上昇は派生現象であり、本来のインフレの意味とは違います。

今のインフレとは、通貨の価値が減少することに派生しています。

例えば、アメリカと日本の実効為替レートを掲出しましょう。

日米ともに、実効為替レートは2020年3月を頭にダダ下がりになっている状態です。

ドルや円の価値が下がっており、今後も金融緩和によって価値が下がるのであれば、皆はドルや円という現金を売却して、不動産や株式を購入しているだけの話です。

つまり、今の株価は単純に通貨価値の減少に伴って、相対的に高くなっているのです。

一方で1980〜90年代のいわゆる日本のバブルは、通貨価値が上昇していました。

通貨の価値が上昇していながらも株価が上昇したのですから、つまりは景気がよかったのです。

反対に現在の株価は、通貨の価値が減少して相対的に株価が上昇しているだけの話ですから、1980〜90年代のほうが圧倒的に景気がいいのです。

今はインフレの前哨戦

インフレとは、通貨の価値が毀損していくことによって起こります。

現在のようにお金の価値がどんどん下がっていき、結果、物価が上昇するという現象を指すのです。

今の状態を見てみましょう。

以下はドルインデックスになります。

参照元:TRADING ECONOMICS

以下は、アメリカ10年債利回りです。

参照元:TRADING ECONOMICS

この状態は通貨が下がり、金利が上がっている状態です。

インフレとは、通貨価値が下がることによって金利が上昇することを意味するのではなく、物価だということをお話ししました。

この場合、金利は何の根拠もなく上がるわけもなく、ドルが下がったから金利が上昇しているのです。

そして、この金利に物価が上昇していく循環の過程なのです。

まだ物価は上昇していませんが、今後数ヵ月以内に勢いよく上がっていくでしょう。

つまり、株価が上昇しているのはインフレを先取りしているだけの話。

この状態は不景気で物価だけが上昇、そしてお給料は不景気なので据え置きなのですから、インフレの中でも最悪なスタグフレーションを意味します。

こういう状態になれば争乱や衝突などが多くなり、世界が不安定になります。

サマーズの警告

世界銀行のチーフエコノミストやハーバード大学学長などを歴任したサマーズ元財務長官

ローレンス・サマーズはオバマ政権時の財務長官で、その著書を読めばおわかりのとおり、頭の切れ具合は本物の天才と言っても過言ではありません。

以下の記事のように、そのサマーズ元財務長官に対して、イエレン現財務長官は「インフレなど起こらない」と反発しています。

https://jp.reuters.com/article/summers-idJPKBN2AF0AJ

引用元:ロイター

ほかにノーベル経済学者のポール・クルーグマンも反発しています。

しかし、上記で説明した通り、誰がどう見たってインフレの前哨戦です。

まず、通貨価値が減少して金利が上昇しているということは、数ヵ月後には物価が上昇していくことを意味しています。

イエレン財務長官は、物価が上昇しないと主張しているのですが、このような金利上昇では過去のデータからは物価は上昇します。

すなわち、物価が上昇しないという論拠がないのです。

イエレンのジレンマ

2014年〜2018年までアメリカの中央銀行であるFRB議長を務め、2021年からバイデン政権の財務長官に就任したジャネット・イエレン

イエレン財務長官はサマーズ元財務長官に反発していますが、現状インフレの伏線があることは認めないといけない状態であり、なんらかの対策を講じる必要があると認めないといけない状態です。

そのときに行うのは、

【1】「ドル安を容認しない」と再び発言する
【2】金利の引き下げ、すなわちFRB(連邦準備制度理事会)と連携して政策金利の引き下げを行う

という2つの選択肢しかできません。

となるとファイナンスの問題で【2】の選択肢は取れず、財務長官指名公聴会と同様に「ドル安を容認しない」と言うに決まっています。

しかし、それを口に出すと株価が下落するので、イエレン財務長官は言いたくないのです。

だからサマーズ元財務長官の意見は正しいのですが、それを認めると「ドル安は容認しない」と言わなくてはいけない状態になるので反対しているだけ。

いずれ言わざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。

すなわち今の株価は砂上の楼閣だということです。

「インフレに強い金」にはならない

ひと口に「インフレに強い金」とは言うが…

インフレと金の関係になれば、金はインフレになれば上がるという都市伝説がいまだにはびこっているようです。

しかし、今回は違います。

きちんと整理してお伝えすれば、インフレは通貨の下落によって起こります。

金の価格構成要因、

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP

のうち、【1】ドルの下落によって金の高騰は起こるのです。

【2】の金利はインフレなので上昇しますが、今回の場合は【3】のGDPが問題になります。

GDPは新型コロナを受けて前年比マイナスなのですから、下方向の下げ圧力になるのです。

これを整理すると【1】は上げ、【2】は下げ、【3】も下げとなり、単純に勘定すると総合的には金は下げとなります。

この記事のまとめ

今回の記事では、現在の株価上昇はインフレの先取り。

今後数ヵ月で物価は勢いよく上昇していく。

景気がよかった1980〜90年代の日本のような状態の場合、金の価格変動要因【3】GDPが上げになっているのでインフレ下で金は上昇となるが、現在はその反対なので金の上昇要因にはならない。

つまり今回のインフレは悪性のインフレ、すなわち不景気時の金利の上昇、物価の上昇であるスタグフレーションなので、このインフレによって金が上がるのではなく、下がることになる。

こういう内容の記事でした。


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