米雇用統計の成り行きと金価格への影響

市場は、ドルが弱いままと見て株価や金などを強気しています。

しかし、果たして本当にそうなのかを考えていきたいと思います。

バイデン大統領「雇用統計は力強い」と発言

6月4日に発表された米雇用統計は、コンセンサス62万人に対して、結果は55万人と先月の26万人から上伸しました。

通常の市場は、コンセンサス62万人に対して結果が55万人となると弱いと判断するものなので、直後にドルは売られて金が買われるという展開になっています。

https://jp.reuters.com/article/usa-economy-biden-idJPKCN2DG286

引用元:ロイター

一方で、自身の関心が国民の雇用にあるバイデン大統領は、上記の記事にあるように「歴史的な進展」と評しました。

これは、悪い数字であった先月の雇用統計発表直後、会見にて「もっと経済対策をやらなければいけない」と発言したのと対照的です。

それだけ自身の政権浮揚に、雇用を重視していることの表れととってよいでしょう。

新規雇用者数とドル価格の関係性

以下に、雇用統計とドルの関係性を表したグラフを貼り付けます。

青い棒グラフが新規雇用者数で、黒い点線がドル価格です。

参照元:TRADING ECONOMICS

新規雇用者数が低下をしていくと、ドルも下がり、2021年年初からの雇用の上伸に伴いドルも上伸しました。

そして、4月の雇用が少なくなったことからドルは反転し、先月から再び上伸しています。

こうやって考えていくと、ドルは今後上伸していく可能性が高いと言えるでしょう。

金とドルの関係性

金の価格構成要因は、

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)

です。

このうち【2】の金利に関してイエレン米財務長官は以下のように発言しました。

https://shikiho.jp/news/0/432739

引用元:会社四季報オンライン

今後の物価上昇は続く可能性は少ないと言っているのですが、反対に言えば、物価上昇は現在もしているということです。

つまり、現状は物価と金利は連動していますので、金利は上昇することになります。

次回の物価関連指標は、6月10日のアメリカ消費者物価指数になります。

そして雇用に関しては、アップル社のティム・クックCEOが社員に対して9月からの職場復帰を求めました。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2106/03/news114.html

引用元:ITmedia NEWS

つまり、職場に復帰できるほど経済が復活するという意味です。

こういった経済活動の再開は当然雇用を拡大させ、さらに上記で説明したようにドルの上伸にもつながっていくでしょう。

この結果、金の価格はどうなるのかということです。

米雇用状況に関する留意点

2021年5月、ニューヨーク郊外に張り出されている求人広告

アメリカは例年、年明けの2月くらいから5月くらいまで、「雇用の月」と言われるくらいに雇用が拡大します。

6月4日に発表された雇用統計は5月の結果になりますので、雇用の月の最終月です。

つまり次回7月の雇用統計は、例年であればそれほど期待はできません。

ただし、今の雇用状況は失業保険やその増額、コロナ不安によって期待通りに実現されていないのも現実です。

実際に外食やサービス業を中心に深刻な人出不足が懸念されており、バイデン大統領が言うようにさらなる雇用の拡大が見込まれます。

例年では6月以降、新規雇用数はだんだんと減ってくるのですが、その可能性を現下の情勢を優先して排除してはいけないということです。

実際にコロナによって1200万人の失業者を出しているわけですが、そのうちの800万人がいまだに職場復帰をしていない状態です。

今後コロナに対する不安がなくなれば雇用も出るでしょうし、一方で失業保険の増額があるので働かないという選択肢もあるのが現実です。

ただし、全米21州ほどは失業保険の増額の打ち切りを決定していますので、それなりに雇用は改善するでしょう。

ですから、雇用に関してはさまざま条件付けが必要であり、今後雇用が続伸するという決めつけも、あまり上伸しないという決めけもよくないことだということです。

この結果、金はどうなるのか?

暗躍するビットコインについても把握しておこう

金利の計算式は「ドル×金利」であり、イエレン財務長官の言うように目先、金利が上昇すれば「ドル×金利」のドル実質価格は上昇することになるので、金の弱気要因には変わりがないことになります。

この金のかく乱要因にあるのはビットコインです。

つまり、金売り-ビットコイン買いのストラドルの解消に伴い、ビットコイン売りになっており、相対的に金買いになっているポジションのことも忘れてはなりません。

この記事のまとめ

今回の記事では、新規雇用者数と金の価格構成要素であるドル価格には相関関係がある。

6月4日の米雇用統計がコンセンサスより低かったことを受け、ドルが売られて金が買われたが、バイデン大統領は「雇用統計は力強い」と評価。

アメリカの新規雇用者数は、依然予断を許さない状況ではあるが、大統領の発言どおりに行けば、ドル高、金利高と金の弱気材料に。

ただし、雇用に関してはさまざま条件付けが必要であり、今後続伸すると決めつけるのも、あまり上伸しないと決めけるのもともによくない。

冷静に成り行きを注視する必要がある。

こういう内容の記事でした。


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