前回のコラムで引用した記事にインフレ連動債(TIPS)について言及がありましたが、詳細な説明を行わなかったので、今回改めて金利とからめて解説し、金価格についても見ていきます。
実質金利と名目金利
経済学では実質(real)と名目(nominal)という言葉が多用されます。
名目とは、数字そのままという意味です。
例えば、今のアメリカの政策金利は0〜0.25%になりますが、この数字をそのまま名目金利と言います。
一方で実質とは、アメリカの政策金利の名目が0〜0.25%であっても、インフレが1.4%進行していれば、実質の金利はマイナス1.4%となります。
つまり、実態の経済を表した金利を言うのです。
例えば今の株価、日経平均は去年よりも30%も高い3万円を超えています。
しかし、我々一般市民から見れば、去年よりお給料が30%も上昇していませんし、景気も去年よりも悪いと感じます。
この場合の株価は名目の株価といい、今の株価は大規模金融緩和によって異常に上昇し、円の価値も低下しているから実際はもっと安いということに由来しています。
ですから、今の株価はフェイクだと言えるのです。
政策金利と市場金利
一般的に国債は、価格と金利の2つの数字によって成り立っています。
この金利と価格は、価格が上昇すれば金利は下がり、反対も真なりという関係です。
この金利と価格の表記というのは名目か、実態(実質)かという問題があれば、皆さんはなんとお答えになるでしょうか?
答えは名目になるのですが、その前に金利には政策金利と市場金利があるということです。
政策金利とは誘導目標金利といい、主に日銀やFRB(連邦準備制度理事会)などの中央銀行が誘導する目標を指します。
そして、市場金利は実際の金利ということになるのです。
現状の市場金利とドル価格の関係
この市場金利が現在、戻り高値の1.34%になっています。
この金利の高さは、米ドル安に由来しています。
なぜなら、国債の金利が上昇するのはドルが安くなっているからです。
ですから、国債利回りにドルの価格を引っ付けてみると、以下のようになります。
茶色のドルが下がっていくたびに、青い金利は上昇していることがわかるでしょう。
インフレ連動債とは?
ここ最近はドルの下落以上に金利が上昇しています。
これは何を意味するかと言えば、ドルの価格の計算式とはドル×金利です。
ドルの価格が上記のように横ばいで、そして金利が上昇し続ければ、ドルの実質の価格は上昇します。
つまり、茶色のドルは現在横ばいですが、実質のドル価格は想像以上に上昇しているのです。
それを表現したものが今回のテーマであるインフレ連動債、すなわちTIPSになります。
https://www.bloomberg.co.jp/quote/GTII10:GOV
引用元:ロイター
このTIPSの利回りが実質のドル価格ということになるのです。
このドル価格が上昇すれば、株価は下がってくるという理屈になります。
金価格の変動をドルと金利で見る
このことは金価格にも言えます。
金の価格変動要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
です。
現在のドルは去年と比較して以下のようになります。
ドルは去年と比較して2月22日9時22分時点で-9.11%下落しています。
一方金利は、
去年と比較して2月22日9時20分時点で1.1%下落しています。
となると金の価格構成要因【1】と【2】はともにマイナスで、すなわち金にとって強い材料になります。
去年の2月22日の金のオープニングは1611ドルです。
これに-9.1+(-1.1)=-10.2%になり、さらに1611×1.102=1775ドルになります。
現在の金価格は1785ドルです。
1775ドルと1785ドルの10ドルの差は、おそらく価格構成要因の【3】GDPになりますので、1785÷1775=1.005%アメリカは去年よりもよくなっているということになります。
要するに、現在の金価格はたった10ドルしか理論値よりも高くないということは、金の価格は適正だと言うこともできるのです。
この記事のまとめ
今回の記事では、今の株価は大規模金融緩和によって異常に上昇し、円の価値も低下しているから実際はもっと安い。
一方、現在の金価格は理論値とほぼ同等となっており、適正と言える。
金や株価の価格変動要因【1】に当たるドルの実質の価格を表すのがTIPSの利回り。
この数字が上がっていけば、論理上、株価は下がっていくことに…。
マーケットは整合性をもって推移しており、イエレン財務長官が言う「ドル安を望まない」という状態は、1月21日以降どんどん進行中。
つまりこのドル高が続けば、いずれ株価は下がると言うことができる。
こういう内容の記事でした。
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