下げ要因しかないのになぜ金は安くならないのか?

2021年3月中旬現在、貴金属価格がかなり高い数値を出しています。

しかし、市場の材料として揃っているのは下がるもののみ。

今回は多くの「なぜ金が下がらないの?」というご質問に対し、一つひとつ分析しつつ答えてゆきます。

金の価格構成要素と分析の指標を確認

金の価格構成要因は、

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)

です。

『下がる予定のものが下がらない』のは、どこかに下げを阻害する要因があるのだから、この3つを精査していけばいいことになります。

また、金の現状を分析する際、マーケットが前年比や前月比で動いていることを勘案すれば、去年の同月同日よりどういう状態になっているか、そして前月の同じ日とどうなっているかの分析が肝です。

なぜなら、マーケットは毎日のように発表される経済統計(=ファンダメンタルズ)の動きに忠実だからです。

この経済統計、わかりやすいようにメディアでは前年比と前月比を比較して報道しますので、基本的にはこれを見ておけばよいでしょう。

金価格の前年比

参照元:TRADING ECONOMICS

上記のチャートのとおり、金は昨年2020年3月17日と比較し15%ほど高い状態にあります。

この時期、全米各地でロックダウンが始まり景気は最悪でした。

対して現在はワクチンの接種も始まり、経済対策の1兆9000億ドルも開始されているので去年よりも景気はよくなっています。

となると金価格は下がるのが妥当なのに、「昨対比15%も高いのが妥当なの?」といったところです。

金価格の前月比

次に前月比ですが、以下のとおり1ヵ月前の2月17日から比較すると約5%強下がっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

先月からの変化を並べると、

1. 全米では新型コロナウイルスのワクチンの接種開始
2. 日本では首都圏以外の緊急事態宣言が解除

なのに、5%安い状態なんて少しおかしいですよね。

去年や前月と比較すると去年で15%も高くなる論拠があるのか?

先月よりも経済はよくなっているはずなのになんで5%安なのか?

こういった疑問が残るため、これらを解明するために金の価格変動要因の3つを分析していきましょう。

【1】ドル

まずはドルです。

1. ドルの前年比

参照元:TRADING ECONOMICS

ご覧のとおりドルの前年比は9%高い状態です。

すなわち、金の価格は前年比より9%高いのが適正価格になります。

2. ドルの前月比

参照元:TRADING ECONOMICS

ドルの前月比は先月と比較して1.5%高い状態です。

本来、金価格は1.5%安くなっていなければいけませんが、実際は5%安なので理屈に合いません。

【2】金利

次に金利です。

1. 金利の前年比

参照元:TRADING ECONOMICS

金利は前年と比較して30%弱上昇しています。

これは金の価格が30%下落することを意味するのですが、実際はなっていません。

さらにドルの前年比が9%安ですので、ドルインデックス91に70%を乗じて63.7。

つまり、金は去年の価格よりも約36%安になってなければいけないのに、実際は15%高で無茶苦茶です。

2. 金利の前月比

参照元:TRADING ECONOMICS

前月比の金利も25%上昇しています。

今の金価格の前月比はマイナス5%。

ドルは先月から1.5%上昇。

そして金利は25%上昇になりますので、計算式はドル98.5×0.75=73.8。

すなわち前月比26%安!

しかし、実際は5%しか下がっていません。

【3】GDP

最後にGDPでも計算してみましょう。

参照元:TRADING ECONOMICS

アメリカのGDPが2020年年末で前年比2.4%安ということは、金の価格は一昨年、2019年の年末より昨年末2.4%安くなくてはなりません。

ただ現在の3月では前年比のデータがありませんので、3月17日の2.4マイナスを適用しましょう。

つまりドルは前年比で9%安、金利は30%高。

この計算をすると、ドル100-9=91×0.7=63.7で36%。

さらにGDPがマイナス2.4という数字を仮定として埋め込むと、36+2.4=38.4ポイントマイナス=約4割のマイナスと計算が当てはまります。

参考までに、去年の3月18日は1515ドルで、ここから4割を引くと909ドルが適正値なのですが、実際は1700ドル超えで約2倍近い値段。

本来なら叩き売られなければいけない金が高値で止まっています。

この原因はどこにあるのでしょうか?

