米経済対策 | 金融緩和は「買い」という発想を止めるべき

今回は、米議会の上院で修正可決される1兆9000億ドルの経済対策案について解説し、これを「金や株の買いだ」と叫ぶ人たちに警告を発します。

米経済対策のゆくえ

バーモント州選出の無所属の上院議員で2016年および2020年の大統領予備選挙に民主党の候補として参戦した経験もあるバーニー・サンダース

米経済対策は、議会上下院ともに民主党が過半を握っているため、成立は時間の問題でした。

極左のバーニー・サンダースなどが最低賃金も議論の対象に含むと主張しますが、これは予算措置には含まれませんので、上院ではこの議論は持ち越しとなっています。

去年の年末に超党派合意があったのにもかかわらず、長い間決まらなかったことに疲れた人も多いでしょう。

今後の展開は上院で3月6日に可決され、上院で多少修正されているので下院でその修正案が可決されれば、9月までこの経済対策が実行されることになります。

ポイントは「9月まで」と3月9日および3月19日

3月19日にどんなアメリカでどんな政策提案が行われるかに注目!

ポイントは、まず「9月まで」という点です。

金の史上最高値は去年の8月でした。

また下院で修正決議が行われる3月9日は、ドルの去年の直近の安値に当たります。

意味がわからない方が多数だと思いますので、今後もこの解説をしてまいりますが、言えることは、アメリカ政治はマーケットが重大な局面になるポイントで新しく重大な政策提案を行うということです。

つまり今後、私たちにもわかりやすいような政策提案をバイデン大統領やイエレン財務長官、パウエルFRB議長が行うとすれば、それはマーケットに重大な影響を与えるということになります。

バイデン大統領が明言したのは8月に経済対策第二弾を行うということ、そしてそれがグリーン投資に関するものということ。

これは、金が去年の8月に最高値を記録したことと無関係ではありません。

また、3月19日にバイデン大統領やイエレン財務長官、パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長らがどのような政策提案を行うかも重大局面になるでしょう。

これはマーケットの先行きの話であり、この日付はきちんと押さえておく必要があります。

金融緩和でマーケットは買い?

3月6日に1兆9000億円規模の経済対策が上院を通過したことを受け、「巨大な一歩前進」だと歓迎したバイデン大統領

金融の専門家が「金融緩和=マーケットは買い」と堂々と主張していることに違和感を覚えます。

まず、今回の金融緩和はアメリカの中央銀行であるFRBによるものではなく、行政、立法による経済対策という金融緩和です。

中銀の金融緩和とは、市中にある国債を買い上げ、その買い付け代金が銀行口座に残るので、それを銀行が融資に回すという金融緩和です。

この場合、中銀が国債を買いあさるので国債の価格が高騰し、結果、金利は下がります。

また、市場に現金の供給が大量にあるのでドルは需給関係から価格が下落します。

一方で行政や議会での予算措置に関わる金融緩和とは、国民の税金では足らずにさらに借金を重ね、それを予算として対策を行うもの。

借金をして予算を成立させるので国債の金利は上昇します。

また、ドルは供給過剰になるので安くなります。

中銀の金融緩和と議会・政府による金融緩和の違い

金融緩和には中銀による買いオペレーションと議会や政府による予算措置の2種類があることを承知してください。

この違いを整理すると、

            ドル   金利
中央銀行による緩和    安い     安い
政府議会による緩和    安い     高い

となります。

つまり、中銀による緩和と議会による緩和では効果は違うことになるのです。

上記の表であれば、中銀による緩和の方が効果が高いことがおわかりでしょう。

なぜなら緩和を行うということは景気が悪いということと同義であり、景気が悪い時には皆が借金をしたいのです。

その借金の金利が安いければ、皆がハッピーになります。

一方でドルの高安は、目先の生活や企業の経営にはほとんど影響を与えません。

なぜなら、市民が現金がなくて汲々としているので目先の現金がほしく、借りた借金の金利くらいしか気にならないものだからです。

生活や経営がもとに戻って物価が上昇したのを知って、初めてドルが安くなったことに気づくでしょう。

ゆえに金利が高くなる政府、議会の金融緩和と比較して、中銀のほうが効果が高いのです。

現在のドルと金利の状況と景気のゆく末

今のドルと金利の状況は下記の通りです。

まず金利は上記で示したように政府、議会による予算処置ですので当然上昇します。

参照元:TRADING ECONOMICS

ドルはまだ安い水準ですが、年末に底を打ち、2月下旬に二番底を売って切り返しています。

参照元:TRADING ECONOMICS

今回の金融緩和は政府、議会によるもので、ドルと金利の傾向はドルが安くなり、金利は高くなると示したとおりの結果になっています。

それに対して中銀の緩和は去年の3月くらいから行われましたが、金利は一時高くなったもののその後は下落に転じ、ドルは下がり続けました。

人々が気にするのはお金がないからお金を借りたいという需要であり、その際に気にするのは金利になります。

金利が高いと経営者や生活者は借金を躊躇するものですから、金利を下げたのは政府や中銀の役目になります。

しかし、今回は金利が高い状態ですので、それほど景気はよくならないと予測することができるのです。

米経済対策と金相場

今回の金融緩和の先には金の弱気しか見えない

金の価格構成要因は【1】ドル、【2】金利、【2】GDP(国内総生産)ですので、今回の金融緩和は金相場に関わります。

株式も同様です。

金利高は金にとっては弱い材料になり、ドルも低迷しているとはいえ、3月からドル円を見れば104円の円高がすでに108円と強烈なドル高が起こっています。

3月9日にこの経済対策予算が上下院で成立しても金利は高い、ドルは高いということになれば金はどうなりますか?

「金融緩和は買い」と思い込んでいると大損する

行政、立法による金融緩和ともなれば「金融緩和は買い」とは言ってはいられない

この大型経済対策を受けて、「金融緩和は買い」とステレオタイプに思い込んでいる人たちは多分大損するでしょう。

中銀による金融緩和であれば、ドル安と金利安がセットなので株価や金が高くなるでしょうが、今回は行政、立法による金融緩和。

金の場合は2020年8月まで金利安、ドルはその後も継続しますが、金利安のピークで高値を迎えました。

株は金利に注目して今年2月にピークを迎えたのです。

今後は、大型経済対策という金融緩和が成立しても金利は下がらないでしょうし、ドルも下がらないでしょう。

そうなれば株価や金の価格はどうなりますか?

この記事のまとめ

今回の記事では、金融緩和イコール買いではない。

3月6日に米上院で可決した1兆9000億ドル規模の新型コロナ追加経済対策は行政、立法による金融緩和であり、金利高が見込まれる。

ドルも下がるとはいえ強烈なドル高の渦中。

金の価格構成要因はいずれも下げを示唆。

「金融緩和は買い」と思い込んでいると大損することになるだろう。

こういう内容の記事でした。


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