今回は、なぜか全く注目されていないアメリカのGDP(国内総生産)について解説し、金の値動きを予測していきます。
5月の連休前に毎年注目されるある格言
「5月には株を売って寝ていなさい」という格言を聞いたことがある人はいますか。
なぜか5月には株価が下落することが多いと人々に認識されています。
『5月に株価が下がるのはアノマリー』
理由なき下落と一般的に言われていますが、実際にはアメリカ経済が1〜3月は低迷期になるからです。
アメリカの年間最大の商戦は皆さんの仕事が終わりになる12月、そして春まで大抵の労働者はお休みで、春になるころから労働市場が活性化してきます。
日本の暦ではお正月のことを初春と言ったりしますが、立春は2月のように、大抵この時期の全米雇用統計は予測よりも新規雇用者数が増えます。
ところが、ほとんどの人は12月の勢いでアメリカ経済が拡大していると勘違いをし、大抵の場合1〜3月の数字は前期の10〜12月並みによいと勝手に盛り上がっているのです。
その1〜3月期のアメリカのGDPは、毎年4月の最終木曜に発表されます。
日本のその時期の金融機関の人間など、研究よりも連休に頭が行っているので、その結果が悪かろうとよかろうとお休みになり、大抵は連休後に大暴落となります。
これが「セル・イン・メイ」、すなわち「5月は株を売って寝ていなさい」の格言が発生する理由です。
1〜3月期の米GDPはどうなるか?
今年のGDPを見てみましょう。
2020年4〜6月期が31%のマイナスなのは、各地でロックダウンなどがあったので当然で、その反動で7〜9月は33%増になったものの、10〜12月期はもとには戻らず、普通の成長でした。
では、2021年1〜3月期はどうなるのかと言えば、株価を見ればわかります。
株価は年初から3月末までで約8.8%上昇しました。
これがGDPの基本の数字であり、ここに実際的な数字をいろいろ当てはめていく作業になります。
現時点でコンセンサスは6.1%です。
株価は8.8%上昇しているのにコンセンサスは6.1%なのは、今年の1月1日から3月31日までドルが2.2%ほど上昇しているからですが、その差っ引きで6.6%ほどのコンセンサスになるというのが真相になります。
ただし、3月の下旬ころからスタートした史上最大規模の米経済対策の影響を加味すると、これよりも若干数字は大きくなるのかなという印象です。
本当に株を売って寝ているべき?
アメリカよりも早くGDPが発表されるのが以下の中国です。
中国は、今回の新型コロナショックに世界に先駆けて対応した結果、大きな経済成長をしたと一般的に言われています。
その証拠に、去年の4〜6月期はアメリカが30%以上のマイナスだったのに対し、前期比で10%増です。
ただし、その後が続かず、今年の1〜3月期に至っては0.6%という数字でした。
この数字は日本の経済成長よりも低いでしょう。
つまり、コロナショック当初は金融緩和によってジャブジャブにお金をマーケットに流し込んだことで経済は活性化しましたが、数ヵ月先にはその効果はなくなってくるというのが実際の経済です。
日本のように何十年も金融緩和を続けても景気がよくならないのは、その効果が時限だからです。
アメリカもそうなる可能性があり、中国のような数字であれば、マーケットは「5月には株を売って寝ていたほうがマシ」という状態になる可能性もあるということです。
GDPの金の価格への影響
前回は金利がインフレ懸念によって上昇し、金の価格が下落する可能性について解説しました。
今回は価格構成要件、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
のうち【3】GDPの影響についてです。
上記で「5月に株を売っていたほうがマシ」という格言の背景を、ほぼ毎年予想された数字よりも悪いからと説明しました。
世界経済をけん引していく中国の数字が悪いのに、アメリカの数字はそれに反してよいという根拠があまりにも脆弱です。
金の価格構成要因【3】のGDPが上昇すれば、金の価格は上昇し、下落すれば金の価格は下がるものです。
こうやって考えていくと、価格構成要件の【2】と【3】が5月以降はともに金のマイナス要因になるものになる可能性が高いと言えます。
この記事のまとめ
今回の記事では、世界経済をけん引している中国のGDP成長率が悪いのに、アメリカがそれに反してよいなどとは考えられない。
GDPが下がれば金の価格も下がるもの。
その上インフレ懸念で、同様に金の下げ要因である金利の上昇が見込まれる。
以上、ロジカルに考えれば5月以降に金の価格は下がる。
こういう内容の記事でした。
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