いったい何が適正なのか?

2020年3月、マスクを着用していない人もチラホラ見受けられる新宿駅周辺の通勤風景

第一次大戦以降、新型コロナ災害に至るまで人類を全世界的に襲ったウイルスはありませんでした。

一部、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、鳥インフルエンザなどがありましたが、これは中国やアフリカ、中東などで流行ったウイルスで、全世界的に流行したわけではありません。

つまり第一大戦中以来、世界のほとんどの地域で感染症によって経済がマヒすることはなかったはずです。

そして、これに対応する政治や金融の大規模な財政拡大や中央銀行の緩和も、ほぼ初めての経験と言ってよいでしょう。

そもそもこんなパンデミックを経験した人は、地球上にほとんどいないわけですから、ある意味、この政府や中銀の試みは実験です。

つまり、うまくいくかどうかわからない代物ということになります。

ところが、パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長やイエレン米財務長官、日銀の黒田総裁、雨宮副総裁も自信満々。

そこにバイデン大統領の財政政策が1兆9000億ドル。

これをやれば経済は立ち直る、根拠はワクチンも接種を完了するだけで、お金をばらまいたから乗り越えられるはずということらしいです。

昨年と比べるとよくはなっているが…

2021年2月、新型コロナウイルスの発生源であったことなどどこ吹く風の中国湖北省武漢の市街地

実際に今年3月の統計はどれも素晴らしいものです。

しかし、よく考えてください。

去年の3月は日本でも感染者が増え、ゴールデンウィークまで緊急事態宣言下。

世界も同じような状態でした。

それと比較したら経済はよくなって当然なのに、メディアや政治家までもが「景気は回復している」と言っています。

弊社から見れば、今年の数字が前年と比較して10%よくても、去年は2019年と比較してマイナス30なのだから70です。

それに10%上乗せできたとしてもせいぜい80。

その状態で株価は50%以上高く、日経平均に至っては70%も高く、金も15%高い状態。

おかしいのはマーケットではなく、皆さんの思考です。

完全にバブルと言えます。

もはや投資ではなくギャンブル状態

2021年3月13日、バイデン大統領が1兆9000億ドルの経済対策に署名したことを一面で伝える新聞

金にしても、15%高に対して5%余剰という計算ができます。

この要因は、可決されたばかりのアメリカの1兆9000億ドルの経済対策です。

これを日本円に換算すると210兆円ですが、ドルの価値が前年から9%下落しているので、実際はこの数字に0.91をかけた予算が執行されたことになります。

言うまでもなく史上最大規模ですが、「だから大丈夫」と皆さん勘で言っているにすぎません。

去年から10%よくなっていても、2019年を100とすれば2021年は80なのです。

それなのに2019年と比較すれば株価は約2倍で「まだまだ株は買い」とバカ騒ぎ。

景気がよくなっているという前提条件で買いを推奨しているだけですので、世のコンセンサスが金や株は高すぎると認識した場合、大暴落することになるでしょう。

実際、890ドルくらいが適正の金を1700ドルで買う気になりますか?

たとえ儲かっても、コンセンサスがいきなり売りになるリスクがある状態で。

こういうのは投資と言わず博打というのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、ロジカルに分析すれば本来下がるはずの金価格が一向に下がらないのは、マーケットに要因があるのではなく、参加している投資家たちの思考に原因がある。

すなわち、去年と比べて景気がよくなっていても、新型コロナ禍が始まる以前の2019年を100の状態とすれば、今年は80にすぎないことを無視している。

そして、ワクチン接種の開始と1兆9000億ドルの米経済対策への根拠なき期待感。

この前提条件がひと度崩れれば、金をはじめ市場は大暴落するだろう。

こんな相場には手を出さないことが賢明!

こういう内容の記事でした。


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